南うねりはまだ続いていて、
この意味は、
南半球のニュージーランドが本格的な冬となり、
海が長時間大荒れに荒れたということを意味している。
日本も台風で大荒れですね。
どうぞお気をつけてお過ごしください。
今日は大雨のようなので、
字数を上げて、
エンターテイメント風としてみます。
Tyler Warren’s Function Hull 6’8″
.
これは乗りづらいことこの上ないが、
満潮鎌倉七里ヶ浜波を思い出すにいたった。
マンライ(マンゾク)&満潮ライディング。
□
浜で合流したのは、
フォードアーズサーフ塾生の兒玉さんことダマシーと前田さん。
おふたりとも7ヶ月前にサーフィングをはじめたばかり。
初回チャレンジで、
チャンネルをうまく使って沖に出ることはできたのだが、
白波に押されて乗った後は、
沖に出るルートを失ってしまい、
疲労困憊&自信喪失して上がってきたのはダマシー。
後でこのときの気持ちを聞いてみると、
悔しく、
そしてショックだったそうだ。
ここで、
ここからを彼のストーリーとすることを決定し、
ダマシーが崇拝&敬愛している渋谷直角さんの文体で書いてみることとします。
渋谷直角さん直筆の、
「ダマシーの似顔絵」(お宝認定)
ではいきます。
□
[あしたのダマシー(前編)]
「なぜだ…..悔しすぎる…..」
ダマシーは落ち込んでいた。
青のオディシーボードを横に置き、
揺らぎもせずに沖を見て、
砂浜に立ち尽くしきった後、
ものすごく暗い顔でそうつぶやいたのだ。
その姿のあまりの凹みっぷりに、
僕は何ごとか、と思わずカメラを向けていた。
車に戻ってきた彼は、
「サザエさん」のカツオが、
父である磯野波平に怒られたときの顔をしていた。
僕がカツオのファンだということは、
ベストセラー一歩手前の「直角主義」に書いた。
カツオの、
リスクを顧みないフロンティアスピリッツが好きなのである。
泳げない=水が怖いダマシーに
「もう十分がんばったから大丈夫です。次回があります」
とやさしく言うと、
「いや、このままでは引き下がれません」
タオルを顔にうずめたまま彼は確かに言った。
そして眉毛だけは、
さいとうたかを(©ゴルゴ13)が書くような
劇画調になっていたのを僕は見逃さなかった。
「もう一度行くべきだと伝えよう」
そう決心した瞬間、
突然僕に「あしたのジョー」の丹下段平が憑依して、
ダマシーが矢吹ジョーに見えてきたのだった。
.
「この4枚のドアはな、人呼んで涙扉と言うんだ。
人生にやぶれ、生活に疲れ果て、ここに流れてきた人間たちが、
波乗りを始め、涙をにじませながら乗る、哀しい波だからな。
おめえもいまそのひとりになったんだ。
この涙扉のピークに自分の力で出て、
あしたの栄光めざして第一歩をふみだそうぜ。
ああ?わしの言うてる意味がわかるかよジョー!」
.
そんなセリフがすらすらと浮かんできたが、
実際に伝えたのは、
「シャワーの前のチャンネルを見てください。
波が押し寄せてきた後、
その水がどこから沖に戻っていくかを見て、
その流れと一緒に沖に出たらいいですよ」
と実に普通のものとなった。
決心した劇画ジョー風のダマシーは、
ボードを握りしめ、
リーシュを確かめて沖に出ていく。
決心した彼に波が感心したのか、
ウナクネカードのウルトラレア引きなのかはわからぬが、
セット波も入ってこないままピークまで行けた。
しかし、海はときに無情なものである。
本日一番大きなセットがフォードアーズを覆い、
「ああ無情」
押し寄せる波群がダマシーに拡がり、
そして多々群がり、
岸近くまで押し戻してしまった。
「もう十分だ、君はよくがんばった」
W杯で負けて帰ってきたザックジャパンにかけたような言葉が浮かぶ。
しかし彼は矢吹ジョーが憑依しているようで、
のらりくらりとボードの上に乗り、
また沖に戻り始めた。
ふと白木葉子がジョーと段平にかけた言葉
.
あなたは「あした」…と言っているわね。
しきりに… 「すばらしいあした」と言っているわ。
.
そんなセリフを思いだしていた。
やがてのらりくらりパドル戦法で再び沖に出たダマシー。
そして彼の前に完璧にピークする波が迫ってきたのだった。
千載一遇のこのチャンスにキャッチサーフボードをこちらに向けて、
真剣にパドルを開始する彼が400mmレンズの中に見えた。
その表情はまるで、
ドラえもんがいなくなってしまい、
自分だけで自立しようと決意したのび太そのものだった。
(てんとう虫コミック6巻、「さようなら ドラえもん最終話」)
よーしもっとパドルだパドルパドル!
アゴを下げろ、
歯を食いしばれ、
もう右、左ともう一回ずつ漕いでくれぃジョー!
「よーしよし、たて、立て!立つんだジョー!」
僕は完全に丹下のおっちゃんである。
よし、やったぜジョー!
