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【D・G・P】小説『ジェイミー・オブ・ライアン』のバレル_前編 1 of 3_(1558文字)

ジェイミーは、

沖に動くうねりの稜線を見ていた。

ウエスト(西北西)からのうねりと、

ノースウエスト(北西)が重なるのを待っていた。

それ以外であれば、

自分がどんなにいい位置にいても動かずに、

ブラザーズたちに譲った。

来た。

たぶん、来た。

ウエスト(この日は西北西)がログキャビンあたりから、

そしてププケアからのノースウエスト(北北西)。

そのふたつが確実にここで重なる。

ジェイミーは、

そう感じる前に動いていた。

正確には、

バックドア側に動いていた。

鍛え上げられたジェイミーの腕がきしむように水を漕ぎ上げる。

傍目には力を入れずに漕いでいるように見えるが、

全力を使っていた。

ウエットスーツを着ていなければ、

筋肉が引き絞られ、

太い血管が浮き出ていたことだろう。

波はほぼ予想した通りに来た。

喉が渇く。

興奮と緊張が重なって、

背中が熱くなっていた。

それを冷ますようにゆっくりと息を吸った。

1本目。

この波ではない。

越える。

2本目が見えた。

これでも、ない。

次、

これだ。

ジェイミーは、

2本目のうねりを越える前にGoProを口から離し、

唾を飲み込んだ。

そして、

ムーヴィー・モードのボタンを押し、

息を大きく入れてから再びくわえた。

こういった波に近づいてみるとわかるのが、

海面がくせ者だということをまざまざと知らされる。

海底にさまざまなリーフの突起や凹み、

洞窟があり、

まるで海底ジオラマのようである。

その上を強大なエネルギーを持った波が動いていくので、

渦巻くような海面となる。

ボードを海面に吸い付けたり、

左右に流したり、

自分を沈ませるような渦をつくり出すので、

思ったように動けなくなる。

海底の浅さと同じように、

パイプラインでサーフするものを畏怖させる要因である。

3本目の波。

せりあがってきた。

最も大きく、

ジェイミーが狙っていた宝山であり、

そしてどこまでも清らかな霊山だった。

各部の起伏を凝視する。

ボイルを探した。

あった。

パイプラインで生まれ育ったジェイミーは、

各リーフから吐き出される起伏、

ボイルの形状で、

自分がいる位置を理解する。

バスケットボール選手は、

ゴール周りであれば、

回転して方向がわからなくなっても、

フリースローラインと、

3ポイントラインの弧だけで、

バスケットまでどのくらいの距離と、

角度なのかを感じるという。

そのことと似ているのかもしれない。

テイクオフというのは点である。

滑走は線だ。

滑走している際は、

コブや波面のゆがみはランプとなって、

速度を上げたりするものだが、

テイクオフは違う。

波のどこから入るかで、

速度、角度、位置が全て変わり、

その後の滑走展開に影響を大きく及ぼす。

テイクオフする際に考えられる波面の詳細を書き出してみた。

エッジ(なにかしらの起伏)

フック(長い起伏)

リップ

チムニー(割れ目のような亀裂)

デッド(押してこない壁)

オーバーハング(リップが分厚いもの)

フェース

レッジ(横方向の凹凸)

リッジ(縦方向の凹凸)

ボイル(海底からの水流)

そしてこれらが合わさった未知なるものがあり、

それらの名が付く箇所には、

あらゆる方位と、

さらに上下という概念があり、

それぞれが合わさって波を形成する。

一刻変われば、

豹変するほどに動く。

ゆえに波乗りに心をとらえられると、

逃れられないものとなるのだろうか。

波は、

ごくまれに鏡面のようになるが、

たいていはこのように些少かつ、

広大な起伏の総合が、

テイクオフに相対しての視界であり、

フィールドとなる。

「そのボイル」から数十フィートの位置、

オーバーハングとなる下に、

小さな、

ごくわずかなふくらみがあった。

ジェイミーは、

その下に一度しっかりと、

そして深くボードのテイルを沈ませた。

(明日の中編に続きます)

3日で完結。

Happy Surfing!!