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【特大号】新しいサーフィング世界にようこそ_アレックス・ノスト総帥に書いた手紙_(5632文字)

私は元々コンペティションサーフィンというものをしていた。

その流れでハワイはノースショアに行き、

世界のサーフィングということに深い感銘を受け、

今はカリフォルニアに住んでいる。

私のサーフィンライフは湘南、鎌倉で開始された。

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/64347

みなさんもご存じのように「湘南=波がない」

そんなイメージだが、

実際はオンショアが一日吹けば、夕方には膝くらいまでは上がるし、

大潮になれば、干潮から潮の上げるときにかけてスネくらいにはなる。

前線からの風の吹きこみ、西風、

低気圧、台風とさまざまな要素で波が上がる。

「波」というのは地形が重要です。

湘南のほとんどが遠浅の海。

じつは遠浅地形は波の速度を弱め、そして波力を低下させてしまう。

これは初心者にはもってこいの地形で、

鵠沼や七里ヶ浜は世界でも有数の美しい緩波となっている。

話は飛んでサンオノフレ。

ここも湘南と同様に緩波(ユルナミ)世界クラスで、

ワイキキと同様にサーフ界ではよく知られているブレイク。

ここの良さはユルナミに由来して、優しく温かいサーファーたち。

ローカルたちのおもてなしの心に癒される。

アニーが来たときも「誰かと同じ波に一緒に乗っても怒られない」

ということで彼女を安心させ、

彼女の波乗りを明るく、楽しくさせた場所でもあります。

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/63958

私の場合はーー冒頭にも書いたがーーコンペティション出身、

しかもショートボード一筋だったので、

波の良いところに向かい、自身のサーフ表現をし続けてきた半生でありました。

ペラペラに薄い、いわゆる適正サイズとされるボードの真価を発揮できる場所、

つまり波の良い場所での波乗りを求めてきた。

波が良い場所には欠点もあって、

1.たいてい混んでいる

2.潮位や風向きも重要

3.選ばれたうねりの向き

良い波とするののは、じつに限定的なことに気づいた。

サーフトリップに出て、

夢に見たあの波に向かうのだが、

実際には年に一回行けるかどうかのサーフトリップ。

しかも現地に行ったら行ったで、

「昨日までは良かったんだけど…」

「エルニーニョ(ラニーニャ)で波がない」

「地形が悪い」

「波の出る要素(低気圧等)がない」

おきまりのセリフを聞かされて、

もはやサーフトリップではなく、

読書と観光旅となってしまうことも多々あった。

で、話はぐるりと戻って、ワイキキ、サンオノフレ波。

これらの波を上記したペラペラのショートボードで乗ろうとすると、

波が崩れる瞬間しかテイクオフできないことに気づいた。

で、少し大きめなボードを選択すると、

あれだけ乗れなかった波があれよあれよとたくさん、

しかも遙か沖のピークから乗って来られるようになる不思議。

そんな大きめボードの魔力を知り、

旅先の、湘南や千葉のユルナミをそれらボードで乗ると、

心が晴れ渡るような気分となることに気づいた。

とはいえ、最初はこういうボードを温泉気分で乗っていたが、

大きめの波に持ち出してみると、深く、本物の世界があったと気づいたのが、

去年のハリケーン・マリ—波。

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/57279

このときはタイラー・ウオーレン・シェイプのシングルフィンだった。

あのときの宇宙的な長い滑走はすでに美化されて、

波のサイズも倍ほどにふくらんでいる。(笑)

