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naki's blog

「20ft@13sec./NW 315°」_斜面をただ一直線に滑っているだけのバレル体験_大波のかわし方その一_(5555文字、前編中編です)

ほぼ毎朝4時に起きているのだが、

今朝は波が上がってくるという日なので、
気がはやったようで2時に起きてしまった。

で、「仕事も多いので、もう起きちゃおう」

と思い、目覚ましを止め、

「寒いから靴下をはいて、それから珈琲を入れて」

と考えていたら二度寝していた。

結局4:45に起きたのだが、

そのままオフィスにやってきて、

「20ft@13sec./NW 315°」

というブイ情報を見ていたら電話があった。

「おはようございます!」

「あっ、早川さん、おはようございます!」

「イナリーズはどうですかねぇ?」

「うーん、ブイは大きく動いているのですが、波の間隔が拡がらないんですよ。

先週のうねりは16秒とかあったじゃないですか、それが13秒程度で止まっているんですよ」

「そうすると、その意味というのはどういうことなのでしょうか?」

「もしかしたら小さいということですね」

「じゃあイナリーズに行きたいのですが、ご一緒してもよろしいですか?」

「いいですよ、今5時ですよね。6時半には出たいのですが間に合いますか?」

「間に合わせます。では後ほど」

と時間より5分遅れてやってきた早川さん。

彼のピストル6’10″と6’8″を積み込み、

サビタを走らせ始めた。

「これからブンペイをピックアップしてから向かいますが、よろしいですか?」

「ジュンペイさんですか?」

「ブンペイです。昨日ノースハワイに着いたのです。

サンクレメンテで育った日本人の子です。

波乗りは上手なので、溺れたりしないので大丈夫ですよ」

「いやあ先生のお友達であれば何も問題はありません。

そのジュンペイさんのところに行きましょう!」

「ブンペイですよ」

ブンペイは、ーー今までも彼がしていたようにーー

俺の到着を家の前の道に立って待っていた。

「What’s up, Bun! Long time no see!」

「Yeah Naki! Today is the day right?」(ブンペイ)

「Yes, today is a good day.

あっ、こちらはハヤカワさんです。ハヤカワさん、こちらがブンペイさんです」

「どうぞよろしくお願いします」(ブンペイ)

「いやあ、どうぞ、よろしくお願いします」(早川さん)

「今日はきっと波がすごくいいと聞きました」(ブンペイ)

「20フィートの13秒です。先週は25フィートの16秒あったんだよ」

「No way…」

「今日はイナリに行って、またシゴキを受けるという企画なんですよ」(早川さん)

「シゴキってわかる?」

「はい、わかります。鍛えるということですよね」(ブンペイ)

「ブンペイセンセは日本語うまいですね?」

「ありがとうございます」(ブンペイ)

イナリーズ手前のトムクンズに到着し波を見る。

「ぼくと一緒に泊まっている友だちがもうイナリーズに行っているんですけど、

今テキストメッセージが届いて、頭くらいだと言っています」(ブンペイ)

「えー、そんなはずはないよ。

トムクンズが頭くらいあるから、イナリーズはこの3倍はあるよ」

「これより大きいのですか?」

「もちろん、トムクンズはイナリーズで懲らしめられた人がやる平和な場所なんだよ。

だから向こうよりはかなり小さいんだね」

その話を聞いて、いきなりゴッホゴホと咳き込んだ早川さん。

(海に恐怖すると、なぜか咳が出ます)

イナリーズ手前に到着。

サビタのギアを四駆に入れて、砂浜に走り出すと、

ブンペイから「YAY!」と歓声が上がった。

「そうだ、ブンペイはラリー大好きだったんだね」

「はい、もう今日はこれだけでも満足です」

「そんなことを言わないで、波も乗っていってね。

うおー!あの波を見ろよ!」

「WOW! Looks sooo perfect!!

けど、普通の人は乗れないのですよね」

「そうだね、見た目よりも遙かにヘビーだよ。

テイクオフはタイミングによってだけど、

このあたりはショアブレイクなので危ないからもっと奥に行こう」

「このあいだ、波が小さくなったのでゲッティングアウトして、

近くで波を見たらとんでもないことになってました」(早川さん)

「あっ、そうなんですね」(ブンペイ)

そのま砂浜を上流に向かってガタゴトと進むサビタ。

「タイヤの空気圧はどのくらいですか?」(ブンペイ)

「いいこと聞くね。これはオンロードも走れるように30-33psiくらいにしているよ」

「そんなに圧が高くて、こんなに走れるのですか!この車すごいなあ」(ブンペイ)

「でしょ、なんといっても名車サビタだからね。おっ!あのセットを見て!!」

大きなセット波は、遙かなる沖ですごいブレイクを見せた。

それはずっとバレルになって、

最後はスピットというか、大量のスープをバボーッ!と吐いた。

それを見て早川さんがまた咳き込んでいる。

上流に到着し、はやる気持ちを抑えながら何枚かの波写真を撮った。

20100114_Inaris_T5979

セットは軽く6フィートはありそうだ。

「13秒なんてあてにならないなあ」

「本当です。先週よりも大きいかもですね」

と早川さんはがっかりしている。

「Dude, there are amazing waves! Lets go out!」

最高の波だから早く行こう!

