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【短編鋭意号】アンディ・アイアンズのパドリング_(939文字)

漕いで漕いで、

そして漕いでいく。

背中を持ち上げ、

肩を開き、ありったけの力で腕を引き絞る。

パドリングはそんな繰り返しだ。

この日は流れが半端ではなく。

その水流たるやイナリーズに匹敵するもので、

流れに対して漕いでも移動距離ゼロ。

これをエスカレーターの逆走だと例えてみると、わかりやすい。

その状態では、

ボードを浮かせて真剣に漕ぐと、

時速1kmくらいでよたよた進むほどだった。

なので、

サーフボードは6’7”を使って、

時速3kmくらいまで上がるようにチューンナップした。

こういうのをサーフ的なボアアップというのか。

まあそんなところだろう。

波に向かって漕いでいく。

波周りに猛烈な流れが発生している。

大河が深い溝となり、

たっぷりの雨を

その川幅の1000分の1程度で細く狭めて流れ出ていた。

その強烈な流れをかき分けられた玉石、

ペブル、砂利といったものが左右にかき出され、

『バンク』という地形を生み出す。

沖に地形を突き出すように出るので、

浜を肥やし(天然の養浜)てくれる。

さらにはごらんのような美しいというか、

うっとりするほどの波となる。

サーファーにとっては、

とてもありがたいものだが、

実際に乗ろうとすると、

神話に近い激烈急な流れがあり、

それが波を中心に吐き出されていて、

波に乗るところか、

波に近づきたいのに離されていく。

岸があんなに遠くに行ってしまった。

あれほど強い流れでしたら当然か。

これこそが神の領域だ。

そんなことになる。

よく見極められたし。

ここが危ない、

危ないと言われるのはこういうことで、

冬のハワイ並の、

魔獣以上、

神話程度という美波がありました。

私は流れをかき分け、

かき分けて近づいていった。

こういう極限パドリングが長く続くときは、

やはりイナリーズでのアンディ・アイアンズを思い出すのです。

唇を震わせながら息を吐く。

胸を大きく開き、

揺るがずにゆっくりと呼吸をしていたこと。

サーファーとしての夢は、

「乗りたい波に乗ること」である。

ならば、

もう一度鍛え直してアンディたちの見た世界を共有したい。

Tyler Warren Big Dream Fish 6’7″

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パドリングの記憶。

パドリングのいろいろ。

Happy Surfing!!