この(コンテストとは関係ない)世界にもいろいろあって、

ダクトテープ(ジョエル・チューダー。これもコンテストか…。矛盾だな)を筆頭とするログ世界。

クリスチャン・ワックやタイラー・ウオーレン、スカッティ・ストップニック、

ジャスティン・アダムスたちの何でも乗れるというオルタナティブ(別の)という新次元。

歴史的なボードに乗るレトロ路線とあって、それはディープなサブカル世界を構築し、

さらには技能が付きまとうため、奧が深いことに気づいた。

オルタナティブサーフ世界内に、

ウナギクネクネ派というのがあることに気づいたのはここ数年前のこと。

ウナクネ。

これはウナギクネクネの略であります。

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/58069

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/53497

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/56620

そのウナギクネクネ界の総帥は、

現在アレックス・ノストだが、

https://www.nakisurf.com/blog/naki/archives/60881

彼こそが、私のサーフィンライフの視野とフィールドを拡げ、

ユル波、弱波、小波、ワル波、全ての波に対しての上等かつ、

エレガントでアグレッシブなアプローチを披露してくれた大功労者なのであります。

そこで今日は、彼に対しての手紙を書くことにしてみました。

前略、アレックス・ノスト総帥さま、

昨日お会いしたばかりですが、お元気のことと思います。

突然ですが、

あなたは多くのサーファーが、

「なんだ、波ないよ、小さいよ他に行こう」

という波で究極的に滑走することを常にしていますね。

これには驚かされました。

つまり誰も来ないような日にもやってきて、

それはすばらしいマニューバーを波の上に描かれています。

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ご存じのようにカリフォルニアや日本は、

ほとんどのサーフスポットの波が弱く、そして柔らかいです。

けれど、世界は、

オーストラリアやハワイなどから伝わったパワーとスピードのサーフィングが主流となっています。

こちらでもそんな波を求めて、トレッスルズやリンコンにも通っていましたが、

人の多さとそこから受けるストレス、それによって波に乗ることまでが疑問となり、

一時はサーフィングを休止することまで考えていました。

そんな中、私はノースハワイに渡る機会があって、

もう一度『サーフィング』ということを見つめ、

本物の波と巡り会うことになりました。

海や波への恐怖、逡巡、そして栄光。

今は亡きアンディ・アイアンズたちとのサーフセッション、

師範カイポ・ハキアス。

そして17フィート17秒という怪物波。

https://www.nakisurf.com/blog/naki/column/column-32

これらを一気に通過し、自分なりですが、

「波を追い求め、ついに乗った」

ひとつの章の完結を見ました。

南カリフォルニア、私の近所で言いますと、

ロッキーショアやグラブルズ、ローワーズとコットンズ以外は、

ショートボード向きの波ではないということに気づきました。

そこでクリスチャン・ワックとタイラー・ウオーレンたちと、

大きなボードでセッションする愉しみを見いだし、

日々サンオノフレでユル波セッションを重ねていました。

そんな中、あなたがやってきて、

私が(無意識的に)求めていた「次の章」の門を微笑と共に示し、

さらにはその章内に出入りする方法を披露してくれました。

邂逅(かいこう。重要な巡り会い)という言葉がありますが、

まさしくその通りの気持ちとなり、

ついに私はその大きめボードでユル波を滑ることに光を見いだしたのです。

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あなたは人が乗らないような小さい波に乗って、

ミニマルターンでセクションを通過していきます。

レイルを一点に入れ、そのまま完全加重します。

しかもあんなに長い時間をかけてレイルを入れるすごさと難易度。

それまでは、「波の上下を使って加速するセオリー」

だった私は後ろから頭を叩かれたようでした。

バカボンのパパのように「これでいいのだ」

そんなテツガク的な教えをこのワンターンで知らしめてくれました。

ボードを振らずに次のセクションに向かって、適度な速度でスラーと移動していく。

嗚呼(ああ)、どうしてこんなことに気づかなかったのでしょう。

正直に言います。

私は膝波以下を見下していました。

だからこそ、少しでも大きな波を探し、

波情報をにらみ、そこに向かって、

例え混雑していても、感情的に鈍感になるように鍛錬し、

ごくまれにくる良い波をかきわけるように乗り、

競争心と闘争心をメラメラと星飛雄馬の瞳の中のように燃やしていたと思っていましたが、

実際にはたった少ししか残っていなかった魂を燃やし尽くしてしまいました。

それで前記した「波乗りを休止しようと思っていた」ということになったようです。

でも今は、

あなたが統率するウナクネ派に入門したおかげで、

無人波(小波だから他サーファーが来ない)に喜んでパドルアウトしています。

この流派の教えのおかげで混雑からも逃れられ、楽しく、

それは豊かなサーフィンライフが与えられました。

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あなたは昔のボンザーや、ログ、

シングルフィンや歴史上のボードに乗りながらも、

ご自身でシェイプもし、サーフィングを突き詰めようとしています。

こういうことにも深く感動させられるのです。

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昨日あなたはフェイドターンをワイルド風に味付けしていました。

「歴史的かつ独創的なスタイルだね」

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そうジャスティン(・アダムス)と、タイラー・ウオーレンたちが話していました。

