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【サーフィン研究所・特大号】波に乗る作法_(4644文字)

タイラー(・ウォーレン)とやりとりしていた。

彼が描くセーリングの油彩は、

アロハ・スコット夫妻のものなので、

オーシャンサイドに行く日が楽しみとなった。

私が2+1で乗った波のことは、

インスタグラム経由で知っていて、

彼は、

千葉のスーパーバンクより、

伊豆の水色(すいしょく)が琴線に触れるようだった。

余談だが、

彼の琴線が鳴るさまは「Woo!」とか、

「Nice!」と発声または表記される。

「琴線に触れる」とは、

心から感動し、共鳴するといった意味です。

ちなみにナイス!は、

クリスチャン・ワックのセリフがOG(オリジナル)で、

タイラーは、

親友中の親友の感嘆符を採り入れたということになる。

彼らの言葉の伝来を見ているとじつに興味深い。

なので、

こんなまわりくどい説明があったのは、

以下に続くことであります。

きっと原稿用紙10枚くらいになるだろうから、

ここからはお時間のご用意を。

そして文章を読みたくない人は、

このあたりで挫折しているという読みです。(笑)

Tyler Warren “ONE OFF– 2+1″ 6’5″

VEKTOR Tabs and the Greenough 9”

At the Bubaraca main

.

池波正太郎さんの本に

『男の作法』という本がある。

これは寿司の注文の仕方から始まり、

鰻屋ではどうするのか、

ビールの飲み方等、

ありとあらゆることが書いてあり、

彼のビール案にはとても賛同している。

要は最初の一杯だけはお酌しあいましょう。

あとは自分が一気に飲める分だけをその都度注ぐ。

それがビールの作法、道だとあった。

賛同している。

日本で飲んでいると、

「お酌しろ」

みたいなジェスチュアがあるので、

このあたりの「作法」には敏感である。

他には、

本を読む、

映画を観る、

旅行に行くなど、

自分に投資することが

『男の作法』だとあった。

『作法』って大切だと思う。

サーフィンでも同様である。

池波さんクラスまではいかなくてもいいが、

きちんとわからないとならない。

元々、作法というのはあったのだろう。

ハワイで初めて波に乗られた際にもあったのだろう。

ちょっとしたこと。

例えば、

弱者をいたわるというようなものから始まったのだろう。

ただ、

今の作法は正しいものもあるし、

そうでないものもある。

そうでないものは、

その昔ビジター・サーファーが、

海側に住む人たちの気持ちがわからず、

しかもたちの悪いのがやってきては、

地元の人に迷惑をかけ続け、

「そうでないもの」の種子を蒔いたのだとわかる。

またはそういうサーフ以前、

人間生活の作法を知らぬが故、

「海はゴミ箱」から始まり、

バーベキューすれば、

ゴミもビール瓶もそのまま。

車も変なところに停めてしまい、

前の家の人が出られなくなっていたり、

焚火材を人の家の塀から失敬する。

私は海の近くに住んでいて、

私の家の前にサーファーは路上駐車していた。

けれど、

問題も多かった。

例を挙げると、

大家の水道を勝手に使ったり、

家の前に灰皿の中味を捨てたりしていく。

多かったのが夜中にやってきて、

夜明けまで騒ぐ。

朝4時からワックスの音で起こされる。

(波がある日ならうれしいのだが)

