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【サーフィン研究所講座】波獣テイクオフまでのドラマ_インパクト先の機敏_(2538文字)

一昨日、

私は波に相対(あいたい)してきて、

『魔獣』、『波獣』という言葉を使った。

波が下がってくると、

『奄美のすばらしい波』に変わった。

『獣=ケモノ』から『すばらしい』とまで評価が変わるのは珍しい。

例えば、

「巨大なイノシシが民家を襲った」

そう聞けば、

ケモノがすることだと畏怖し、

自分の場合ならどのように対処するのかをシミュレートするだろう。

宮崎駿さんなら「シシ神の仕業じゃ!」などと、

物語の前半あたりでヤマ場を作るだろう。

そんなどうにもならないケモノ=奄美の台風波だった。

NATION EAGLE 6’8″

.

撮っていただいた画像を見ていたら、

私を襲うホワイトウォーターが竜頭群になっていた。

もし振り返っていたら、

海水に姿を変えた獰猛な竜たちがいたのだろう。

そういえば、崩れた瞬間の音もすごかった。

『轟音咆哮』

こんな小説が書きたくなった。

「珠丸」書き進めています。(業務報告)

NALU誌コラム脱稿。

今回は『環境』についての怪談を書きました。

10日発売ですので、

お楽しみにお待ちください!

さて、

なぜ私はこんな魔獣波に乗る顛末となったのか。

そんなことをここに書いてみます。

まずは前置きとして、

私たちーー熊ちゃんと私は沖のピークで波を待っていた。

状況はうねりが衰退しているのに加え、

潮止まりというダブルヒットで一切セットが入らなくなっていた。

英語で言うところのシャットダウン。

波のスイッチが切られてしまった状態だった。

けれど待つ。

水平線を見渡して、目を凝らして見ていく。

東側も南側も。

けれどうねりらしきものはない。

周りの風景を見る。

竜の形の雲は出ているかは自分の卦にとって重要なので、

雲が浮き出した竜の破片を探していく。

ある程度して、

セットは当分やって来ないことを確信した。

こういうときすることは自分の場所を求めること。

まずは陸側正面。

森の後ろに見える電波塔と、

その後ろの山の稜線を重ねてA点を作り、

B点は横側に。

堤防と標識、そして遠くの別荘をつないだ。

こうして自分の位置を作って、

そこから流されないようにしていく。

その間、熊ちゃんと去年の波、

伝説の年の魔獣波の回想を聞いていく。

少しすると、

かなり流されていることに気づいた。

で、先ほど設定した自分の地点、

A+Bの位置まで戻っていく。

およそパドル50回ほども流されていた。

すごいカレント(流れ)である。

それからも波のことを話しつつ、

沖への監視を行いながら、

ずっとパドリングで定位置をキープしていた。

「もう波高が下がってきている」

そんなうれしくない予感があった。

(実際の波高ピークは朝だった。この撮影は午後5時頃)

けれど波高というのは、

上下しながら小さくなっていくものなので、

魔獣波が来る可能性は十分にあった。

大うねりは入らないまま時だけが経っていく。

そしてついに。

私たちはうねりを見つけたのだった。

沖に1本だけ動く影があり、

その波高が高すぎて、

後ろは見えず不明だが、

とすると、2本目以降があるのなら、

この1本目の波高より大きくはないはずだった。

「これだ!」

そう決めてうねりのピーク側に動き出した。

だが、これに熊ちゃんが入るようで、

こちら側を向くようにガンボードを返した。

けれど、

熊ちゃんは、

ファーストセクション側のふくらみが気に入らなかったようで、

パドリングを止めてしまった。

私は上記したように「この波」と決めたが、

熊ちゃんがパドリングを始めたので、

「この波」をあきらめたばかりだった。

けれど、こういうことは常に想定しているので、

瞬時にイーグルを反転した。

パドリングを始める。

情報を入れていく。

ふくらみとはこれかと、

なかなかエグそうだとかそんなこと。

もうひとつは、

途中から切り出して(テイクオフ初頭の動作のこと)いるので、

パドリングの漕ぎ出しが遅く、

どうやら波に対しては遅延していることも知った。

ただ、

この波を熊ちゃんから引き継いだ責任があるから、

飛び込んでも波の中は入る心づもりだった。

イーグルは、

たった6’8″の長さなのに、

ガンに匹敵するほどのパドル能力がある。

いわゆる”パドリングが早い”ボードだ。

それを活かしてリズミカルに、

深く、強く、腕を最大限にしならせ、

水を多く掴みながら漕いでいく。

入った。

自分の右側がピークセクション。

この後ろに入ったから熊ちゃんはそれを見極めて止めたのだろう。

私は「この波」という最初の直感を信じつつ、

テイクオフの体勢に入った。

オフショアを受けて、

速度よろしく降下していく。

「ヒクク・ヒクク」

これは私のテイクオフのときの真言である。

要は体勢を低くしなさいと、

立ち上がるまで自分に言い聞かせている。

そうでないと体はなぜか立ち上がってしまう。

恐怖なのか畏怖なのか、

または誇らしいのか。(笑)

それを戒め、

さらには動作として機能する真言なのでお使いください。

低く低くをもう忘れて、

すっかり立ち上がろうとしている私が映っている。

ズドンと降りたけど、

有効波セクションからは10mほど後ろだった。

途中で斜めターンが出来たら良かったのだろうけど、

降りるのがやっとだったので仕方がない。

(ボードサイズを上げる〈8’0″くらい〉ことでメイクできる)

とにかく降りてきました。

手をこうして挙げるのは、

後ろから白波(魔獣波)に押されることを想定していたからであろう。

押されても前に出られるように、

弾かれないようにと編み出した必殺技なのであります。

けれど、

魔獣は文字通り無慈悲であります。

こっちの思惑だろうが、

人生だろうが知ったこっちゃありません。

前方にあるもの全てを襲います。

私もあっけなく吸われてしまいました。

けれど必殺技の効果ありで、

前に吐き出されてきた。

遠山の金さんではないが、

『これにて一件落着』と相成りました。

まあ、たかがクローズアウト1本の波ですが、

そこにはこんなドラマが存在していて、

そのおかげで私は竜波だか、

魔獣波に乗りつつ、生還してきたという事実。

サーフィンとは、

深く、そして野蛮なのでありました。

『野蛮波に乗ろう、猛獣波を喰らおう』

そんなガイドツアーのボディコピーを得たので、

本日の講座を終了します。

Happy Surfing!!