と喜んでいるブンペイに

「よし行くか!」

と言いながらBD5にワックスをかけると、

その奇天烈なボードを見たブンペイは「R∂∑o?s∂πR?∞¢£?∂!」

と文字化けしたような意味不明の英語を言っていた。

「先週からこれでずっとサーフしているんだぞ!」

と胸を張ると、ブンペイは

「Dude, 信じられません。。」

と不思議そうな顔でボードをチェックしていた。

「船木さんは大きい日もこれで普通に乗っていますから異常ですよね」

と早川さんが続け、

「先週は海に入る前のぼくを見て外人が笑っていて、

でもちゃんと乗って上がってくると、

ハングルーズサインをまじめな顔をして出してくれましたね」

「そうでしたね?。でも今日は見学していようかな?」

という早川さん。

20100114_Inaris_T6068

車を後にする頃にはサーフすることを決意したようで、

3人で上流まで1kmほど歩く。

砂浜の高いところに立って波を見るが、

セット波は止む気配がない。

「いつも波が来ているように見えます」(早川さん)

「あれを喰らったら一巻の終わりですからね」

と最大限の敬意をセット波に払う。

一瞬セットが途切れた気がして、「今だ!」

とショアブレイクまで走るのだが、

飛び込む瞬間に沖に波の影が見えて断念する。

「もっと待ちましょうね」

と10分程度浜で沖を凝視しながらタイミングを計る。

いきなり沖が静かになり、

水平線がしっかりと見えたのでショアブレイクに飛び込み、

パドリングを開始すると、

すごい勢いで沖に引っ張られていく。

途中でセットが入りそうになったので、

流れを使って左方向に逃げるように加速し、難を逃れた。

沖に出て両人を見ると、さらに左側から出てきた。

「よかったですね?!」

と早川さんに声をかけると、

「最高です。こういうのも普段の行いですね」

と笑顔になっていた。

ものすごい流れの中をパドリングし続けていると、

特大セットが入ってきた。

1本目は流れであおられてしまい、

セクションの中に入れなかったが、

2本目は奥に、岸側に入り込むようにすると、

切り立った壁が見えた。

昨日のブログのように「ごゆるりと」

そして気合いを入れて、

波の内部に漕ぐ、漕ぐ、そして漕いだ。

しかし、水の量が多すぎで、

波は俺の下でさらに濃縮するように増え、

そのままの形で岸側に移動していき、

ものすごい破裂音と、

圧縮させた空間を横と後に勢いよく吐き出していた。

それを見た早川さんが、

「波が、青田赤道みたいですね、

波がくえっくえっって言いながら来ているみたいです」

と言うので、

「あれを喰らったらゴジラに踏まれたのと同じみたいになるでしょうね」

「なるほど、今日は青田先輩というよりゴジラ先輩なんですね?」

と、ふたりで引きつりながら笑った、

ブンペイを見ると、

緊張しているのか、顔色が悪く見える。

「Are you alright?」

と聞くと、右手を挙げてこちら側にパドリングしてきた。

「Dude, Nakiがセットを喰らいたくないって言っていたのがよくわかったよ。

これを喰らったらとんでもないことになるね。

岸からだと遠くて何もわからなかったよ」

と言うので、

「俺も引っ越してきて、

ここに最初に入ったときは同じように大喜びして入ったけど、

一本目を喰らって死にそうになったんだ」

と教えてあげると、彼の顔色がさらに悪くなった。

小さめで薄いうねりが入ってきたので、

「ブンペイ、これだ、これこれ!」

と推奨し、「絶対に行ける!」とさらに激励すると、

上手に乗っていった。

沖を見ると、セットの影が見える。

奥に向かうようにして、

今ブレイクしていった波の泡跡に合わせながら位置を保っていると、

波はやってきた。

しかもちょうど俺の前が「コーナー」という斜面が折れる箇所で、

セクションはここで、ショルダーへと切れ替わる極上の位置だった。

先ほどと同じように全力全開で波の前に前にパドリングしていると、

波が追いついてきた。

波底は青色と、砂色で2色となっていて、

しかも段になっていたが、

もうここまで来ていて止めても結局は引きづりこまれると思うので、

そのまま突き進んだ。

波が当たり、俺の両足を持ち上げると同時にまっ逆さまになった。

反射的に立ち上がったが、

波を滑っている気がしない。

俺は空に浮いていた。

「嗚呼」とあきらめかけたが、

そのままの姿勢を保っていると、

一瞬の猶予があって、

斜面の下部で右側のテイルが波に引っかかってくれた。

レイルを入れて、進撃体制を取ると、

波の、朝日に輝いている斜面が見えた。

そしてその壁は一瞬で、

湾曲しながら押し出される勢いで弧を描くように円形な空間を作っていった。

2010_inaris_T5198

あまりの速度に怯み、次には巻き上げられないようにテイルを強く押しつけ、

さらに加速していくと重力を感じなくなった。

(今書きながら思っているのが、これは自由落下の終端速度に近いのだろうか?)

