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naki's blog

「波乗りは自分への挑戦」_クリスチャン・ワックの新型ノーズライダー!_美しいプルメリア日

いやあ、昨日の「落ち込みブログ」に自己嫌悪して、

「これからは逆真会本部員ならではの行動を心がけよう」

と思った日であります。

で、今朝は風が合っている島南西の闘牛岬、

シュネレガンズには目もくれずにホワイトハウスに一直線で向かう。

連日15から20ノットもの強風に南側は全滅と聞いていたので、

ハイウエイ沿いのパーキングはほぼ無人。

波はセットで軽くダブルオーバーあり、

強いトレードウインド(今日はほぼ東風)にあおられたリップが干潮とあいまって、

ねじれ、よれて、恐ろしくも強烈な無人ブレイクを見せていた。

先発していたカイル・鞠黒が近寄ってきて、

「サーフボードじゃ嫌だから”Catch Surf”を貸してくれ」

と電話であったようにキャッチサーフのソフトボードをサビタから取り出し、

「どうする、入るのか?」

と聞くので、

「間違いなく入るよ。もう俺はあの混雑スパイラルから逃れないといけないんだ」

とBD3にワックスアップ。

この短いボードを使うには伏線があって、

俺が日本にいたときの南うねりがダブルからトリプルサイズのパンピングだったという。

その日のホワイトハウスはうねりの向きが合わず、ほぼクローズアウト状態。

ここのヘビーローカルである巨漢オライアンだけがひとりパドルアウトし、

クローズアウトの隙をついて切れた波に乗り、

「すごいバレルを抜けた」

という伝説に近いシンジツがAVISOのジョンからメールによって届いていた。

ジョンはさらに

「俺はNAKIがBD3で、このホワイトハウスの巨大波を滑るところが見たい。それが今の夢みたいなものさ」

と続けてあったことを思い出したというか、今日ここで実践してみせようと思ったのだ。

狭い浜に降りて、沖を見るとホワイトハウスのセット波リップがたわみ、フェイスが歪み、えぐれながらブレイクしていた。

しっかりと海に、岩に、海面に、そこに浮いているウミガメにも祈ってからパドルアウトする。

「これはもはやサーフィングではなく、修行だなあ」

と宮本武蔵の名言

「我、神仏を敬い、神仏に頼らず」

を思い出した。

突然強い雨が降ってきて、世界を暗くし、横風が海面をさらに凸凹にしていく。

かなり怖い環境となったが、

「これは千日の鍛稽古、いや万日の練稽古の一環なのだ」

と自らに武蔵の言葉を言い聞かせてパドルアウトする。

実際にこのサイズの波はもちろんやったことがある。

けれどこの猛烈なる横風、そしてこの暗さはなんとなく経験がなかったので、

すこし怯むが、もうすでに矢は放たれている。

沖に出ると、ひさしぶりのホワイトハウスにうっとりどっきり。

しかもこの南西、南、南東うねりの特徴なのか、

水の量が多く、ピークの下では干潮マイナス0.11フィートと低いこともあって、

リーフが露出しそうなほどのボイル、

しかもボトム付近がガボガボっとリーフの亀裂を反映してえぐれていた。

それを見て「Whoaaaa」と声が出る。

こんなの降りられるのか?

俺はおとなしく闘牛岬で「いい波」に乗っていた方が幸せなのでは?

ということが頭をよぎった。

そんな中、カイルが真面目な顔をしながらその恐ろしいエグレにドロップを敢行した。

「ゲー、ドドゲー!」と俺が言ったかどうかは定かではないが、

そんな気持ちだった。

カイルは無事そのドロップをなぜかメイクし、

その人生を継続することができたようだった。

セットが入り、一本目、二本目、そして3本目と俺の波だったのだが、

まだ用意と気持ちの整理がついてなくて、

斜面に向かってボードを落とせないでいた。

「できれば一本目は、そこまで恐ろしくない波でピークからするするっとテイクオフしたい」

という希望だが、世の中はそんなに甘くないことを知っているので、

それはあくまでも希望として留め、

カイルが叫ぶ「Go go!」という誘惑にも負けずにそれをスルーした。

そして、また次のセットが来る間、しばしの平和が訪れた。

.

