【日曜日の連載シリーズ】
銀鯖道の夜
七
ジロバンニは眼をひらきました。
タマサキの丘の上でねむつてゐたのでした。
胸は何だかをかしく熱り、
頬にはつめたい涙がながれてゐました。
テイクオフのやうにはね起きました。
あたりはすつかりさつきの通りでしたが、
なんだかさつきよりは熱したという風でした。
【解説】
ジロバンニくんは、
目を覚ました途端になぜ涙があふれてきたのか。
私はそのことについて、
想いをめぐらせていました。
すると、
石川啄木の永遠のテーマである
「夢を追う者のかなしみ」が、
ジロバンニくんに重なるように感じられたのです。
読者は、
これまでのエピソードでジロバンニくんがとても優しく、
そして感受性がとても高いことを読み取っているはずです。
とすると、
もしかすると悲しい予感があったのかもしれません。
(8へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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