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Blue.98号(ブルー)『繰り返されるカルチャー』2023年6月号_(1288文字)

繰り返されるカルチャー

Stay hungry. Stay foolish.

(ハングリーであれ、バカであり続けよ)

Whole Earth Catalogue

サーフィンというのは、

フィジカルが発酵してカルチャーとなる。

体術であり思想である。

近代における日本のカルチャーを調べてみると、

アメリカ合衆国で起きた波が日本にやってくる、

または英国からの影響が大きいとわかったが、

どちらにしても白人文化への憧れは、

文明開化の時代から私たちの遺伝子に肯定的なこととして刷り込まれてきたのだろうか。

合衆国は、

1960年にケネディ大統領が

「ニュー・エコノミクス」と打ち出す積極財政を取った。

そのことによって、

高い経済成長率を達成した。

その後ケネディが撃たれ、

ベトナムへ軍事介入した。

経済の積極=猛烈、

戦争による精神崩壊のクッションとして、

ヒッピーカルチャーが萌芽し、

六〇年代後半に根付き、

およそ七〇年代まで引き継がれた。

ヒッピー文化のゆるやかさと、

戦争という生と死の刹那を背景にしたカルチャーは、

デニス・ホッパーとピーター・フォンダの

『イージー☆ライダー』で終止符を打った。

このとき、

『(WEC)Whole Earth Catalogue』

という通信販売誌が創刊された。

カルチャーに寄った服装、

家電やDIYの小売革命だ。

制作者は、

誌面内容を「宇宙船地球号」として、

地球の有限性を訴え、

戦争や文化に痛んだ読者たちのこころをつかんでいった。

ちなみに冒頭にある引用は、

WEC誌の巻末にあった一文で、

スティーブ・ジョブス(アップル創始者)の

座右の銘としていまも知られている。

(ジョブス自身が熱狂的なWEC信者だったという)

WEC革命と同時にカウンターカルチャーが隆起した背景は、

全体主義に対しての軽蔑が根底にある。

その訴えはプログレッシブ・ロックの難解な歌詞となっていくなか、

日本では、

1973年にWEC思想をしたためた

『ワンダーランド(宝島)』が創刊された。

初代編集長は片岡義男さんだ。

彼が展開するアメリカン・カルチャーに日本の若者は聖書の響きを受けた。

内容は、

ハワイ、

サーフィン、

モーターサイクル。

今読んでみると、

「憧れのもの、こと」

に飢えていた読者が支持し、

第一次サーフィン・ブームがやってきた。

「ツイン・フィン、ピン・テイル」

「全長一七五センチのサーフボード」

「長いサーフが、パーフェクトにカールしている」

「波に対して、オフ・ショアの風が、まっすぐ直角だね」

これらは片岡義男さんの名作

『8フィートの週末』から抜き出したものだ。

読者たちは、

専門性のある単語によって、

限りないサーフロマンを抱いていった。

そしてWECが唱えた

『地球の有限性』は、

ユリゲラーとノストラダムス、

そしてマジンガーZの超合金のなかに吸収されていった。

それから——50年経つが、

私たちの文化は、

波に乗るサーファーたちの思想は、

地球の有限性、

そしてヒッピーとカウンターカルチャーの間を行き来し、

全体主義者たちも七十年代の歌詞と変わらずに

「何か」の言いなりであるように見えるのだが、

どうなのだろうか?

(了、2023/04/10)