こうなったらこんな恐ろしい波には乗らず、カイルの波乗りを指揮する

『波乗り総指揮』として、沖に浮いていようかと思ったりもした。

すぐに次の波群が水平線にドーンと現れた。

その一本目の波が大きかったが、

水量があるからかそこまでガボガボしていなく、

さらにその波のフォーム(形)が

「俺に乗ってください」

と言っているようにフェイスを拡げていった。

おーし、

「われ事において後悔せず」

とまた武蔵の言葉を思い出し、全力でパドルして波の中に降りていった。

加速、滑走後、全速となったBD3はなぜか大気の上に浮いているような気がして、

さらに俺の意識もスローモーションとなって、

波斜面のコブ、リップのねじれ、エグレ全てを実体験した。

そのままボトムでボードを傾けて、その広いセクションを駆け上がる。

進行方向にダブルアップとなる海面の段を見つけたので、

波の中腹あたりでボードを切るように落としこむと、

それはやはりダブルアップとなり、

波はさらに切り立ち、俺の速度を上げる。

膝を波側に向けて曲げて、壁に張り付きバレル風のポーズを取り、

セクションをすべてメイクした。

次のセカンドセクションは水深が深いことを知っているので、

「ボトムターン後オフザリップ」

と天気予報みたいなターンの切り返しにひとり酔う。

その後、思いきりキックアウトし、平海面に滑り降り、

「YES! WHITE HOUSEちゃん!」といつものフレーズを叫ぶ。

沖に戻ると、すぐにカイルが「Yeah!バレルだっただろ?」と聞かれたが、

正直に「怖いからね、入らずに走り抜けたよ」と言うと、

「そうだろそうだろ、ストール(減速)するのは怖いもんな」

と彼もこの気持ちを知っていたのが無性にうれしかった。

ここからは怖いのが50%、恐ろしいのが25%、そして無敵な気分を25%持って、

セッションを続けていった。

カイルのものすごいテイクオフ。

それに誘導誘惑されたように俺もその『ものすごいテイクオフ』をメイクしようと、

慣れもあって、無理気味セットのピークの下に入り込んだ。

だが、これはノーチャンスのようで、

ボードのレイルはおろかフィンも波に喰わずにフリーフォールしていった。

落下する瞬間に気づいたのが「ここはめちゃくちゃ浅い」ということ。

しかも高さ4mほどもあるリップの下からだと、

海面に影をつけているリーフがわかり、

「しまった!」

と両手で顔と頭を覆った。

.

落下。

最悪の事態を想定して体を丸め、柔らかくしておく。

初期衝撃が強烈にやってきて、

次の瞬間には波が俺をさらい、第二衝撃後は海中に漂っていた。

やった!

なぜかリーフに当たらずに済んだのだ!

と感謝しながら海面に上がると、カイルが心配そうにこちらを見ているので、

「イエーベイビー!」

とオースティン・パワーズの口まねをしながら親指を立てて安心させる。

気をつけなければ、とさらに自らを引き締めていると、

先週のヒーロー、オライアンがパドルアウトしてきた。

その時の波を尋ねると、

「かなり良かったぜ、誰もやらないから今度一緒にやろうな」

とやさしく俺に言う。

握手しながら彼の目を見て、

「ハワイ波はやはり本物で、こんな重さを持った男を作りあげるのだ」

という深い感想というか実感を持ち、これをブログに書かなくては、

と下界のことが頭をよぎる。

そのためには生きて帰らなくてはならない、

とさらにさらに気を引き締めてセッションを続けていった。

やがて風もさらに強くなり、干潮から潮が切り替わるためかセットが一切入らなくなり、

「俺は上がるよ」とカイルに言い、次の波を持ってセッション終了とした。

岸までパドルすると流れがすごく、

全力で漕がないと岸に近づかない海流にこのうねりの凄さを知り、

ようやくたどりついた上がるための岩棚を見ると、いつもより少し違う形に見えた。

でも岩の形が変わるわけはなく、

そうしてみると「俺が変わったのだ」ということを考えながら浜にたどり着いて、

砂浜に立ち上がり「生還した」。

とその達成感と、ほぐれていく緊張からか

左膝が左右にとめどなく震え、その震えは1時間あまり収まらなかった。

このブログを書いている今も両肩の後ろは弱く震えていて、

サーフィンの持つ醍醐味と深さ、そして恐ろしさを味わった日となりました。

「挑戦」とは字にすると、たった二文字だけど、この意味をまた知り、

「波乗りは自分への挑戦だ」

と言葉にして本日のブログを終了します。

(お知らせ)

