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naki's blog

オバケ波に乗ったり、やられた日_望郷サユリータ_(3877文字)

南うねりコンティニュー。

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/22881

昨日のメインうねりが南南西で、

今日は、真南からのうねりも混ざっていた。

さらに細かく見ると、南東からの風波も入っていて、

3つのうねりが交錯するという、

わりと複雑なうねり状態であると感じた。

「どうせ混んでいるから」

とあきらめながらホワイトハウスに行くと、

15人ほどが入っていて、それは昨日の三分の一程度だった。

きれいな波が入り、

それを望遠レンズで追いかけると、カイル鞠黒が乗っていた。

彼は元ボディボードチャンプで、

30歳を過ぎてからサーファーに転身した。

だが波が危険だと、こうしてボディボードを持ち出すので、

彼が寝っ転がっている日の波は、

相当の手練れだと思って間違いない。

大きすぎるセットは、こうしてクローズアウトしてしまい、

あのすばらしい棚に当たる前に沖のリーフでこのようにブレイクしてしまう。

どのくらいの高さがあるのだろうか?

厚みもすごいので、

これを喰らったら一駅分くらい吹っ飛ばされて、

引きずられたような体感を味わえるだろう。

上の波と下の波は同じもので、

拡大してみるといい波に見えるのだが、

全体的に見ると、南東からのうねりが強く、

“スラッジハンマー(壊滅的な大かなづち)”

のリッジが飛び出してきてしまっていた。

(ここ、後半の伏線となるので、おぼえておいてくださいね)

これのスラッジハンマー直撃を喰らうと、

お陀仏に近い経験を得られる。

人も少なく、ここまで撮って、もういてもたってもいられなくなり、

震えつつカメラをしまい、走ってブレイクまで向かうと、

また大きなホヌ(海亀)がチャンネルに浮かんでいた。

潜って一緒に泳ぎ、浮き上がってくると、ホヌも浮き上がってきた。

とてもうれしく、しばし、目を細めてゆったりと放心する。

ようやく落ち着いた。

ホワイトハウスはブレイクの横に深いチャンネルがあるが、

これだけのサイズだと、そこでも崩れてしまい、

チャンネル上で泡に向かってのダックダイブを繰り返していた。

やがてセット波イベントが終わると、水平線が見え、

サーファーたちも向こうにいてちょっぴり安心した。

沖に出ると、ラインナップは俺も入れてたったの5人だった。

カイル以外は知らない顔で、

全員に「Hi!」とにこやかに挨拶して、そこになじんでいった。

すぐにスーっとすばらしく美しい中くらいの波が入ってきて、

他の人は大サイズを狙っているのか、誰も動かなかったのでそれに乗った。

ウエッジやリッジのでこぼこを跳ねるように、

いや飛ぶように高速で壁を滑り抜け、2セクション全速力で壁を駆け抜け、

歓びを隠さずに派手にキックアウトした。

中盤まで無事で波に乗り続け、

今度は沖のピークで大物だけを狙って腰を落ち着けた。

東風、いや北東風が強く、西側に流されるので、

継続的パドリングを続けていると、やがて水平線の色が暗くなり、

今日のオバケセットが入ってきた。

それはやはり大物の威光と、巨大物体の迫力を持って近づいてくる。

俺がピークに一番近く、次に近いのがカイルだった。

「どうする?」

という顔で彼の方を見ると、少し嗜虐、いや加虐的傾向が強いからか、

「Go!」と真顔で言ってきた。

「オバケ」が近づいてきた。

その位置を確かめつつ、強いパドリング、意識的な呼吸をしながら、

ピークのへこむ場所であろうコブにボードを全力で漕ぎ入れていく。

波がさらに迫ってくる。

自分が最良、最上の位置にいることを二度ほど確かめながら、

波の麓から漕ぎはじめると、波の中腹でボードは滑り始めた。

「これは楽勝系だ」とさらに漕ぎ、

立ち上がれる傾斜となってからも、

さらに2度ほどパドルしてから立ち上がった。

自画自賛できるほどのテイクオフがこのオバケで実行でき、

そしてカイルも波の上から見ているだろうから、

ここはソウルアーチでも決めたいという反射的な直感があった。

だが、波は予想以上に掘れ上がってきて、

そんなことをしたら一瞬で吹き飛ばされる速度となり、

さらには壁が大きなバレルとなっていった。

巻き上げが強いので、突っ立っているわけにもいかず、

低い姿勢のまま、円弧の中に吸い込まれたが、

その次の瞬間、

前方の、例のスラッジハンマー部分の雲行きが怪しくなってきた。

それでも根性でバレル内に留まっていたのだが、

視界は泡の白だけとなり、そのまま吹き飛ばされた。

頭と顔を両腕で隠し、波の下では何も考えないように真剣に脱力する。

祈りながら決意し、そして爆発後の波に引き込まれていった。

初期衝撃が去り、それから海中高速回転で少し酔ったようになり、

さらに引きずられて、

“耐ヘ難キヲ耐ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ”

