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naki's blog

【保存&特大号】波の出る仕組み_忘れられない伊豆スナッパーロックス波を総まとめ_(6273文字)

Enoshima, Fujisawa, Japan

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玄とは自然の始祖、
万物の生まれ出づる大木である。

 

仙道書『抱朴子』巻一、暢玄より

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成人の日に日本列島の東を、

進行方向の後ろに寒冷前線を付けた低気圧が通過していった。

その気圧は1005hPa(ヘクトパスカル)だった。

その日は私はまだフラットに近い、

いやほとんどフラットの鎌倉にいて、

中村家で遅いランチをご一緒していた。

(中村しーちゃんはお父さんそっくり。とすると、おじいちゃんにも)

.

この低気圧に相対(あいたい)するのは、

北京の東に中心を持つ1030hPaの高気圧。

緯度経度が天気図には付いているので、

そこから読むと、

この低気圧の中心は東京からおよそ2000km東海上にあり、

(緯度 、経度1度の距離を111kmで計算しました)

高気圧は北京にあるので、

東京から2000kmと求められた。

とすると、

その高、

低気圧は4000kmもの距離がある関係だった。

こんなスケールで大気が動き、

私たちはそんな遠くから創られた波に乗っているのです。

ある意味とっても壮大なことだと分かります。

Ebisu Jima, Izu

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さて、

ここまで面倒な文章を読んだ人ならお分かりでしょうが、

波にはまず風が必要です。

できれば遠くからの風が好ましく、

とにかく風が必要です。

よって、

より強い風を吹かせる台風、

爆弾低気圧(猛烈低気圧)などから大波が発生するのです。

ただ、

低気圧でも台風でも吹き出した大気を吹き込む、

風を受けるための高気圧が必要なのであります。

なにやらとっても不思議ですが、

この相対関係によって、

私たちが常日頃から接する

「天気」という結果になるのです。

この天気図から読み取ると、

2000km東海の沖から長く強く安定した東風が列島に向かって吹き、

北京の高気圧からは同等の西風を吹き返す。

高気圧は風を時計回りに吹き出し、

低気圧は反時計回りに吹き込む。

大気というのは上空を使っているので、

立体的な対流が出現する。

低気圧が上昇気流、

高気圧が下降気流なので、こういう表現となる。

簡単に言うと、

日本列島では北西、西風、

つまり陸から海への風が緩く吹き出してた。

沖ではそれに向けて、

東、南東風が強く吹き込んでいた。

中心に私が今いる関東地方があり、

風で切れ切れになった波を

うっすらと沖でまとめ上げていることを想像すると、

東うねりの波が出るセッティングだった。

千葉も良いだろう、

もしかしたら湘南も南東うねり、

西湘を中心に波高が上がるだろうと予測した。

けれど、

こうやって最良の天気図でも波が出ないことも多々あるので、

いつものように何も期待はせず、

普段通りのことをしようと、

元々伊豆に来る予定だったので、

成人式の翌日、

火曜日の朝に鎌倉を出発して、

美しい海岸線をドライブしていた。

熱海あたりからその「東うねり」は届き始めていた。

けれど、風が北東。

きっと風と波が同じ方向=オンショアで、

天気予報は強い雨。

前方の下田方面は暗く、

重そうな雲が乗っているのが、

スカイラインから見えた。

河津まで来ると、

うねりは憎いテトラポッド群を揺らすように大きくなっていた。

海岸線は左に曲がりながら、

河口を真横に見渡せるようになる。

クローズアウト、

日本風に言うとダンパーだが、

きっとオーバーヘッドはあるだろう。

白浜の手前からうねりは、

さらに大きくなっているように見えた。

プリンスホテル手前の岩場でもかなり大きい。

けれど、

北東風なので懸念していたように風と、

波の方向が同じオンショアコンディションで、

かなりの雨が降ってきた。

それはワイパーを強にするほどで、

ガラスに白浜が滲んで見えた。

やはりうねりはしっかりとあるのだが、

しかしここもまた風に波があおられていた。

天気図だと南西か南風が吹きそうだが、

これもまた吹いてみないと実現しないのが天気なので、

あまり何も考えずに北東風ベースだろうと感じ、

外浦海岸、下田港と進み、

多々戸浜に降りていく。

ノリくんはいるかな?

