いつからだろうか、
乗らずにはいられなくなった。
もちろん波のことである。
壁を見ると波と思い、
体を傾けそうになる。
木の枝がたわんで覆い被さっているときは、
体を縮めてその中を通り抜けたくなる。
新聞を読んでいて”サーフ”という文字を見るだけで目が止まる。
波乗人の二元論:
昼と夜または、
光と闇。
善と悪または、
無垢と開発(テトラや堤防)。
精神と物質または、
乗り手とサーフボード。
このふたつの原理の対立から学ぶことは大きい。
問:酒場でサーファーとして通ぶりたいのですが?
答:まずはサーフブレイクのこと、
そしてサーフボードのことは話してはいけません。
酒を勧められても「バランスが崩れるから飲まない」
と言って水だけを飲んでください。
そして注目された瞬間に椅子に足を乗せて、
床に腕をつき、角度をつけたまま腕立て伏せを30回連続でします。
終わったら息を切らさないようにして、
スマホで波情報に目を落として、遠くを見ます。
これで酒場にいる全員があなたをサーファーだと認めるでしょう。
問:コンテストに出ているのですが、負けてばかりいます。どうすればいいですか?
答:コンテストに出なければ負けません。自己採点して満点を目指してください。
【もしNAKISURFがイタリアンレストランで、フルコースのメニューを考えたら】
アミューズ:波が上がる波情報に興奮して仕立てたリンコンのウニのタルタル
アンティパスト:夜明け色のブルスケッタ
アンティパスト2:千葉沖で獲れたサンマのスモーク
プリモ・ピアット: 美しき青きゲッティングアウト風カペリーニ
セコンド・ピアット :釣り立てヒラメのパーフェクト・テイクオフソース
サード・ピアット :但馬牛のバレル包み焼き
サラダ:採れたて海藻と、地元有機野菜をマンライ・ドレッシングで
ドルチェ:夢波膨らむスフレと、夕陽黄桃のコンポート
コーヒー:わかしお29号車内販売風エスプレッソ
夏の日。
夢の日。
いつか来る波を夢見て生きる日。
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