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泡になったトップにヒットさせるときは、

ボード角度を最大限に付けていました。

これは難易度Sのスーパー級だと思います。

この波で、世界トップレベルのテクニックを実行しているのですから、

あれだけサーフィングが速いのもしっかりと納得できます。

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バックサイドでのトップターンは、

胸を反らし、

威風堂々とミドルセクションに入っていくのが誇らしく、

見ているものを爽快な気分にさせてくれます。

手前にいるのは、オーストラリアのジャック・リンチですが、

彼もまたあなたに敬意を払うすばらしい友人ですね。

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古来由来のクロスステップは、

ユル波でのハイライトでしょうか、

柔らかい波の個性と利点を最大限に使った表現だと感じました。

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あなたのスイッチスタンスのバランスまで良くて驚きました。

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キックアウト(プルアウト)も完璧ですね。

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サーファーなら誰もが敬遠するホワイトウオーター(スープ)の下を、

しかもボヨついた跳ねもしない弱いセクションを、

極限的なボトムターンでえぐろうということを誰が今までしたでしょうか。

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トップターンもこの通りで、

弧を描くという表現がありますが、

それは躍動的に次のセクションに突入していきましたね。

あなたのサーフィングは、どこを切り取っても感動的であります。

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ひとたび波のカール(フック)ができるやいなやの、

WSLトップランカー並のカービング・カットバック。

これを見た全員が驚きのあまりのけぞっていたことを見逃しませんでした。

あのボードで、しかもサンオノフレ波。

あなたの波乗りの幅がものすごいです。

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総帥、あなたの波乗りを見て、こうしてそれをなぞらえているだけで、

光がたっぷりと詰まった明るい未来が見えるようで、豊かな気持ちになります。

コンテストサーフィングをしている頃は、

そこまで勝てなかったこともあり、それは苦しいものでありました。

永遠に続く負のサイクルの中で苦しんでいました。

でも世の中良くできたもので、

その苦しみが極限まで達したころに勝ってしまうのです。

華やかな気持ちがやってきまして、

「自分は負の世界から抜け出たぞ」と錯覚させられました。

翌日、その慢心気分で波乗りすると、

やはり調子が悪く、自己嫌悪がやってきて、

列で言うところの最後尾まで押しやられた気持ちとなり、

または上手な若手、またはとても上手な外国人がいることに気を揉み、

さらにはクルクルと目まぐるしく変わる波運をものにしなくてはならず、

自身のコンディション等、全てに対して目を向けて生きていかねばならず、

その節制する毎日と勝てなくなるかもという恐怖は、

サーフィングの持つ楽しさや自由さよりも大きくなってしまいました。

とにかく自分は日本人ですし、

しっかりと修行して、そこから解脱というか勝利を目指すことを目的としていました。

けれど、やはりくじけて、サーフにまつわる写真を撮ったり、

それをルポルタージュしたり、ドキュメントしたりする仕事に就きました。

そんな少しの方向転換もあって、

波に乗ることをほぼ毎日、32年間続けてきました。

そんな私にあなたはどのスタイルで波に乗ればいいのか、

この波へ対しての大きな欲求と憧れをどう続けていけばいいかを導いてくれました。

子どもの頃は、日本の人気TV番組、

仮面ライダーやマジンガーZというものに夢中になっていました。

ある日を境に突然「あんなの子どもの見るもの」だと、

これらへの興味が冷めてしまったように、

今はそのコンテストサーフィングには興味がなくなりました。

文学賞もそうですが、人の表現に優位を付けたり、

得点を与えるというのはナンセンスだと思います。

そうすることによって、波乗りの自由さというのが精確さへと変化し、

技がキレていれば、波乗りが優れていれば、グレイトサーファーである。

そんな評価が生まれたのだと思います。

けれど、

今ではそういうことも『別世界で起きていること』と割り切られるようになりました。

今日気づいたのですが、

ユル波で入ることは初心者たちと一緒に入ることもできます。

波に乗るお互いを尊重し、もし何かあっても上級者が上手に避けて、

初心者は尊敬の念を持って、あなたのような上級者を目指す世界が構築されています。

最後になりますが、どうぞ、あなたのすばらしい表現をお続けください。

ウナクネ流が、

サーフィングの持つ大きな宇宙観を表現できるようにこのままお進みください。

影ながら、そして僭越ながら応援し、

このすばらしい世界を多くの人に紹介し、その賛同者を増やしていけるように尽力します。

またどこかでお会いする日まで。

naki 2015/09/20