季刊『鰻捻春秋』
初夏号
特集『北原白秋』
海豹と雲( 昭和四年)
序
風格高うして貴く、
気韻清明にして、初めて徹る。
虚にして満ち、
実にしてまた空しきを以て、
詩を専に幻術の秘義となすであらう。
鳥の皐栩る、
ただに尋常の行であらうか。
海豹の水に遊ぶ、
誰かまた険難の業とのみ判じよう。
雲は太古にして若く、
波は近う飜つて、
かへつて帰する際涯を知らない。
詩は我が生来の道である。
その表現の玄微に好んで骨を鏤る。
畢竟は我がふたつなき楽みを我と楽むのである。
ただ志して未だ風韻の神に到らず、
境涯整はずして、
また未だ苦吟の傷痕を脱し得ざるを恥づる。
望んであまりに遼遠なるが故に、
深く頭を垂れるのである。
北原白秋
風と蝶
蝶を追ふ 光る風並。
風並の そよぐ青萱。
この道の はてしなさ。
空はあり、 空の奥。
風は追ふ。
草の葉
小さき童のつむりにも
月の光はしたたれり。
草の葉しるき土のうへ、
影は風とし揺りそよぐ。
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『鰻捻春秋』
編集後記:
昨日ここに寄稿してくださった
『三八手の風』を執筆いただいた片岡鯖男先生は、
「四国にカンズメさ」と言いながら、
こんな魅惑的な写真を送ってきてくれました。
正面に青龍寺を抱く最東部の「竜」が裏手に見えます。
(横浪半島、土佐市竜)
使い込まれた机には別冊太陽の棟方志功特集(1974年夏号)があり、
その昭和49年に引き込まれますが、
MacBookプロがあるのでかろうじて現代だとわかります。
ちなみに中央に見える宇佐大橋は、
昭和48年開通なので、
もしこの写真が1974年のものだったら、
新品の橋が架かっていたことでしょう。
それにしても先生の簡易スタンディングテーブルを成す
段ボール箱にほっこりしました。(編集部:英治)
Happy Surfing!!
◎