【日曜日の連載シリーズ】
銀鯖道の夜
五
ジロバンニはぢつとタマサキを見ながら考へました。
(ぼくはもう、
サーフしてしまひたいといふ氣持がするのでした。
陸からはなれて、
波壁へ、
どこまでもどこまでも飛ぶやうに滑つてしまひたい。)
ジロバンニはタマサキから遠くひろがつた海を見わたしました。
そこから父ちやんの車の音が聞えてきました。
父ちやんの車は銀いろの日産キヤラバンですが、
それは青いろのホーミーといふ型のやうに見えました。
けれどもその中には居るはずの父ちやんが見えませんでした。
(次の原稿幾枚かなし)
【解説】
この青いホーミーは、
旧版にはかかれておらず、
第四版で加えられた章である。
銀鯖道の旅を読み進めるにあたり
父ちゃんの車が日産キャラバンなのか、
ホーミーなのかというのは、
物語のなかで重要な役割を果たしている。
賢明な読者なら気がついただろうが、
すでに物語の鍵となる、
「夢のなか」といった概念が読み手に提示されはじめたのだ。
さらにこの章では、
ジロバンニのサーフィンに対する気持ちが描かれている。
長く続く波壁が好きなこと。
タマサキの波のすばらしさ。
この一節を通じて、
読み手はタマサキ波の美しさを思い描き、
その波とジロバンニが今後どのように関わっていくのか、
期待をふくらませることになるのである。
そしてこの後の原稿が失われているので、
物語はさらなる空想となることがわかります。
(6へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
このたびの能登半島地震により被害を受けられたみなさまに
心よりお見舞い申し上げます。
みなさまの安全と被災地の一日も早い復旧を願っております。
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