視界を凝らし、

生き物のように拡がったり縮まったりするバレル出口。

そこまでの距離と、形からさまざまなことを瞬時に学び取っていく。

あるところで速度は一定となり、

俺は「波斜面をただ一直線に滑っているだけ」となった。

出口が近づき、そして過ぎていった。

視界がまぶしい。

どうやらゴジラ波を征服したようだ。

太陽が明るく、世界は果てしなく大きいのだと知らせてくれていた。

飛び立てるような気持ちとなった。

今飛んだらどこまで飛べるだろうか?

そんなことを考えながら、キックアウトして海面に戻った。

パドリングを開始すると、

満ち足りた、そして昂揚するような沸き上がる気持ちになっていた。

そうだ、この長く、深く大きなゴジラバレルを早川さんは見てくれただろうか?

と気づき、辺りを見渡すと、

早川さんを見つけ、彼に向かって手を挙げると、

手を挙げて返してくれた!

沖までパドリングバックをしていると、

沖がゆらりと動き、水平線を隠してしまった。

どうやらまたセットが来たようだが、

このインサイドの位置だときっと喰らってしまう。

さっきまでの感動と感激は一瞬でどこかに消え去り、

頭の中を非常ベルが鳴り響いていた。

パドルパドル、と流れを使いながら進むが、

見えた波は半端でなはないゴジラ波で、

これを喰らってしまうことになる位置と知った。

それならと腹をくくり、

パドルを止めて、大きく息を吸い、

そしてゆっくりと吐く。

もう一回ゆっくりと吸ったら、

ゴジラはゆっくりと俺の前に立ちはだかり、

それは雲まで届くような高さだった。

ここで、ボードを捨てて海底に向けてゆっくりとゆっくりと潜る。

昔はコンタクトレンズだったが、

視力矯正手術を受け、目が開けられるようになったので、

ぼんやりとした青色の中で、茶色の海底に向けて潜って行く。

海底に到着すると、両手を伸ばして底の砂を両手でしっかりと、

砂の起伏を使って握るようにつかんだ。

ゴジラが海面を踏みつけたようで、

ものすごい震動を感じた。

目を開けて上を見ると、青が一瞬で白とグレーの泡世界になって拡がった。

上から押しつぶされるように衝撃を受け、

次の瞬間には、ボードが泡に引きづりこまれ、

リーシュが付いた右足に痛みが走った。

足がある程度引っ張られたところで、しっかりとつかんでいた砂を離す。

(これはリーシュを切らないために行うのです)

そうすると、足から海面に持ち上げられるので、

空いた両手を猫のように丸め、やってくる有事に備える。

そして次の瞬間には、

高速道路でダンプカーに引かれたような衝撃と回転が俺を襲い、

ゴジラ泡に吸い込まれていった。

全方向から押しつぶすように、

丸めている両手両足を引きはがすように激しく痛めつけられる。

イニシャル=初期の衝撃がゆるんできたので、

両手を拡げて、海面方向を探る。

体が浮き始めた方向を確かめながら両手を大きく使って上昇する。

途中で圧縮泡の名残なのか、波の怨念なのか、

俺を海底に引き込むような流れが発生していて、

いくら漕いでも浮かない。

パニックになりそうになるが、それを静かにこらえ、

浮き上がり漕ぎを止めずに続ける。

まぶたの外が明るくなってきた。

もうすぐ海面なのだろうと目を開け、

距離を確かめながら、落ち着きながら浮いていくのだが、

前出した海底へ押しつけるような流れがあって、なかなか浮き上がらない。

「ここまで時間がかかっていると、浮き上がった瞬間に次の波が来ているかも」

という疑念が沸き、それを受けて体が倍に感じるほど重くなった。

「浮け?、浮くんだ」と気と息を入れて、

さらに漕ぐとようやく海面に出られた。

大きく息を吸い込むと、目の前にまた同サイズ、

もしかしたらさらに大きいかも、という『ゴジラ2』波ブレイクが始まって、

その分厚いリップを俺はあっけにとられて見ていた。

(続く)

20091227_inaris_T5314