大家に「だからサーファーは嫌だよ」

と、ことあるごとに嫌みを言われる。

野性風味は困りますと、

彼らに丁寧な口調で注意をすると、

逆にすごまれる。

そんなことが私たちの時代には多くあった。

当時のサーファーの評判は悪かった。

例えば、

引っ越す際にこちらがサーファーだとわかった途端に

「貸さない」と言い出す大家だらけだった。

そのくらい作法ができていないサーファーだらけだった。

こんな連中に煮え、

地元の人が注意するようになり、

先ほど書いたローカリズムの芽生えみたいなものになりつつ、

当時のサーフ専門誌が、

そのことをあおったから、

ゆがんで今の形になったと研究されている。

さて、作法の話。

先日のことだが、

ジェフリーズに行くとまんま無人だった。

春先の寒い日で、

波情報による低点数が付いていた。

前日の雨ならば、

砂地駐車場が泥となる。

よって、

こんな日は、

釣り師であっても奥まではやってこない。

この日、

『無人波の作法』というのを知った。

というのは、

私はノースハワイ時代に、

無人でサーフすることこそが最上だと感得したのだ。

無人でやっていたが、

千葉北のメインエリアからちょっと北である。

少しすると、

車が一台やってきた。

ちょうどいい波がやってきて、

ロングライドからマンライを決めた。

彼にとっては完璧な視界だっただろう。

ただ、

この寒い日に泥の道にやってきて、

サーフする根性があるのだろうか。

そんなことを考えていた。

泥は関係なさそうだが、

着替えることを考えると、

泥はちょっとやっかいだよなとか。

または二郎くんや、

バリー・マッギーのようにDFW(巻末リンク)式で笑顔でサーフするのか。

果たしてやがて、

そのサーファーがパドルアウトしてきた。

広いブレイクで、

3つほどのピークがあった。

無人2つ。

やはり、私のところにやってくるようだ。

この人は寂しいのかもしれない。

けれどこういう場合のサーファーの作法としては、

「まずは無人側に行って、

こちらの様子を見るのが正しい」

という記述をすべきかと考えていた。

すっかりそんな本を書く気になっていた。(笑)

とにかく近くに来たので挨拶しようと、

その彼を見るが、一切目を合わさない。

じつは私もそうだが、

「あいさつした途端に文句を言われる」

という訳のわからないことも多数経験しているので、

もしかすると、

私と同じようにちょっとしたトラウマというか、

恐怖症になっているのかもしれない。

あいさつはあきらめた。

これは作法には当然であるが、

TPOも大切であり、

それぞれの考え方もあるので、

あいさつなどは容認している。

寛容性の高い社会を目指します。(笑)

波乗りの話に戻ると、

私のところに波が来た。

あ、彼が漕いだ。

まぁ最初だし、

お手並み拝見とばかりにパドリングを止めた。

彼は波に追いかけていって、

完全に乗れる位置なのに何が気に入らなかったのかわからないが、

波の中に入るのを自発的にやめてしまった。

いい波だったのでもったいない。

おしい波をなくしましたな。

そんなお通夜みたいな気持ちになったのかというと、

そうではなく、

また作法のことを考えていた。

これも掲載すべき重要なことだからだ。

このことは、

アッチーと彼のお店『IRIE』でそんな話となった。

「自分がテイクオフの意思表示をして、

周りが止めたら絶対にテイクオフしないといけない」

そんな書かれざるルールのことだ。

「テイクオフの意思表示で漕ぎ始めて、
周りがそれを見て、その波に乗るのを止めた。
晴れてこの波は
『あなたのもの』
となりました。
けれど、もう一回漕ぐと、
視界が変わって、
予想より斜面が掘れ上がってしまったとか、
前方のヒラヒラ波先が現れて、
いわゆる位置が悪くなったとか、
斜面に押されなくてくっついてしまい、
かなりのレイト、
または墜落してしまうという状況でも、
そのまま一直線にボトムに落ちても行かねばならない」