本日郵便でオンザボード最新号が届いていて、

どうやら5月発売が一ヶ月遅れで届いたようです。

弊社担当のらつ腕編集(長)のMさんに

「経費削減のため船便でいいですか?」

「もちろんいいですよ」とお答えしているので、ここまで遅いわけだが、

最新ニュース「例えばMJがロスで亡くなった」

ということはwww.asahi.comを毎日数十回読んで知っているので、

そこまで情報の鮮度を紙媒体に求めていないからこれで十分ということです。

話が逸れたが、

この号にクリスちゃん(クリスチャン・ワック)が、

太東のLTで準優勝したAVISOのCJノーズライダーが掲載されていた。

この時は、まだクリスちゃんは日本に到着していない頃で、

そのコインシデンス( coincidence=符合)にびっくりした。

お隣には大先輩である藤沢ジョージさんの「ベアサーフボード」が、

そしてさらなるお隣にはサーフィンを始めたときからお世話になっていた

「ブルーワーサーフボード」が並んでいて、その偶然にも感動する。

これを書いていたらクリスちゃんからの電話があり、

「ミニ・ノーズライダー、つまり7フィートの究極のノーズライダーのアイディアが生まれたぞ!」

と言う。

俺もそんなノーズライダーに興味があるので、

「クリスチャンと同サイズを一本クダサイ」

とビールを頼むようにオーダーし、

なんだか不思議とみんなつながっているのだなあ、と思いながら電話を置くと、

今度はAVISOのジョンからの電話だった。

上記したハワイトハウス話を要約して報告すると、

「Dude!やってくれたか!ウレシイデス、夢が叶いマシタ?!」

と思っていた以上のリアクションで、

落ち込んでいた昨日とは変わってすばらしいプルメリア色の日となりました!

とても大事な人が教えてくれたのは、

「悲しみは長く持ってても良いことないので、他のものに変えてしまわないといけません」

ということでした。

はい、実践できましたよ!

ありがとう!

さて、もう週末ですね。

今日も長い私的なブログを読んでいただきありがとうございます。

良き、すばらしき週末にしてください!


26 thoughts on “「波乗りは自分への挑戦」_クリスチャン・ワックの新型ノーズライダー!_美しいプルメリア日

  1. わんちゃん

    あのホワイトハウスのダブルオーバーにBD3ですか!!! 恐ろしい!!
    ブログを読んで、想像しただけでも鳥肌が立ちました!

    私はPISTOLでも入れないな~。 

    心も体も修行しないと・・・・。

  2. dodo

    初めてコメントさせて頂きます。

    感動いたしました。
    自然の中で死の恐怖との葛藤が伝わって来ました。

    ありがとうございました。

  3. sindy

    nakiさん

    臆病な私もBD3という乗り物に乗れば勇気がでるのでしょうか?

    相談にのってください・・・

  4. 大輪

    初めてコメント致します。

    ブログを読み進めて行く内に、まるで我が事のよーに引き込まれてしまいました。。
    手が汗でちょっと湿ってます。。。

    ご無事で何よりでした。

    今後も楽しい?ブログを期待しています。

  5. Fg

    久しぶりの実録サーフストーリー最高です!!
    しかも、本日休暇中のホテルで早くもチリ・ワイン片手に拝見しました。(笑)
    劇画風な画が頭を駆け巡りアドリナリンが噴射しましたー。
    無事に帰って来てくれてありがとうございます!!
    明日も、ぜひ?

  6. ノン

    読んでいて、ドキドキ。
    読んだあと何だか放心状態になってしまいました。。
    ご無事で何よりです。

    「悲しみは長く持ってても良いことないので、他のものに変えてしまわないといけません」
    そうですね!!
    私も実践します。
    ありがとうございます。

  7. コジマ

    感動の嵐!

