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naki's blog

【サーフィン研究所】チバリーズまたはバキ_(2222文字)

昨日は、

ここにも書いたが、

南西風が基調だと思っていたら、

突然北西風となった。

「あそこがいいかもしれない」

そう直感した。

あそことは、

タキビ神とドラグラ・ケイスケが

『房州補陀楽南門』

と呼ぶブレイクだ。

「ボウシュウ・フダラク・ミナミモン」と発音されている。

行きづらいのと、

ほぼたいてい乗れる波はないので、

あまり行かないブレイクだ。

先日タキビ神が、

ここでサーフィンをしているというので行ってみると、

この房州補陀楽南門は、

私が20歳のときにサーフィン修行の一環として、

11か月真剣ステイした家の前だった。

(荒川区三ノ輪『10フィートコード』のクラブハウス)

ただ、

その頃はここに砂浜などは一切なく、

異様なショアブレイクが、

ただひたすら堤防に打ち付けていた。

34年後は、

立派でふくよかな50m幅の砂浜があった。

思いだしたのが、

「ドカリ」というブレイク。

当時は、

バックドアやパイプライン波を想像させる千葉の特級ブレイクだった。

それは恐れ入るほどのパワー・ウエーブで、

巻かれてヘタをすると、

背骨が折れるか、

または頭蓋骨を破壊するような重質ボトム。

よく考えると、

この近辺はほとんど砂鉄だったので、

海底は鉄板みたいに固いときがあった。

南うねりに北西。

物理的にはいいのだが、

地形はどうなのだろうか?

とにかく行ってみると、

なんと、

すごいことになっていた。

Photo by @nino1011

.

先行したケイスケのバックサイド・バレル。

波の良さ、

凄さ、

重み、

興奮、

居合いと気合い。

通常のPUボードだと、

たぶんきっと折れてしまうので、

キャッチサーフを選択した。

この波ならば、

ボンザーもワンオフも

ティファニーもテスラもホンダもなんでも折ってしまうだろう。

この波の下にサーフボードを入れると、

まるでマックスバリュー弁当の割り箸だと思えるほどよく折れる。

ティントもグラスオンも、

ボランもワイドラップもグロスも何でも折れる。

しかもNAKISURFオリジナルのツインに、

タイラー・ウォーレンのツイン(キャプテン・フィン)のメガ・クアッド。

牛丼ではないが、

『特盛り』としてみた。

「ここはフダラク・ミナミモンというより
イナリーズみたいだ」

そんなことを考えていたが、

いま考えると、

それはほぼ正しかったことのひとつだ。

パドルアウトは、

トム・クルーズの気持ちで、

ミッション・インポッシブルのテーマ曲を脳内にかけていた。

ああ、

同量ダブルアップの波。

水深50cmに激裂する波高2mのうねり。

テイクオフの雰囲気、

そして切り立ち方、

そして揺れ方までがイナリーズそっくりだった。

昔懐かしい波に再び出会えた。

Catch Surf Skipper Fish 6’0″

Nakisurf Original Twin + Tyler Warren’s Twin

(Mega Quad)

.

前出のミッション・インポッシブルの

イーサン・ハントではないが、

瞬間的には絶体絶命だったりもした。

とても魅惑的な波が来た。

この波は

『バキ』

という音を発して崩れる。

ズドンでもドカリでもなくバキだった。

とするとバキというブレイク名でもいいのかもしれない。

波は呼吸するように、

拡がり、

そして丸まる。

長いバレルセクションが見えた。

あそこまで一直線だ。

そうやってレイルを波壁にセットした。

波壁から離れないように、

距離を後ろ手で計る。

波の感触がしていないと離れているということで、

リップというギロチン状の波先の餌食になる。

ブワリ

そんな感じで波がかぶさってくる。

一度下げてからラインを引き上げる作戦だった。

そのくらいバレル内は大きかったが、

突然、縮小傾向となった。

上に上げるタイミングを待つ。

具体的には何も動かさず、

もちろん加重も変えずに。

ここまで待ってから、

レイル加重を強めた。

押し出されてきた。

これで良い。

出口の先の盛り上がりが、

さらなるダブルアップを予感させていた。

前足ではなく、

後ろ足荷重なのは、

やはり傾斜がきつくなればなるほど、

フィンのひっかかりというか、

接着が欲しいからである。

また出口が開いた。

もしかすると今なら出られる。

出た後は、

テイルを踏んで陸側に向くか、

さらにボーナス・セクションに向かうかの選択がある。

なんとなくだが、

ボーナス・セクションのような気がして、

いつまでもこのままで進もうと決めた。

この辺りは高速フォームボール。

いつか書いたJOB小説のことが思い出される。

(巻末リンク参照ください)

バレル内は斜面というより、

泡蔵みたいになって、

『ミクロの決死圏(Fantastic Voyage、1966年)』

という映画を思いだした。

「幻想的航海」

そう言えばいいのか。

まるで、

ファンタジーのような密室劇。

次々と起こる不測の事態の克服をしていったが、

この位置で、

ボードが波にさらわれてしまった。

というより、

波に瞬時に奪われてしまった。

「無念…」

私は、

仮面の忍者赤影気分で、

波の中に倒れていった。

よく考えると、

元々はイーサン・ハントで、

次にグラント (ミクロの決死圏)で、

最後には赤影で終わるという三段構えのバレルライドだった。

大爆発。

初代引田天功の気持ちとなった。

それでは、

「ハイみなさん、

サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ…」

そう淀川長治さんのような気持ちになったのは、

長尺映画という劇を通過したからかもしれない。

次こそ必ずメイクする。

ダァー!

(アントニオ猪木さん風に)

【巻末リンク:JOB小説】

vol.69【小説】JOBバレル@パイプライン_(6058文字)

Happy Surfing!!