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孔雀色の朝陽_(2021年BLUE誌年始巻頭コラムより)

孔雀色の朝陽

(Blue誌巻頭コラム2021年1月号掲載)

真言密教の本を読んでいると、

孔雀明王(くじゃくみょうおう)が出てきた。

孔雀明王は、

憤怒オンリーの明王内では、

唯一のニコリン菩薩だとあった。

女神だとも書いてあった。

孔雀から連想されるレインボー・カラーのミョーオーは、

災厄や苦痛を取り除いてくれるという。

高野山の金剛峯寺(こんごうぶじ)に祀られているというので、

グーグル・マップの衛星画像を使い、

紀伊半島をモニターに写し、

クジャク・ミョーオーを思い浮かべていた。

Muroto_Sunrise

パイプライン・マスターズのことが気になってハワイを探した。

太平洋のまんなかに浮かぶハワイ諸島、

オアフ島の北海岸にズームインしていった。

全ての陸地には北海岸がある。

英語で書くとノースショアとなる。

パイプラインやサンセット・ビーチがあるオアフ島のノースショアが有名なのは、

そこに大驚(たいきょう)な波がやってくるからだ。

日本列島から見て、

『西高東低』という気圧配置は、

アイスランド低気圧とタッグを組むアリューシャン低気圧(Aleutian low)が主役だ。

北半球の大気大循環の大動脈であり、

北海道の上にある強大な低気圧の集会所。

これがものすごく荒れる。

どのくらいかと言うと、

「15メートル以上の強風域の直径が4000km以上に達する」

そんなメガギガ・パワーで、

この海域を左回転で揺り動かし、

みしみしと、

北半球の風をたっぷりと吸いあげつつ、

休みなく波を作り出していく。

広範囲での同一方向による猛風は、

巨大なうねりとなって、

黒潮の流れと共に太平洋を南にコリオリの力(地球の自転パワー)をも使い、

ハワイや遠くカリフォルニアのノースショアに大波を到達させる。

その猛大なる波に乗ることは、

サーフィンの持つ壮大なる醍醐味の一つだろう。

パイプラインの波を見て思ったのは、

『サーフィンとは、波に乗ること』という大原則だ。

波の一番良い位置、

ふくらみ、

くぼみ、

へこみ、

そして揺れ。

これを読み、

利用して波に乗る。

テイクオフへの開始はボードを沈めることから始まる。

止まったような視界、風、音、角度、体感で機敏を加減する。

自身とボードは、

最小単位で密着している。

ボードの角度、

前後の浮き、

「絞り」という負荷をかける腕の角度と筋力。

それらに加え、波の中に漕ぎ出すタイミング、

頭の下げ方、

目線、

膝の圧着等々。

どのように波壁に接水するかでテイクオフの合否が決まる。

これは4フィートのミニ・ボードであろうと、

14フィートの木製クークボックスであっても同様だ。

「パドリングだけめちゃくちゃ上手で、サーフィンが下手なサーファーっていますか?」

そう質問されたので「いませんね」と即答するも、

トーイン・サーフィンもあるので、

逆はありえると気づいた。

逆は重要だ。

前述した低気圧も高気圧と対流をなしていて、

電気のプラス・マイナス、

夏至と冬至もまさしくそうであった。

50:50という対等の構図を持ち、

文頭の真言密教本に戻ると、

「正確に半分ではなく、51:49がよろしい。」

このことについてそう書いてあった。

なるほど、

夏も冬も同等ではないだろうし、

パドリングも左右均等を目指して腕を絞らない。

均一でなくてもいいのだ。

2500年も前にブッダが伝えたとされる東洋の陰陽思想。

その永劫さをサーフィンから知った日の朝陽は、

孔雀明王(宇宙的原理)が浮かんでくる予感と確信があった。

(了。12/17/2020)