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naki's blog

波乗りの未来_(1513文字)

水遊びが好きで、海も大好きだった俺は、

必然的に波に乗るようになりました。

最初は遊びだった波乗りも、

向上心や求道心が芽生え始め、

心身を鍛練し、

その極意に一歩でも近づこうとしながら日々を過ごしている。

全く立ち向かうことができないほどの大きな波。

美しく、身震いしてしまうほどの波。

壮大な朝陽、そして切ないほど麗しい夕陽。

そんな寒流も、

黒潮、親潮、そして暖流の中をサーフし続けてきた。

遠く5000kmの南半球から

こちらに向かって何昼夜もかけてやってくる南うねり。

北海道の北、

アリューシャン海域で発達した低気圧からハワイや

西海岸に強いうねりを届ける北うねり。

そんなさまざまな美しい斜面を

「サーフボード」

という浮き具だけで滑走していく歓び。

そんなすばらしさに今日も浸っていると、

お店にやってきた友人Sさんが、

「参っちゃいました?。会社の同僚に

”サーフィンはおじさんのするものです”

と言われちゃいました」

「え!」

と驚くと、もう一人の友人Kさんが、

「当たり前だよ。今の日本は、

ローカル優先だなんだと言いながら、

子どもたちにも怖い顔をしているから、

子どもたちはサーファーって、

もしかしたらかっこ悪いのかも?と思っちゃったんだよ」

と言う。

「うーん」

考えてみたらサーフィンをしている子どもたちをあまり見なくなった。

先日の太東岬で、そして志摩国府の浜では、

ニコリン子どもたちサーファーの集団を見たが、

大人数の子どもたちを見かけたのはそれっきりではある。

思い返してみると、

元日のセッションも大晦日も、

みんな30歳台から上の年齢の人たちばかりであったような。

原発の影響?

いやいや、その前から子どもたちはそんなに見かけていない。

ただ日本以外の国では、

ティーンエイジャーはもちろん、

子どもから老人まで人気があるのがサーフィン。

果たして、

日本のこの状況はいかなるものだろうか?

「いいじゃん、サーファーが少なくなれば、

海が空いていて乗り放題だよ」

とKさんは言うが、

サーファーが少なくなれば、

ゲレンデであるサーフブレイク環境に対しての意見も言えず、

よって海岸整備がされず、テトラや堤防が入り放題、

もしかしたら海に立ち入り禁止となってしまうかもしれない。

さらにサーファーが少なくなれば、

多くのメーカーが倒産して、

道具の進化も止まってしまうだろう。

レトロデザインのコピーボードだけで、

ダイビングスーツを改造したウエットスーツということになる。

よしんば、道具はそれでもいいとして、

長年かけて絞り出すように得た

「波に乗る求道心」

というのを次世代に伝えていくというミッションが失われる。

波乗りから受けることができる悦楽や昂奮は無限大で、

そんなすばらしい思想やスタイルを伝えることができなくなる。

これはよく自身のコラムに書いていることだが、

「波乗りはライフスタイル」

だということ。

この健康的で最高なるライフスタイルが、

俺たち世代だけのものになってしまう日がやってくるのかもしれない。

とすると、

人が生き方を伝えるということが途切れるのかもしれない。

それが悲しい。

こんなことを年始に考えていました。

すばらしきは、打ち込めるものがある人生。

そんな全ての想い、全員の願いを海は受け止められ、

もちろん個々の先生は大自然。

やさしくもあり厳しくもあって、

誰にでも平等で、公平に接してくれる。

そんな波乗りを、

永遠にみんなが好きでありますように。

2013年新春 船木三秀

鐘が鳴っている

顔が蒼ざめて息が詰まった

俺は昔のことを思いだしていた

涙があふれる

風が俺をさらう

あっちへ、こっちへと

俺は風に流されていく

.

ーーヴェルレーヌ(船木意訳)