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6.4m@16seconds/NW_SURF SURF SURFのおまじない_自身総力をもって望んだ” 鮮烈体験の結節点_畏怖する波と向き合うこと_(1832文字、短編です)

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/19559

(昨日からの続き)

21feet@16seconds/NW

モンスター計測値をたたき出したこの北東うねり。

簡単に言うと、

“沖にある浮標を、平均的に6.4m持ち上げた”

というスゴイうねりだ。

しかもそのうねり頂上から頂上までの間隔が16秒間。

この秒数を数えてみるとわかるが、

巨大うねり群を作る猛風。

しかも長時間、

連続的に吹かないとこれだけの海面は動かせない。

この波はサーファーの持つ究極的なロマンなのか、

それとも何かの啓示なのか。

俺にはまだわからない。

上の写真は、

昨日ポストした数コマ前のだが、

そのクローズアップ版が下の画像。

いったい誰がこの波を滑り降りることができるのだろうか?

アンディ(・アイアンズ)がいたら

パドリング(トウインでないということ)で滑ったのであろうか。

幻想にも似た波群に俺は圧倒され、

「逆転を内包した苦悩の契機」

という埴谷雄高さんの難解な一節を思い出していた。

「沖に出るべきか?」

そしてすかさず俺は予断なく、

『栄誉』というテーゼをここに掲げた。

だが次の瞬間には、

『平和』、『安泰』という言葉が浮かび上がってくる。

これらの言葉は、

同じ種類の単語だと思っていたが、

Theを通り越して、超が付くイナリーズだと、

どうやら違う方向へ導くのだと知った。

埴谷さんの

「私たちは破壊や混乱を熱愛しているのだ。」

という定義までも思い出して再度挑もうとし、

さらにはロックンロール的な、

いや勇敢な男としての挑戦心も

波をよく見れば見るほど失せていくのを感じた。

乗るべき位置、

つまり波の中に入ることができるランプが見あたらないのだ。

俺はまだ五体満足でありたかったのかもしれない。

と結論づけてイナリーズを後にし、

向かったのはこの巨大北西うねりが回り込んでくる闘牛岬周辺。

先日から”BD3倶楽部”に入信した早川さんは、

遅ればせながらミニボードの愉しさに気づいたようで、

長老フレちゃんと、

「なぜこのボードはすばらしい滑りをするのか」

というテーマの内容を熱く語られていた。

上の写真と、

下の写真は同一波です。

このサーファーのように

ピークのどまんなかから波内に入ろうとすると、

こうして強いせり上がりによって阻まれてしまう。

ではどうすればいいのかと言いますと、

せり上がりの奥から突進すれば良いのだが、

もしテイクオフがメイクでき、

壁に張りつくことができたとしても、

この一気に小さくなる穴蔵(バレル)

を光速で滑りだしてくることができない限り、

しこたま海底に叩きつけられていることだろう。

でもその方法しかないのだから、

超イナリーズは、

パドリングサーフィンの限界を知らせる波質なんだろうか。

「あー、あれはクジラなら乗れますねきっと。

ヒトは無理ですよ。ぜったいに」

「爆弾みたいですよね」

「はい、平和ではありませんね」

と言いつつ、

今朝俺たちは沖に出た。

一日遅れだが、うねりが下がったので超ではなく、

THEイナリーズという日でありました。

俺はAVISO王子ニックの要望通りBD3-5’0″で。

ここはこれで乗れちゃうんです。

逆に短くないと、

丸くなる斜面にノーズ部が引っかかってしまうので、

あえて短いので入っているということでもあります。

SURF

SURF

SURF

そう言いながらパドルアウトした。

おまじないのような言葉だ。

「ギリギリで止めたり」

「行けそうで行けなかったり」

「遙か彼方までながされたり」

そんな抑圧的なことを通過しながら波を待ち続けた。

「これ、鴨川ですと、シーサイドでパドルアウトして、

マルキまで流されたほどの距離ですね」

「海流というか、ものすごい流れですよね」

「はい、これじゃ完璧に痩せちゃいます」

揺すられ

回され

沈められ

急降下

叩きつけられ

それでもかまわずに波と向き合っていると、

波に乗ることができた。

「小さかった?

いやあれは大きくて強かった!」

波を讃え、

ゆっくりと息を吐いてそらを見上げると、

鳥が流れと同じ方向に飛んできた。

こころが鳥のように軽くなった。

自分が主人公となり、

闇からようやく陽光に這い出られたような気になった。

ここまでの達成感を味わせてくれる波乗り。

これが”自身総力をもって望んだ”

鮮烈体験の結節点としてのちょっとした記録であります。

いつかあなたが

「畏怖する波と向き合うときに」

このことを思い出してくだされば幸いです。

今日も元気に健やかに。

雪にもマケズ

雨にもマケズ

波にもマケズ

すばらしい日に!