Padang Padang, Bali
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ウルワツの次の岬、
つまりウルワツでボードを流すと、
パダンパダンに流れ着く。
流れはものすごく強く、
超干潮時のウルワツコーナーを除外すると、
間違いなくバリで一番の激烈波がここにある。
今年もWSLのスペシャルイベントとして、
Padang Padang Invitational 2018が開催される。
ちょうどウエイティング期間に入ったところだった。
誰だったか忘れたけど、
どこかで会ったことがあるような。
オープニングセレモニー1時間前。
初代ウイナーは、
キャッチサーフチームのジェイミー・オブライエンで、
歴代の優勝者名が刻まれたウイニングカップが鎮座していた。
夢のパダンパダン。
ナッキーと高間教授、
そしてバリのヤマザキさん。
私も感動しました。
上がってくると、
駐車場入り口にサバット(ホンダ・フィット)が駐車されていて、
遠くのラカ法王のことが思い出された。
時間が前後するけど、
パダンパダンの前は、
バランガン岬で高速レフトを滑走し、
私たちはこの霊波へもキャッチサーフだけで挑んでいたのでありました。
理由はいくつかありますが、
一番は壊れずらい、ほとんど折れないということでしょうか。
とにかく強いです。
Catch Surf Odysea® Skipper Fish 6’6”
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バリのヤマザキさんの高速ダウンザライン。
「こんなすごい波に初めて乗りました!」
そう言って目を輝かせていた。
その後、
ウルワツに行くと、
なんと茅ヶ崎のユージ(脇祐史プロ)がいて、
ひさしぶりに再会を喜んだ。
彼は、
カラーズマガジンのヨゲさんと同級生で、
湘南が産んだ世界のサーファーとなり、
このウルワツでも抜群のマニューバーで日本人の誇りライドを、
マンライを何本も決めていた。
なんでもウルワツに2か月間ほど滞在しているのだそうで、
前出のヨゲさん、
茂木、ゆうちゃん、たけ、森下の顔が思い出されていった。
みんなが集まっていた平和学園前のセブンイレブンは、
今やクリーニング屋となり、
私がバイトしていたジャンク・マーケットはなくなった。
(小波しか乗れないのに)
大波自慢の先輩もいなくなり、
虚言癖のあの人も今はいない。
そんなことを考えると、
これも諸行無常であり、
タキビシの教えと同じだと悟るようにラカ法王にSMSを送信すると、
「ラカ〜」とだけ返信があった。
「常に変化するこの世にあって、とどまるものはない」
やはりそうだと感じいっていると、
タキビシからSMSがあり、
開いてみると、
ミヤサバ先生が旧仮名遣いで書かれた
「銀鯖道の夜」の第9章だった。
「そうだったのか!」と返信した。
何がそうだったのかは今はわからないが、
ジロバンニとシギパネルラに人生の無常を感じつつ、
ウルワツの開発、
人間たちの強欲さに肩を落としながら、
コンクリート製の階段を上がると、
バー&レストラン『シングルフィン』からは、
この聖地に全く似合わぬエレクトロリックが大音量で流れていた。
Catch Surf Odysea® Skipper Fish 6’6″
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本人は決死で乗ったというが、
「乗ることがすごいことなのですよ」
そう教授に褒められ、
「当分ウルワツの波はいいです」
そう遠回しに遠慮していたナッキー。
よほど恐ろしい思いをしたようです。
Catch Surf Odysea® Skipper Fish 6’0″
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「ウチの子どもたちはバレルのことをバレリン(コ)と言っているのですよ」
「ほう」
「このバレリン(コ)写真、
遺影とするのでいただいてもよろしいですか?」
Catch Surf Odysea® Skipper Fish 6’0″
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私は自身の集大成として、
この霊波、
聖なる波にレイルをかけ続けた。
時を越えた波だとも感じた瞬間がここに写っていた。
「チャングーのですね、
メインブレイクに堤防、
または石製のステージみたいなのを作り、
そこでケチャ(ックとも)ダンスを踊る観光名所とするのだそうで、
また例によっていつものことですが、
住民の意見も何も聞かずに工事が始まってしまいました」
「これは阻止できるとかできないとかの問題ではないのですが、
サーファーたちが集まってプロテスト(抗議)をします」
「工事計画書を手に入れました。
こうなるとチャングーのメインピークは完全に失われます」
「あ、ちょうどピピンさんが来ました。
彼はぼくのメンター(導師)の一人でして、
とてもインスピレーショナルな方です」
「もうチャングーは終わりだ。
ひとつの時代は終わってしまった」(涙のピピン)
http://iseebali.com/piping-the-magic-wave/
「行政は波には影響ないと言っているんですよね」
「そんなわけがあるわけない。
堤防を作って変わらない波も海もひとつもない」
「そうですよね。
こうなるとチャングーのメインピークは完全に失われてしまいます」
「これだけの人が集まっているのだから、なんとかならないのかな」
「あまり目立ったことをすると地元のマフィアが出てきます」
「そうなんだね」
「バリはなんでもお金ですから…」
「日本も同じようにして、
昔は国民が海で遊ばないのを逆手に取り、
護岸の名目でテトラポッド(消波ブロック)や堤防を作り続けました。
椎名誠さんが日本のほとんどの離島に行って気がついたのは、
“人口が少なければテトラや護岸がやたらと多い”ということで、
そこには建設業者と行政との癒着があり、
とても大金が動き、いまも誰かを肥やしているそうです。
ここバリも同じになってきています。
こうして市民が集まって抗議活動しようが、
誰かが儲かればそれでいい。
市民はサーファーでなくとも、
とにかく観光客がやってきて、
お金を落としてくれたらそれでいいのです。
失われた自然は2度と同じ姿には戻りません。
こんな2018年になって、
やれ高感度人だ、
エコ、
オーガニック、
ホールフーズ、
デウス、
ヨガだと世間はやっていますが、
実情はこうです。
今度は土地がないので海を埋め立てて、
高級住宅地を作る計画もあるそうです」
「東京の豊洲だね」
「自分たちの無力さがただただ悔しいです」
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海の大切さは、国民や市民だけのものではないと、
世界中からこういうことを中止できるようなシステムになればいいのに、
そんなことを感じた悲しい日。
RIP Pererenan, Canggu, Bali.
Happy Surfing!!
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