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【サーフィン研究所:小説】昨日の波_(1700文字)

昨日、

海を見に行ったら波が大きくなっていた。

波情報の類は、

どうしても良い波でサーフしたいとき、

近しい人と一緒にサーフするとき、

「各社情報を用いて予測する」

という使い方をしている。

よって昨日は、

天気図以外の情報を見てもおらず、

ただこの天気図からここまでの波があるとは思っていなかった。

南東、東うねりのマジックである。

波は超が付くほど良く、

けれどいざパドルアウトしてみると、

偉大なるピークは奔放そのものだった。

波に乗る際は、

波の内側、斜面を滑ることは重要で、

その最大の理由は容易に乗ることができるからだ。

波の内側に入るためには、

ピーク部分からテイクオフして波の中に入るようにすれば良い。

ピークは波の切り立ちの頂上、

頂上部分、塊先端みたいなものだったり、

わりとぼんやりとその存在を伝えているときがある。

もしこのピークがなくて、

頂上付近が一緒に崩れるのは、

クローズアウト(日本ではダンパー)で、

バレルが巨大なとき以外はあまり好まれない。

昨日の波に戻る。

そのピークが奔放だと言ったのは、

それ、それらが、

半径200mを駆け回るようにブレイクしていたからだ。

あっちだと思えばこっち、

ときに天変地異みたいな泡波がやってきて、

海を覆うところだなんて、

神話がリアリティを持って迫ってくるようだった。

ただその奔放も、

バリエーションというか、

バラエティがあるので、

波が崩れた履歴の中で、

「一番威厳がある硬そうな波」

がブレイクしたエリアに向けてパドリングしていく。

その付近に行くと、

「浅く、岸側に向けてさらに浅くなる」

という場所を見つけた。

「ここだ」

その浅瀬の沖で待つ。

だが、

沖に向かって右から左に強烈な流れがあって、

あっという間にそこから流されていく。

パドリングに息を入れて、

そこに戻り、

波待ちの姿勢ではなく、

パドリングしながら波を待つ。

水平線の彼方に、

うねりの塊が見えた。

「これだ」

予測よりも大きな塊だったので、

上流、そして沖側に動きながら沖を見ると、

それは、

「来る」

という確信に変わった。

「来た」

だが、ピークは自分の想像よりも沖側に出現してしまった。

その誤差は5mくらいだろう。

ノーパドルの「合わせ」ならこの波に入れるチャンスがあった。

ぎりぎりまで波を追いかけ、

波底でボードを陸側、波の角度に合わせて沈ませながら回す。

回りながら、波腹に昇っていく。

そこに出現する窪みに合わせ、

沈ませていたスキッパーフィッシュを放つ。

放す際に掴んだノーズの柔らかさが、

気持ちを一瞬ふわりとさせる。

悪くない感覚だ。

持ち上げられつつ、

波側のレイルを押しつけていく。

感覚としては、

下に下に
下に波に

そんな順だろうか。

テイクオフが始まった。

Catch Surf ®ODYSEA Skipper Fish x Taj Barrow Pro 6’0″

.

良いセクションが見える。

先日ここに登場した竜太くんは北海道出身だ。

彼はサーフィンをしつつ、

冬は雪山に籠もる。

いわゆるスノーボードフリークで、

私にその魅力を語ってくれた。

「奇跡の雪です」

彼は目を輝かせながらそう言った。

そんなことをこの瞬間に思いだしていた。

「山ですと、4kmものパーフェクトウェーブに乗れます」

彼の言葉が浮かんでいた。

液体の上を滑る感覚の数式があれば、

それはいったいどのくらいになるのだろう。

そんなことを考えていた。

一瞬が数秒にも感じられ、

数秒が永遠にも思える。

感覚的には永劫にも感じられる時間を滑走し、

風を切りいていく音を味わっていた。

「4km、いや、もっとあったかもしれない」

私は夢の中でそう語るだろう。

そしてお決まりのセリフが出る。

「波はさ、距離ではその良さを測れない。
もちろん波のサイズの大小という話でもない。
言いたいのは、
その波に乗るまでのドラマ、
例えばどのボードをどんな気持ちで選んだか、
そして自身のこと、精神的にも肉体も観じ、
記憶のことや経験のことも立ちのぼってはまとめ、
海にかき分けて、
その強大なパワーを受け、
孤独の不安に苛(さいな)ませられ、
そして沖に出て、
乗って感じた感覚ということなんだ」

Happy Surfing!!