という状態になったまま海面に上がってくると、

そこはもうインサイドにある「急流区域」だった。

「ここまで引きずり込まれたのか!」

と沖からの距離を知って愕然とし、

去ってしまったあのオバケ波を回想していた。

後で聞いたのだが、

ビーチハウス岬でこの波をノアたちが目撃していたらしく、

「あの波ね、みんながオ?!!と叫んで喜んでいたよ。大きかった?」

と言われ、喜ばれたのはうれしき哉と、

ワイプアウトなので自慢できることではないが、

「エヘン」となぜか胸を張った自分がいた。

後一本乗ろうと沖に戻ると、一部始終を知っているカイルが大喜びしていて、

「マジデー!!」

と風雲たけし城風の挑戦TV番組の英語題を叫んでいた。

いやはや。

少し放心気味で波をのんびり待っていると、

オバケの最上級のようなセットが入り、全員で沖に逃げるが、

それは俺たちの目の前で爆裂してしまった。

「よーし」と、気合いを入れ、

深いダックダイブをしながら沈めていく。

「よし完璧だ!」

と思った瞬間、海の上に隕石が衝突したような(大げさですいません)

衝撃があって、俺はAVISO BD3のレイルを半分ほど握りつぶしてしまった。

そしてボードはその衝撃でぐにゃりと曲がり、

俺は「全てが終わった」と思い、

そのボードを離して、その永遠のような海中探索と、

拷問のような泡波セラピーを受け、

最後にはなすすべもなく降参してしまった。

それでも途中で我に返り、

懸命に海面まで泳ぎ上がると、さらなる泡波がこちらに迫っていて、

仕方がないのでもう一回海中探索に向かったのでした。

話は変わって、

こういう複数の角度の波が重なると、

ウエッジという横波が出現し、

それは乗りづらいものなので、ここでそれを説明しておきますね。

バレル内で俺がやられたのは、

このウエッジ波がスラッジハンマーのリーフと共謀したからで、

「あれさえなければ」

とDセンパイではないが、ウエッジを憎んでいます。(笑)

ここにはたくさんのウエッジとリッジが見えます。

リッジは「ridge」と書き、それは尾根とか、隆起部という意味です。

そしてウエッジ(wedge)は「くさび形のもの」です。

写真を見てもわかりづらいので、赤い色でリッジを描き入れておきました。

波の中にじつにこれだけのリッジが存在しているのです。

このサイズになると、膝から腰の高さほどの起伏が現れるので、

それはなかなかやっかいなのです。

エアリストたちは、この引っかかりを使って飛んだりするのだけど、

そんなことはしない俺はただこれらの起伏を読みつつ、

猛滑していくわけなのです。

上の波はショルダー側にひとつだけリッジが映っていますね。

オソロシや。

海に入る前に

往年のレジェンドサーファーのマックス・マディウスと会ったので、

ご一緒に撮らせていただきました。

彼はビーチハウスの帝王です。

今でもすばらしい波乗りを毎日披露してくれているんですよ。

敬服つかまつります。

昨日スタッフブログを読んでいたら、

メキシコはサユリータ(小百合太)の話題だった。

https://www.nakisurf.com/blog/staff/archives/15753

いきなり懐かしくなって、フォルダーを開け、

まだ未現像だった写真群に少し触れた。

いい街でした。

イスラエルがキャンバスボードを欲しがっていたので、

「向こうにボードを持って行く」という名目でまた行きたくなった。

ノースハワイにこれだけ波があってもそう思えるほど、いい旅でしたよ。

イスラエル、また会いましょうね!

海で日焼け止め『ココサンシャイン』の話をカイルにしたら、

「どうしても欲しい」ということで、俺のを分けてきました。

「ドドゲはどこだ?」

と、ノースハワイでも先輩が人気となってきた。

今日も晴れと雨の繰り返し。

「無事で何より」

と自分を撮ると、虹がでてきました。

今日もいい日だなあ。

無垢な丘に架かる色彩を見て、「ヨーロレイヒ?♪」

と歌いそうになるが、ぐっとこらえた。

長くなってしまいましたが、すてきな週末にしてくださいね。

夏が好きだったことを再確認しています。

こちらも蒸し暑いです。