というあれだ。

これこそが世界共通の作法で、

逆に言うと、

これを知らずにワールド・クラスのピークには行ってはならない。

けれど、

このことを知らない人が多く、

いい波が来て、

こちらがそのマナーに従うと、

先ほどのように行くふりをして、

いざとなるとやめてしまう。

それで知らんぷりして次の波にも乗ろうとしている。

これこそが、

「作法」

「品」

が現れることでもあります。

しっかりと待ち、

他者の波に乗っていなければ、

明確に自分の順番がやってくる。

なので、

これもあれもと乗ろうとしてはならないのだ。

初めて聞いた方は、

サーフィンでこんなプレッシャーがかかるのは苦手だろう。

だから私は人の少ないところでサーフするのだ。

またはピークではなく、

インサイドならそんなプレッシャーを感じないですむ。

けれど、

先日の勝浦スティック・ビーチ、

サーファーズ岬、

ブルードラゴン、

奄美バックドア、

バリのウルワツ、

ノース・ショアのパイプラインが混雑したとしても、

ちゃんとマナー良くサーフができる。

要は、

こういう作法ができていれば、

世界中のどの波も乗ることができる。

最近は混雑したら沖で待つようにしている。

これによって乗ることができる波数が格段と減るが、

それが自然的なことだと思う。

そしてさらには、

周りのサーファーたちの状況を完全に理解するべきだ。

例えば、

白のミッドくん=さっき乗った
赤のフィッシュさん=そろそろ
Mさん=多分次くらい
TRさん=まだまだ

(TRさんは、

さきほど一番いい波を漕いでいったが、

“乗れるはずの”波の下に落とせなく、

横にいたサーファーからため息が聞こえた)

周りのサーファーはこんな具合になっている。

TRさんの前にピークがやって来たら、

彼はまた波には乗ることができるが、

もしそのとき、

そのテイクオフの有効範囲内に他者がいたらTRさんは漕いではならない。

TRさんがテイクオフの順番に復権するのは、

1.全員がさきほどのTRさんクラスの波に乗った後
2.TRさんは、自分の前だけにやってきた無人波に見事(エクセレント)に乗る

そんな細かいことも記載しておく。

「えー、ラインナップでこんなことをやっているのですか?」

そうです。

これが作法なんです。

果たして、

自分の順番がやってきても、

作法がない人が邪魔をするかもしれない。

それでも怒らないのも作法ということでありましょう。

話は戻って、

先ほどの無人ブレイクに私と彼。

彼が漕ぐ波は、

——無人の作法で——

彼の波だとして、

一切乗ろうという気配すら出さず、

小一時間くらいやっていた。

補足すると、

このサーファーは100%悪い人ではなさそうだが、

視野が狭いので、

それが作法にも現れているのだろうと推察した。

とっても良い波がやってきた。

かなりの確率で本日イチバンの波であろう。

一番搾り波のピークは私のもので、

こんな幸せもあるのかと、

すでに乾杯して満足したような気分でパドリングを始めると、

なんと!

10mほど奥にいた彼が、

こちらに向いて乗ってこようとしているではないか。

まさかこんなことになるとは想定外だったので、

一度落ち着くことにした。

1.彼は奥過ぎるから私が行くべきだ
2.もしかしたら反対側のライトに行くかもしれない
3.私の波である
4.けれども他の見方をすれば彼の波である
5.泡で10m奥ならば100%抜けてこられない
6.けれど、こっち側に乗ってきて嫌な顔をされたくない
7.また直前で彼は波に乗るのを止めてしまうかもしれない
8.やはりどう考えても行くべきである
9.小波だからこの人に波をあげるべきである
10.こんないい波がもったいない
11.よって行くことにする

そんな11のことを考えて、

パドルに力を入れようと思った瞬間、

作法のこととか、

こんなことを考えているのが突然ばからしくなり、

その波に乗るのを止めてしまった。

そして、

次の波に乗って腹ばいで上がってしまった。

作法ではなく、

無感覚が勝った瞬間だったのだろうか。

車の運転然り、

全てが無感覚の不作法の人がたいていのアドバンテージを得る。

けれど、

一度落ち着いてみると、

作法側の人は作法を磨いて次世代に伝え、

不作法の人はそのままであればいいという達観である。

アリの法則2:6:2だと再確認したと書いてこの稿を閉じる。

Happy Surfing!!

【巻末リンク:DFWとは?】

DFWバリー・マッギー展_サーフィンの真意とは?_(2105文字)

Happy Surfing!!