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naki's blog

【読み切り】サーフ愛の果て_(1458文字)

波に乗る仕事をしているのは、

波に乗ることが猛烈に好きな故だが、

こうして波がずっとあると、

とっくに体力が尽きてしまっているのがわかる。

夕食を食べ終わるころになると、

重力が10倍くらいに感じ、

よたよたとベッドまでたどりつくと、

この世界の幕は閉じ、そして一瞬で朝になっている。

熟睡しているはずだが、

この数十年は疲れなどは取れたことはなく、

朝になってもずしりと重い身体があり、

背中は鉄板を入れたように硬くなり、

なんとか立ち上がって水を飲んで、

空を見ると夜明けが近い色になっている。

また波はあるのだろう。

そして俺はまた波乗りに行く。

(巻末注釈リンク*1へ)

話はそれるが、

文章を書いて生きていく、

つまり文筆家になるためには、

10年間欠かさずに(人に読ませられるような)日記を書けば、

プロになれるための基礎ができると聞いた。

10年以上書いているが、

文章は波乗り同様むずかしいものである。

最近はサーフィンブームで、

「プロサーファーになりたいのです。どうすればいいですか?」

そんな相談を受けることもある。

そこでその文章世界と同様に

「10年間毎日サーフできるような環境に自分をおいて、

毎日サーフし続けられたらなれますよ」

そう答えると、相手は「毎日!」と言ってうれしそうな顔をするのだが、

その次の瞬間には、うろたえたような表情となり、

ちょっぴり逃げ腰となって立ち去っていくのがほとんどだ。

そう、サーフを毎日するというのは、

「好き」とか「愛」を超えた何かが存在しているのだと思う。

二ラウンド合計の9時間強サーフを湘南でし、

それから千葉に来て、夜明けと日没時間の2ラウンド。

(巻末注釈リンク*2へ)

翌日も夜明けからサーフし、今日も明日も波に乗る。

こうして私は32年間ほぼ毎日波に乗ってきた。

それは執念でも、

根性でもなく、

何が自分をここまで駆り立てるのかがわからぬが、

海に向かい、

いつものように「怪我をしませんように」

「海に波に、全てのことにありがとう」

そんな祈りの中パドルアウトする。

Ventura, Califorinia

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どんなものでも長く続けると見えてくるものがあるという。

「石の上にも3年」
「10年で一人前」
「武術一万日」

最初は好きが憧れになり、そしてそれが病みつきとなり、

さらには執念や根性を通り越して愛となり、

(巻末注釈リンク*3)

今では人生そのものになったとすら思える。

実際のところ、疲労で腕も上がらなくても、

疲れでめまいがしても、腰が痛かろうが、

好きな波でなくても風が強くても

水が冷たくてもパドルアウトすることが日常となった。

実際には10分だけという日もあるし、

先日は「1本だけ」というセッションもあった。

でも海のそばにいて、

波に乗れそうであれば着替えてボードを持って、

波に向かう。

それだけ。

シンプルなのであります。

これはサーフ愛の先、いや果てにある囚われ、

つまりホテルカリフォルニアの歌詞のようなものなのか、

それとも幻想の中に生きてしまっているのかはわからぬが、

俺はこれからも波を想い、そして波に乗るのだろう。

そんな真夏日の夕陽は、

どこまでも美しく、そして荘厳だった。

波乗りの良さは、

この大自然からのメッセージを受けられることでもあるのだろう。

(初出自Blue誌巻頭コラム)

【巻末注釈リンク*1:なぜ波乗りを始めたのか?】

なぜ波に乗るのか?_私が波乗りを始めた頃の回想記【前編】_(3222文字)

【巻末注釈リンク*2:サーファーズ岬について】

【特大号】32年間の想いを抱く夢波と、仲間(先輩)たち_(3445文字)

【巻末注釈リンク*3:波乗り愛について】

【naki’sコラム】vol.24 【波乗愛】

Happy Surfing!