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【サーフィン研究所:特大号】眠狂シャッチョ虚無円月日誌・Wの決戦_(2827文字)

エンゲッツさえあればなんでもできる。

こんなボディコピーでこの夏は迫るべきだ、

いやそれだとバックサイド・オンリーになってしまいますと、

さきほどドラグラ編集部ZOOMで話していた。

「エンゲッツとは何ですか?」

そんなお便りが来ると、

およそこういった返信をさせていただいている。

「鬼の國土佐で自然発生的に出現した
“円月殺法”というシャッチョさんの必殺技を短くしたものです」

ただ、

この回答では満足できない質問者も多くなってきた。

よってここに内容と定義を公開してみる。

まずはエンゲッツとは、

円月殺法が省略され、

語感によってカタカナにされたのだとわかった。

大きな視点で言えば、

画像からもわかるようにグラブレイルのことだ。

グラブ・レイルは単語から読み取ることができるように、

「レイルを掴(つか)む」ことだ。

「でもエンゲッツはグラブレイルです」

とするのには足りていない。

もう少し深部、

または細部的に説明するのなら”Pig-Dog”(ピッグドッグ)だろうか。

英語圏のサーファーならば、

ピッグドッグはおなじみのサーフ用語だろう。

それを説明するために調べてみると、

フランス語のサーファーWEBにこう書いてあった。

Le Pigdogging est une manœuvre spéciale qui permet de les ralentir sur le revers
(c’est-à-dire l’arrière et l’avant de la vague).

私はフランス語は全くわからない。

この字面を発音しようと、

だいたい適当に発音してみると、

なるほどフランス語の響きを帯びた。(笑)

自動翻訳してみると、

バックハンド(背と波面という意味)で減速させるのに役立つ操作ですピッグドッグは。

そんなことならば、

彼の地でも同じだとわかった。

John Peck 1962, Christmas day

.

でもよく考えると、

ピッグドッグをエンゲッツとするのはどうも落ち着かないというか、

『円月殺法』にはエッセンスが足りず、

そして完全に表現できていないことに気づいた。

エンゲッツ=円月殺法というのは、

シバレン(柴田錬三郎さん)が1956年に書いたものなので、

それは「昭和30年代の響きと調べを持っているもの」

に限定されるものだ。

で、

ワインと同じようにサーフスタイルがビンテージ化したのが、

このエンゲッツという言葉だ。

レトロでなくてはならないのだ。

で、

私はこう考えた。

そのシバレンの時代は、

エンゲッツがまだサーフィン界には登場していないはずだ。

だって、

初めてのエンゲッツは、

ジョン・ペックが1962年の12月25日の朝、

パイプラインでするのを目撃されるまで存在しないものだった。

なので、

シバレンの円月殺法は70年前にさかのぼる。

この時代に合わせるように

「レイルをつかまない」でテイクオフすると、

まんまバンザイ・パイプラインという気分になるのだった。

きっとその時代はまだ誰もサーフしていないが、

オフザウォールの向こうに見えるログキャビンの林が、

朝陽を透かして見えたかのような錯覚を起こした。

Photo by Kei Kojima at Paris, France

.

ちなみになぜここまで反応するかというと、

フランスは総料理長の第二の故郷であることから直感的に浮かぶ国となった。

Photo by Kei Kojima at Paris, France

.

総料理長にとっては、

パリがご自身の夢の入り口だったのかと感情移入してからというもの、

あちらのものに興味が出たようだ。

さらに書くと、

幼少時に好きだった「おそ松くん」内の、

「イヤミ」というキャラクターによって、

フランスという言葉の魅力に表裏一体で取り憑かれている。

新作ユニフォーム@Angels

.

さて、

シャッチョさんのエンゲッツだが、

英語ではThe Angetsとなる気配があり、

とすると、

エンゲッツつながりでエンジェルスになると、

誇大解釈をして意気込んだ。

ここに最新Angetsのシークエンス・ショットがあるので、

その神髄を解析してみた。

瞬間を真横、

少し後方で見たが、

波のトップに発生した泡の段の下に隠されるようにシャッチョが消えていった。

彼はこれをメイクできないと直感的に感じ、

岩場直行ワイプアウトを予感して、

私は痛ましい気持ちとなっていた。

Shaco on 5’8″

The Angets at the WBP

.

それは波先から波底まで続く波面であり、

海底のリーフ色をたずさえてやけに暗かった。

シャッチョさんは完全にフォームボールの上だが、

失速した58フィッシュをそのままのタッチで引き上げていた。

この解説文を昭和23年生まれの華厳さんが、

柴田錬三郎さん文体で書いてくださった。

一.
朝五ツ(辰ノ刻)の鐘が、
どこかで鳴った頃合——。
東うねりによって立ち上がったWBP(岩盤波)のうえで、
土佐人シャッチョが、
グラスオン・フィッシュをゆらゆらとゆらめかしていた。
先に入っていたNAKIをのぞいては、
見渡す限り無人である。
五つ刻(どき)に屹立(きつりつ)した波は、
いまや、
殺気にも似た凄(すさま)じい緊迫した空気をはらんで、
いつ果てるとも思えぬ。
紫陽花の季節が来ていたが、
この日は花火の季節のように暑かった。
しかし、
両人は岩場に潜む岩牡蠣や雲丹棘を気にしているのか、
ウエットスーツを着ていた。
いままで惜しんで、
ためていたらしい波塊が、
一挙に凄(すさ)まじい勢いで落ちてきた。
緑ぼかしのフィッシュは、
波壁からびりっと浮きでてくるような見事な動作をしめした。
血走った、
飢えた野獣のそれにも似た挙動が波にはしった。
シャッチョはエンゲッツに集中してまばたきもしない。
シャッチョは以前、
「ハラペーニョは、
ハタペーニョとして西で力をつけてきました。
土が合うのでしょうね」
という言葉を残している。
稲妻が走り、
雷が頭上でとどろいたと思ったら波の衝撃だった。
ピタリとノーズをあるラインに向かって止める。
その緑フィッシュがゆっくりと上に、
波面を斬れあがってシャッチョを中心にして弧を描いていく。
「冥途のみやげに、エンゲッツをご覧にいれよう」
崩れていく波に向かってこう唱えたと聞こえたのは、
幻想だったのか、
それとも….。

ならば私のエンゲッツは、

波底で弧を描くような軌跡を示してみた。

Catch Surf® X Nakisurf Special Skipper Fish 6’0”

Nakisurf Original Twin + Vektor VMK (rear)

.

エンゲッツの夏。

ということがあって、

冒頭の言葉につながったのでしょう。

【巻末リンク:円月たけなわ】

【サーフィン研究所特大号】WBPの円月殺法_ネムリ・キョウ・シャチョー_(1918文字)

【巻末リンク*2:シャッチョさん三部作前編】

【サーフィン研究所:SR三部作前編】海神波_SR5000_ハードロック・地獄波とセクションT_(1836文字)

Happy Surfing and Happy Lifestyles!!