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あなたの乗った波が大きく、そして強かった。
そしてサーフボードは、
言葉にできないほどの速さで波を滑り降り、
斜面を駆け上がったことだろう。
その波の形が美しかったことや、
滑降感覚のすばらしさ、
自分は海と戦ったのか、それとも集中できたのか、
または痛めつけられたのか。
あの波に乗って、どこまでも無心になれて、
こころが研ぎ澄まされたのか。
それとも童心に戻れたのか。
気持ちはそらを越えて、
宇宙の果てまで精神は飛んでいったのか。
ふくよかで暖かい気持ちになれたのか。
と、
そらが黄昏、
そして暗くなってきた頃、
あの波はどんな一瞬を自分の中に刻んだのかを思い返してみる。
数年前のあの波。
生まれて初めて乗った波。
寒い日に乗った凍波。
大切な友と乗った波。
偶然やってきた最良波。
恋心のままに乗る波。
旅先波。
奮い立たせて乗った波。
あのかけがえのない時間のなかにある一瞬の輝き、
きらめきは、
こんな時間に思い返したりするものだ。
酒の一滴のなかにもある。
または窓から入ってくる風の中にもあり、
何かの言葉にしたためられていたりもする。
俺たち、
つまり波乗りの頂点は、
こんな一瞬、
そんな瞬間の中にあるように思える。
そんな記憶に残るような波にまた乗りたい。
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