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naki's blog

ハワイ(海)のファンタジー_(1955文字)

 

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Whitehouse West 2016

North Hawaii

今回は、

ホワイトハウス西の岬で波写真を撮った。

じつはここ、

今まで泳いで写真を撮ったことがなかった場所なので、

さまざまなドラマがあったと言える。

その1番の理由は、この場所を畏怖していたからに他ならない。

ここは私だけではなく、

多くのサーファーが入りたくない、

または入ることができないと観念してしまうブレイクなのであります。

ここを良く知るカイル鞠黒によると、

ここは海底の起伏が岩場から深海に続き、洞窟までがあると聞いた。

その中にはさらなる穴があり、

その中に何本ものサーフボードが吸い込まれて挟まってしまい、

ちょっとしたボードの墓場になっているという。

この波はもの凄い威力があるので、

あの波に巻き込まれて洞窟のさらなる穴に入ってしまったら、

それは恐ろしいことになると思い、

ずっと避けていた奇妙なブレイクなのであります。

で、今回はこの波写真をここで撮ると決心して、

水中メガネをし、浅瀬の岩場を縫って泳ぎ出た。

ピーク付近のチャンネルにまで行くと、

海面が盛り上がる、

または炸けるように泡と水を噴き出していた。

いわゆるボイルである。

このボイルの近くにいると、

突然揺れるように吸い込まれるのと、

付近でその噴き出しが起こると、

「ブシャブシャ」と聞こえるので、まだピーク手前ですら恐ろしい。

ピークまで行くと、

やたらと浅い水深で、腰程度の場所があり、泳いでいる私の膝がリーフに当たった。

その先は、崖のような角度で深くなっていて、

それは深海に続いているかのごとく、

深く、すぐに視界では見えなくなっていて、

そんなことにも畏怖していると、

大きな岩がその崖上の海壁の横を動いていた。

岩が浮くのは変だと、

もう一度目を入れると、それは巨大な海亀で、

真っ茶色になったその甲羅は、

ゆうに軽自動車サイズ、

もしかしたら貨物バン並の大きさがあって、

もちろんこんな大ガメは見たこともないし、

想像の10倍は超えていたので、

もしかしたら自分が小さくなってしまった

ーーつまり竜宮城シンドロームーー

に陥ってしまったのかと感じるほどだった。

その大ガメは、

こちらを見ることもなく海中の急斜面横を流れるように移動し、

ついに私の真下に来て、

ずっとそこでたたずんでいるのであった。

それにしてもこれだけ大きいと、

噛みつかれたら足の1本は失いそうで、

そんな恐竜VS人間という原始的な恐怖を味わっていた。

その大ガメは波が来ると、

チラリとだけ水流で動き、また同じ位置に戻っていく。

その視点がまた広大な視界のようで、まばたきすらせずに、

ずっと一点を見つめていた。

それはまた私たちの理解する時間ではなく、

「悠久の時」ということすら感じさせられるほど、

違う時間軸にいるかのようだった。

その後、波のそばに近づくと、

やたらと良い波がやってきて、

美しく、そして不思議なる波作品が何枚か撮れた。

上がってから、

良く素潜りをしているノアに

「すごいホヌ(ハワイ語で海亀のこと)がいたよ。シェル(甲羅)がこんなに大きかった!」

そう両手を目一杯拡げて彼に見せると、

「あの辺は見たこともないほどすごいのがいるよ」

そう言って、会話を終えようとした。

(18歳の息子と父の会話はたいていこんなものである)

この急傾斜は、やはり深海につながっているのだろうか。

またはハワイの神たちが集まる竜宮城が付近にあるのだろうか?

そんなことを真剣に考えさせられた巨大な生きものとの遭遇だった。

波乗りはときに、

こうして海の神秘と壮大さを私たちに伝えてくる。

それは風の叫びだったり、またはささやきに心を硬くし、

または緩ませ、

陽光が女神に感じられるに、

そしてその女神に抱かれるように波の中にダックダイブしたり、

または得体の知れない怪物に倒されるように波に巻かれる。

この大ガメを見たときには、

直感的に映画ネバーエンディングストーリーがイメージしたが、

「波乗りはファンタジー」

その通りのことであると気づいた。

日常で感じられる最大限のファンタジー。

サーフィングはすごい。

そんなことをこの外房線の中で感じられるのは、

さまざまなものを都会で通過しているのと同時に、

海へ対しての憧憬が浮き出してきたからだろう。

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この巨大カメを見かけた日、

突然大きな、通常セットの倍以上ある波がやってきて、

逃げようとしたが、間に合わずに目の前で炸裂した。

前出したように超浅瀬なので、

海底の溝に隠れようと潜っていくと、

目の前をこんな牙みたいな水流をまとった波が高速で回転していたので、

反射的にシャッターを切った。

波の中も、そしてその周囲もファンタジーだと思う。

この波回転水流(タービランス)が写っていたのも不思議なことである。

 


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