まずはバックハンドだな、
やや内角をねらい、えぐりこむようにして乗るべし!
「あちゃー、
ダメだ、それじゃラインが高すぎる。
力石の思うつぼだぜ」と、
なぜかこの波が力石徹に見えてきてしまった。
リングロープの反動のようなバックウオッシュも相まって、
力石渾身のカミソリアッパー・カットがジョーに決まった。
ジョーーーー………..。
力石がバックウオッシュと共に放ったカミソリアッパーカット。
ハイラインでそれをまともに喰らい、
「玉砕か、かっこいいな。
おっちゃんの声が三途の川の向こうから聞こえてきたぜ」
と言い残してマット(ボトム)に沈んでいくジョー。
「ジョー…もうよそう。
お前は波乗りを始めて7ヶ月で、
この偉大な波にピークから漕いで立派に戦ったんだ。
もうこのへんでおしまいにしよう。
あのアッパーバックウオッシュさえ来なければ勝てたんだ」
「待ってくれよおっちゃん。
俺は、まだまっ白になりきっていねえんだぜ」
「まっ白? まっ白たあ、どういう意味だ、ジョー?」
「たのむぜ、おっちゃんたのむ、
まっ白な灰になるまでやらせてくれ。
なんにも言わねえでよ」
そんな台詞で浮き上がってきて、
またボードをつかみ、
パンチドランカー状態のまま、
よりのらりくらりとなった兒玉さんが、
再び沖へ向かっているあいだ、
僕は段平とジョーがするであろう会話を妄想していた。
(つづく)
[あしたのダマシー(後編)]
ピークはすぐに見つかった。
真っ白に燃え尽きたいジョーは、
危険なまでに切り立ったピークの下で板を返した。
段平から白木葉子に生まれ変わった僕は、
「もうすこしじゃないの矢吹くん、
がんばるのよ。
あなたがあのフォードアーズとどこまでりっぱに戦いぬくか、
最後までしっかり見とどけさせてもらうわ!
さあいいわね 力いっぱいパドルするのよ!
渾身の力をふりしぼって悔いのないようにしっかりパドルするのよ!」
と感嘆符をそれぞれ3つの語尾に付けながらレンズ台座を握りしめていた。
この波はジョーからダマシーに戻り、
葉子から僕に戻った長い旅だった。
ダマシーは勝ち目のないこの勝負に勝ったのだった。
それはまるで、
初心者がバックサイドで、
タスマニアのシップスターンを滑っているようにも映った。
ありえない話だ。
やった!
それほどまでのキセキの逆転劇。
僕にはいま彼の顔が、
あしたのジョー作者のちばてつやの画ではなく、
本宮ひろ志さんの「俺の空」安田一平の顔に見えていた。
「ようやったぜ、わしゃあもう、
もうなんも言うこたあねえ。よう、やった」
段平がまた戻ってきて、
この項は感動的なハッピーエンドで終わります。
つづきがあればつづく!
〈終〉
□
海に戻ると、
「危険すぎるほど危険だったショアブレイク突入事件」
を冒したヤマハ前田さん。
見ていた全員は、
てっきりあれで前田さんが即死したと思っていたが、
なぜか無傷で戻ってきて、
「怖くなかったのですか?」
と聞くと、
「いえ、全然」と言っていた。
まるでいつかのシギーGのカムカム・ショアブレイクだ。
けれど、
私があれほどまでに危険なものを見たことがない。
満潮傾斜浜に直接めり込んだサーファーは、
長いサンオノフレの歴史でも類い希なことだろう。
ここでは2014夏事件としてその名を記しておきます。
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黄昏を眺めつつ、
みんなで浜のベンチでお持ち帰り中華を食べ、
ウナクネ話で盛り上がって最後に見たのは月夜波。
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昨日のハービー・フレッチャー展の模様by三蔵瀧朗。
瀧朗は、
日本にいる間アレックス・ノストたちをアテンドして、
てんやわんや珍道中となったことから、
苦悩ウナクネ添乗員としてその名を知られた。
ハービー・フレッチャー始皇帝の大展示@ランキャスター。
レポートbyウナクネ三蔵法師瀧朗(シニカルな翻訳家でもある)
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ハーちゃんことハービー・フレッチャー始皇帝の晴れ姿。
クリスチャン・フレッチャー(銅鑼ちゃん)と女帝ディビ。
この展示は、
ランキャスターのMOAH(アート歴史美術館)で8月末まで。
会場の詳しくは、
http://www.lancastermoah.org/exhibition.php?id=228
でわかると思います。
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ラグーナの秘境ショアブレイクでのカラちゃんことカラニ・ロブ。
このブレイクについての詳しくは↓のリンクをご覧ください。
ラグーナの秘境ショアブレイク_電車止めや高速道路の衝撃緩和材にも使えそうなソフトボードの魔力_キャッチサーフ天国_(1456文字)
それでは、
今日もNAKISURFにお越しくださってありがとうございました。
私は、
これからキャッチサーフのミーティングに向かいます。
また明日!
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