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【ミヤサバ作】『幸せのタローマン』その1_同時上映:キャッチサーフ祭_(1855文字)

Tyler Warren Dream Fish 6’7″

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『幸せのタローマン』

宮鯖 賢治さく

(新字旧かな)

タローマンは、

町の『新滑走俱楽部(The New Gliders Club)』の選手でした。

けれどもあんまり上手でないという評判でした。

上手でないどころではなく、

実は仲間の乗り手のなかではいちばん下手でしたから、

いつでも部長にいじめられるのでした。

昼すぎみんなは河口に行き、

県で主宰されるサーフコンテストの練習をしていました。

ハイカラ・マコトは一生けん命バレルに入ります。

しんじょうヤスもスキッパーフィッシュで乗っています。

ベンチュラ・セイジは、

タローマンに幾度も化かされているので、

彼から距離を置いていました。

玉ちゃんもボンザーでクルーズしています。

タローマンも口をりんと結んで、

眼を皿のようにして波を見つめながら一心に乗っています。

にわかにぱたっと部長が両手を鳴らしました。

みんなぴたりと波に乗るのをやめてしんとしました。

部長がどなりました。

「タローマンがリップに当てこまなかつた。

トォテテ テテテイ、もう一回やり直し。はいっ。」

みんなはまた波に乗るのをやり直しました。

タローマンは顔をまっ赤にして、

額に汗を出しながらやっといま云われたところをリップしました。

なんとかメイクしたのでほつと安心しながら、

つづけて乗っていますと、

部長がまた手をぱっと拍ちました。

「タローマンっ。リップのタイミングが合わない。

困るなあ。ぼくはきみにHow toを教えてまでいるひまはないんだがなあ。」

みんなは気の毒そうにしてわざと海の底をのぞき込んだり、

じぶんのサーフボードのフィンがゆるんでいないかを確認しています。

タローマンはあわてて沖に出ました。

これはじつは、

リップしないでもトップタアンでラインをつなぐというマニュバアなのです。

それがわからない部長が悪いのでした。

「その波から。はいっ。」

みんなはまた波に乗りはじめました。

タローマンも口をまげて一生けん命です。

そしてこんどはかなり角度が出ました。

いいあんばいだと思っていると、

部長がおどすような形をしてまたぱたっと手を拍ちました。

またかとタローマンはどきっとしましたが、

ありがたいことにはこんどはセイジでした。

セイジがテイクオフのさいに、

レイルを立てずにまっすぐ降りて、

セクションを抜けられなかったので止められたようです。

そのときタローマンは、

そこでさっきじぶんのときみんながしたように

海の底の玉石へ眼を近づけて何か考えるふりをしていました。

そして大好きな石川啄木の詩を暗唱していました。

「ではすぐ今の次。はいっ。」

そらと思って波のトップに弾き出したかと思うと

いきなり部長が足をどんと踏んでどなり出しました。

「だめだ。まるでなっていない。

このへんは波乗りの心なんだ。

諸君。コンテストまでもうあと十日しかないんだよ。

波乗りを専門にやっているぼくらが、

あの万次郎だの心太屋の丁稚なんかの寄り集りに負けてしまったら

いったいわれわれの面目はどうなるんだ。

このコンテストの結果は高知新聞にも掲載予定なので、

結果を出して、

浦ノ内の金山さんに写真を撮ってもらおうではないか。

おいタローマン君。君には困るんだがなあ。

マニユバアということがまるでできてない。

芸術というものがさっぱり出ないんだ。

それにどうしてもぴたっと他の人と合わないものなあ。

いつでもきみがクネクネとみんなのあとをついてあるくようなんだ、

困るよ、しっかりしてくれないとねえ。

輝ける『新滑走俱楽部』がきみ一人のために悪評をとるようなことでは、

みんなへもまったく気の毒だからな。

では今日は練習はここまで、休んでくれ給え。」

みんなはおじぎをして、それから堤防の上に行きました。

タローマンはその粗末なサーフボードをかかえて、

東の方へ向いて口をまげてぼろぼろ泪をこぼしましたが、

気をとり直して、

みんなの波乗りをはじめからしずかにもいちど思い出しました。

(2へ続く)

【同時上映:Catch Surf祭@スネーク】

バリの山崎さんは、

今では珍しいバリー・マッギーの76でドノバンターン。

市原マーちゃんは、

シグネチャーである6でサバ手ハッピー。

しょう寅杉本さんは、

このとき口上を考えていたんですと教えてくれた。

すばらしいスタイルの市原マーちゃん。

河合和尚のハイスピードトリム。

忘れられないサーフセッション。

Happy Surfing!!