奄美大島は大嵐となった。
低気圧が通過しているのかと思い、
天気図を見ると、
東に長い停滞前線(Stationary Front)があるだけだった。
しかし、
この大荒れの天候をどのように説明したものかと、
ウィンディの色別アニメーションを見てみると、
30〜40ノットの猛烈な東風が、
奄美大島や沖縄が属する南西諸島に吹き込んでいた。
勇生くんや熊ちゃんが大好きな波があり、
そこを見に行くと、
ファーストピークは、
堤防の沖でブレイクしていた。
ここからだと小さく見えるが、
実際はかなりのものであり、
軽く200mは乗れる波が次々とブレイクしていた。
慌てて勇生くんがやってきて、
「波良さそうですね!」
そんなことを言いながら7フィートのガンを抱えてパドルアウトしていった。
どんどんサイズアップしているので、
私もパドルアウトすると、
沖には、
元NZサーファー代表のアンディ・ジョーダンがいた。
(巻末リンク*2を参照ください)
セットがやってきて、
気づいた瞬間に崩れ、
ドカリと重く、
冷酷な泡波を喰らった。
しっかりと深くダックダイブをしたが、
ボードごと波底に吸い込まれた。
どこまでも沈められた。
耳抜きをしていなかったら、
頭が痛くなるほどの水圧がかかった。
なんとか浮かび上がり、
もう一度、
さらにもう一度と沈ませられた。
次に浮かび上がったときには、
酸欠なのか、
恐怖だったのかはわからないが、
全身が攣ったように硬直してしまった。
もはやこれまでと、
ボードにつかまり、
ダックダイブはしないで、
ただ波の下に体を沈ませるだけをしていった。
無慈悲なる波群だと、
任意で機能を切った頭の中でそれだけを考えていた。
結局5本喰らって、
岸近くまで戻されてしまっていた。
5本で200m以上も引きずられるとは、
世界的にも凶暴というか、
強烈な波だと身を持って知った。
再びラインナップに戻り、
波を待っていると、
待望のセットが来るのだが、
たいていは自分たちがいる位置よりも遙か沖でブレイクしてしまう。
先ほどと同様にダックダイブするが、
次にもその後ろにも大きな波が来ているので、
また陸側に引きずられていく。
そんなことを何度も繰り返しながら乗れる波を待った。
過酷な日でもあった。
こういうときは、
自分が10分の一くらいに小さくなり、
サーフボードは割り箸みたいに感じられ、
常に波に翻弄されていた。
Tyler Warren 2+1 / 6’5″
Greenough 4A-9″ + VEKTOR VMK
.
なんとか乗ると、
沖でカービングさせながらミドルセクションまで来て、
そこからインサイドセクションに入る。
遙か彼方までロングライドできる波にひさしぶりに乗った。
興奮というか、
発火というか、
魂の内部に火が点いたようになった。
これはインサイド・セクション。
インサイドですら波の厚みが12mくらいある。
猛烈なる海のパワーを受けながら私は、
中原中也が訳したランボオの詩(1871年頃のものか)を思いだしていた。
心に深紅の火が燃えていれば、義務は済むものだ。
(さらに意訳しました)
これが本日の予想。
うねりは下がって、
2m高、
8秒間隔程度だが、
実際にはもっとありそうだし、
また無慈悲と感動が混在するサーフィンに行くのだろう。
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【巻末リンク:2年前の同ピークも無慈悲だったとわかる】
【巻末リンク*2:アンディ初登場】
Happy Surfing and Happy Lifestyle!!
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