〜7号までのあらすじ。
1970年代、
ノースショアに住む主人公は、
タウンに向かう途中で美女と一緒にタウンに行くことになった。
彼女はマウイ島に住んでいて、
ワイキキでサーフする約束を取り付けると、
「ぼく」は物語のストーリーが浮かんだ。
8.
軽い食事を求めてカカアコに寄ったのは、
アーバン・アイランド・ソシエティと、
ポルトガル料理のおいしいお店がここにあるからだった。
パンチボウル・ストリートを右折して、
海に向かっていく道路のひとつ手まえのわき道へ、
ぼくたちを乗せたフォード・ランチェロは入っていった。
ほんの少しだけ走ると、
左側に木造平屋建ての青い屋根の建物があった。
ドアの縁だけが屋根と同じ青、
白い壁は民家そのものだ。
看板すら出ていないのだが、
スライド・ドアを開けると、
せまい店だが、
4人掛けのテーブルが3つあって、
カウンターにも3人も座れるようになっていた。
店主が調理場から手を拭きながら出てきたので、
「2スープ、オールソー、
2ダブォチーズ・サンドウィッチ、
プット・イン・ザ・バッグ」
と、ぼくは言った。
そして店主は、
「YEP」 とこたえた。
三文字でできている平凡な一言による返事だったが、
ハワイに生まれ育ったポルトギーの発音としては、
完璧だった。
その完璧さのなかに、
ぼくは懐かしさを覚えた。
「それからタイ・アイスティもふたつ」
「OK」
店主はカウンターの角にある注文用紙にインク・ペンで符号のようなものをざっと書き、
エイプロンを締めながら調理場のドアの向こうに姿を消した。
窓の向こうには、
林に向かってカメラをかまえる夏子が見えた。
(9に続く)