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【サーフィン研究所新連載:宮鯖賢治】銀鯖道の夜 その1_(1313文字)

いまからちょうど99年も前に宮澤賢治(宮沢賢治)が、

『銀河鐵道の夜』(銀河鉄道の夜)を書きはじめた。

(1924〜1931年ごろまで)

これが未定稿のまま、

遺(のこ)されたことで、

さまざまな解析や解釈が無数に生まれた。

この未完の作品から生まれた派生作品は数多く、

1985年には、

アニメーション映画となり、

細野晴臣さんが楽曲をつけたことでも知られている。

私たちが在籍するドラグラ

(ドラゴン・グライド・プロダクションズ)でも、

ミヤサバ先生が、

『銀鯖道の夜』を書かれていた。

これをここで原文のまま掲載する予定だった。

ただ、

旧かなづかい(古典仮名遣い)なので難解だ。

やはり「読みづらい」

ということで、

新字への変換作業を請けました。

けれど、

新字にしても、

内容が読者に伝わりづらいのではないだろうか?

そんな編集会議が続きました。

掲載することは延期されることになり、

しばらくの時が経ち、

「私見考察」という名の解説版が完成しました。

で、ようやく掲載へとなって、

本日は毎週日曜日連載の第一回目です。

私は、

先生が没されてから15年後に岩手で生まれました。

先生が紡いだ物語によって、

さまざまな想像力の源になれたらと思い、

ジロバンニやシギパネルラの気持ちになって理解し、

みなさんに伝わるようにこころをこめて解説を書きました。

まずは原文の冒頭です。

古典仮名遣いなので読みづらいでしょうが、

8行だけですので読んでみてください。

.

一 午後の授業

「ではみなさん、
さういふふうに波だと云はれたり、
日本書紀のはじまりと云われたりしてゐた、
このタマサキ地区のほんたうは何かご存知ですか?」

先生は、
黒板に吊した大きな千葉縣上總國地圖(ちず)の、
川が海に流れる帶のやうなところを指しながら、
みんなに問ひかけました。

(『銀鯖道の夜』より引用)

千葉の房総沿岸エリアに住む主人公たちの先生が、

タマサキ波のことを語りはじめてこの物語は始まります。

物語の前半部分は、

本作のなかでも現実に即した描写が多くなされている部分です。

この授業では、

タマサキ・エリアの概念や、

エックス、

ジェフリーズ、

イリエなど各サーフブレイクの地形に対する丁寧な説明がなされている。

うねりの大きさや向き、

潮位と風向き、

そして地形が、

波に対して重要なモチーフをなしているのだとわかります。

ほがらかなジロバンニは、

「どっちでもいいよ〜」と、

中庸(ちゅうよう)なる立場を取る少年で、

性格は底抜けに明るく、

周りにいるみんなを輝かせたと描かれていきます。

さらに物語の序盤では、

彼の状況についても克明に描かれます。

ジロバンニの家には、

ネコが二匹いること、

フラプチイノが好きだけど、

スタバはかなり遠くにあるのでめったなことでは行けない。

けれど、

そのモールまで行くと、

お代わりできるトンカツ屋さんがあるということ。

そのトンカツ一切れで、

ご飯をお代わりしたこと、

エックスでケントやユウト、

カリン兄弟たちと楽しく波に乗ったことが描かれます。

この章では、

もう一人の主人公であるシギパネルラの存在が顕示されずに物語が進みます。

(考察2へ続く)

文責:華厳旭

毎週日曜日連載