    ナキさんかっこいいー

    REAL SURFER &REAL MEN です!

    ちっぽけな自分にサヨナラします。

    すっきり爽快

    ありがとうございます。

  8. 5の4うれしい723

    読んでいたら、息をするのを忘れていて、巻かれている気分になってしもーたよ。

    危なくMJと同じ日に逝くところだったです・・・・

    臨場感、ありすぎーーー!!

  9. Junzo

    ナキさん、この前の太東では久々にお会いできうれしかったです。

    今日のお話は映画を観てる気分になりました。

    まさに侍ナキさんですね(笑)

    ちなみにBD3のサイズは5’0ですか?

    いつもブログ楽しく拝見させて頂いてます。

    これからもたまにコメントさせていただきますのでよろしくおねがいします。

  10. hide844

    トイレで読んでいたら、スッカリ引き込まれて、○○するの忘れてしまいましたっ!わたくし、何しにトイレに入ったのでしょうかぁ?

    D先輩のNHKのど自慢出場、是非実行して下さいっ!BD3片手に何歌うのでしょう? ウケますね。 YouTubeで全世界配信っ!

    っと、勝手な妄想でした。

  11. 理沙

    わー・・・☆ドキドキ☆
    ナキさん、お帰りなさい!ナキさんが紹介してくれた海にであって、いつかナキさんには見えてる美しい波間を見てみたいーという人生の憧れを持ちました。美しく遠い憧れは人生の短さを気付かせくれて、毎日がより愛おしくなりました。なきさんよ、永遠なれーぜひー♪

  12. naki Post author

    わんちゃん、
    ホワイトハウスの大波は恐ろしいですが、
    いつか挑戦してみてください。
    このうねり続きそうですよ。。

  13. naki Post author

    dodoさん、
    はじめまして、コメントをありがとうございました。
    これからもよろしくお願いします。

    サーフィンの原点は「海」ということを再確認した日であります。

  14. naki Post author

    sindyさん、
    臆病でいいと思います。
    無理しないでくださいね。
    BDでもBBでも、怖すぎたら無理なので。。
    楽しいサーフにGOGOです。
    (波乗りは波の大きさや強さではありませんから)

  15. naki Post author

    大輪さん、
    初コメントをありがとうございました。

    はい、私も震えながら書いたので臨場感だけはあると思います。

  16. naki Post author

    Fgさん、
    おっ、休暇中ですね。
    しかもチリワインとは至福の時に読んでいただきありがとうございます。
    タイミング良く、嬉しい限りです。
    戻ってこられてよかった?ぜひ?。

  17. naki Post author

    ノンさん、
    よかったです。
    ありがとうございます。

    本当に大事な人からの言葉って、深い意味があると思います。
    どうぞまたお越しくださいね。

  18. naki Post author

    コジマさん、
    さよならしないでBD、DDGさんたちと一緒に千葉に行きましょうね。
    その後は葵丸進はいかが?
    最近はいかがですか?

  19. naki Post author

    5の4うれしい723さん、
    そうですよね。
    不思議な日なのかもしれません。
    波はいかがでしたか?

  20. naki Post author

    Junzoさん、
    コメントをありがとうございました。
    インプレッションもありがたかったです。
    BD3を楽しく乗られて何よりです。
    太東でも偶然でしたね。
    これからもどうぞよろしくお願いします。

  21. naki Post author

    TAKASHIさん、
    やはり!
    で、その平社員には行かれたことがありますか?
    いつも気になっているのです。

  22. naki Post author

    hide844さん、
    D先輩ののど自慢をぜひ実現してもらいましょう!

    曲目は、なごり雪の歌詞を替えた「なごり波」とおっしゃっています。

    その後、YOUTUBEで発信したいです。

  23. naki Post author

    理沙さん、
    よかったです!
    “We were still in the middle of the session.”
    という書き出しからはじまる第5章ですよー。

    「美しく遠い憧れ」とは名言です。
    きっと向こうから近づいてきますよ。
    そう思いますよーぜひー♪