土佐民話
ふしぎなお遍路さん
土佐弁監修:ベンチュラ・セイジ
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とんと昔、
ある村の地主の立派な食堂へ、
ひとりのみすぼらしいなりをしたお遍路さんがやって来たそうな。
門口に立って、
御詠歌を歌い、
何がしかの寄進を乞うたと。
すると、
そこのタヌキ顔をした番頭は、
「このせわしいときに、
お前なんぞにとりあっていられん。
さあ、とっとと出て行き」
と言うて、
邪険に追い払ってしもうた。
この様子を、
板長(総料理長)が見ていて、
こっそりおにぎりを作ると、
いそいでお遍路さんのあとを追いかけ、
「お遍路さん、お腹が空いたでしょう。
これでも食べて」
と言うて、
お握りを渡したと。
するとお遍路さんは、
「これはほんのお礼です。受け取って下され」
と言うて、
荷車から古いサーフボードを取り出して、
板長にくれたと。
あくる朝、
板長は熊ヶ浜に行き、
お遍路さんからもらったサーフボードで波に乗った。
すると、
信じられないほど上手に波に乗ることができて、
熊ヶ浜小屋に集まったみんなから、
「忍者みたいやった」
「天才やね」
「昨日とずいぶん違いやな」
と言われた。
「どうして」
「何をしたら、そうなるん」
みんなが根ほり葉ほり聞くので、
昨日のお遍路さんの話をすると、
それが番頭の耳にも届いた。
三度の飯よりも波に乗るのが好きなタヌ番頭は、
「ほんなことなら、私も何ぞやるがじゃった」
と残念がり、
女中さんたちを呼びつけると、
「ええかね、
今度あのお遍路さんを見かけたら、
じきに知らせてよ」
と言いつけたと。
それからしばらくして、
そのお遍路さんはまた村へやって来た。
ちょうど板長が見つけて、
家へ招き入れたと。
「この間、私にサーフボードをくれた方が見えました」
と言うたら、
タヌ番頭はニコニコして、
「さあ、何でも欲しい物をあげるよ」
と言うて、
酒も何もかんも、
女子供のものまでも手あたり次第に物をやったと。
するとお遍路さんは、
お礼だと言って、
サーフボードをくれた。
喜んだタヌ番頭は、
すぐに熊ヶ浜に行き、
波に乗ろうとこぎ出すと、
サーフボードは泥でできちょって、
波に乗ろうとしたら溶けてなくなってしもうた。
そのままワイプアウトして、
波打ち際の岩の上に打ち上がってしもうたき、
岩の上で踊りゆうみたいに見えたと。
踊りゆうのを熊に見られて笑われてしまい、
タヌキ踊りと名付けられたそうな。
おわり
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【第二部】
この日は魚がやたら跳ねていた。
陽が落ちる前に竿を振ると、
オオモンハタがかかった。
それはフィッシュ・フライとなって、
サルサソースとトルティーヤを使って、
フィッシュタコスとなった。
それにしてもこのオオモンハタ。
昨年はほとんど釣れなかったのに、
海とは不思議だと感じ入った。
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【巻末リンク:土佐民話シリーズ】
【巻末リンク*2:ドラグラ登場人物奇譚】
Happy Surfing and Happy Lifestyles!!
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