お店を見るが、誰も見えない。

いつもは賑わう多々戸浜も誰も歩いてはいない。

浜まで行くと、風はそこまで悪くないが、

膝サイズの高速クローズアウトがあった。

良く言えば、

「選べば激速いレフト」がたまに来ていた。

けれど、膝、大雨。

入田、大浜も同様だった。

大浜途中にサーフ系写真家、

しかも超老舗である土屋高弘さんのギャラリーカフェ

「オンザビーチ」に寄るがお正月休みだった。

この箇所は当日のブログにも書いたが、

伊豆大浜入口のサーフショップリアルさんに行き、

鈴木直人さんに再会する。

最近の色々、

そしてこれから彼が行くカリフォルニア話をしていると、

突然晴れてきた。

風も真逆に変わった。

本来ならこれからさらに南下し、

下賀茂の道の駅で保坂寿子さんのいなか寿司とか、

横田燻製工房謹製のアジ、

サンマやサバなどを夕食用に買い求める予定だったのを急遽変更し、

最初に見た白浜方面にASAPで戻ると、

快晴
オフショア
サーファー数人

という眩いばかりの視界が現れた。

しかも中央付近は誰もいない。

車を駐車場に入れ、

着替えてボードを持って降りて行くと、

中央はクローズアウトしていた。

どうやら岬側が良いようで、

そのまま100mほど歩いていくと、

すでにサーファーは20人くらい入っていて、

浜には佐々木さんという写真家が1脚を立てて、

望遠レンズを構え、

その先に斬れ味鋭いバックハンダーがいて、

彼が乗ると佐々木さんは、

モータドライブ音をけたたましく立てて、

50枚くらいを一気に収めていた。

すばらしい波で、

これこそが英語で言う「シーン、scene」である。

翌日、

このサーファーがアッチくんだとわかるのだが、

このときはただ長髪の上手なサーファーがすでにいたことで、

なんとなくというか、

いつものように一人でやりたく、

誰もいない中央付近にパドルアウトした。

1月15日、火曜日。

ほぼクローズアウト。

ほとんどの波は岸と平行の、

水深が突然50cm程度の土手地形でブレイクしていた。

かなり危険なバレル波。

首の骨が折れても驚かないほど激烈で、

または軽なら走れるほどの広さの土管にも見えた。

入っていると、

右手に伸びる岬のおかげで、

そこに当たって跳ね返ってきた波群と、

メジャーなセットが合致する。

結果、

それはそれはのものすごい高速ライトとなった。

初日の果報:

1.150分中、3本は世界クラスのライトを得た。
2.*マンライは8回だった。
*マンライ=満足ライディング(©オガマさん)
3.怪我もしなかったし、ボードも折ることはなく、ワイプアウトもしなかった
4.常に無人だった

そんなことから、

この日は下賀茂(南伊豆)まで行けなかったので、

横田の燻製が手に入らず牛皿+卵となったが、

それはおいしい食事をし、

さらには温泉に沈み、

サーファーとしての歓びを揺らぐ湯気に浮かべた夜だった。

明けて翌日。

うねりは残っていて、しかもオフショア。

朝行ってみると、

四国からやってきたアパッチ亮太くんに偶然会った。

いざいざと白い、美しい浜に降りると、

写真家の佐々木さんがすでにカメラを持って立っていて、

ターさんこと、

土屋高弘さんがすばらしい波を5セクションくらい抜け、

岬まで歩いて戻ってくるところだった。

師範と認定して声援を送った。

昨日の粋バックハンダーはリップを背中で跳ね上げていた。

ただ、

違いは岬周りのサーファーが少なかったこと。

その岬波にパドルアウトすると、

その長髪バックハンダーは、

アッチくん(今村厚プロ)だった。

「船木くん!」

再会を歓び、

「ずっと波がなかったんですよ。出ても風が悪かったりして」

「船木くんが来ると良い波になる気がします」

「狙ったんですか?」

そんな質問を乗る波と、

乗った波の間にされるが、

ここにいるのは波由来ではなく、

ただの偶然でありました。

とにかく、

彼がいるおかげで楽しく幸せに岬波に乗れることがわかった。

なぜなら彼は真のサーファーなので、

その正義も真意もわかるからだ。

こちらも真意を求めている身なので、

こうして呼応というか、

まあそういうことなのだろう。

後日、彼のサーフィン知識のものすごさに彼をサーフ教授と名付けたが、

バリの高間教授を思い出し、

そして彼のコツコツ理論をアッチ教授に話すと、

大きく同意して「やはり何でもコツコツやるしかありませんよね」

そんなことになった。

前出の直人さんがこの波を称するときに

「あそこは沖に岩があって、そこから割れるんだよ」

そう言ったが、

今年は、

この冬は岩周りが深いらしく、

今回はその岩の左、

つまり東側にピークがあり、

それはそのまま次のセクションのピーク群とつながり、

うまくすると3セクション、

ごくまれに4〜5セクションはつながっていた。

セカンドかサードの根から掘れ上がる波を待っていたのは、

吉佐美の萩原康司くん。

コロラド州経由で、

開国下田みなとを代表する寿司職人であり、

西湘のトニー・スタークことニックちゃんとも仲良しで、

もっと言うと、私と直人さんと同じ歳。

東うねりなので、

波内側に向かって曲がり、

かなり速いブレイク。

けれどパーフェクト系のブレイク。

これが南うねりだと、

開いて長く続く波になるという。

前方右手に120mほど突き出た岬。

その後半部分で波は崩れていた。

岬にぶつかった波は、

引き寄せられるように、

かき集められるように母体、

本体のうねりと重なる。

すると、

そこには見事なまで斜面を伸ばして、

さらには岩場の浅瀬にうねりは立ち上がり、

屹立してそびえ、

その世界的かつ独特のブレイクを開始する。

こうなると、

自分と波が結合する瞬間に、

波の下方から高トルクのパドリングを開始し、

中腹部分でレイルを入れないとテイクオフできない、

つまりワールドクラス波の入り口となる。

こうして少しビハインドから入るのがコツ。

その岬のはね返り(ウエッジ)の影響で、

波面はこのように起伏のある斜面となる。

常に波曲線の縦に凹凸があり、

レイルワークを妨げる。

難易度が高い由来でもある。

そのまま2〜3セクション進むと、

最終的にはこうして斜面を残したまま、

センターのセクションと結合する。

でもここからさらに20mは斜面を滑ることができるだろう。

最終到達地点がここだから、

かなり長く乗ることができる波だとわかる。

年に十数回しか立たないが、

グレイトサーファーたちを魅了する波であります。

今回このセッションが、

忘れられないほど好きになったのは、

この波を愛するサーファーたちが、

お互いの波乗りを真剣に見ていたこと。

こうして大浜のタカミツくんが乗ると、

前出のター師範と、

アッチー教授たちが一挙手一投足を見る。

(いっきょしゅいっとうそく=一つ一つの細かな動作)

そんな熟成にも似た雰囲気でする波乗りは、

高みであり、ときに感動的なものである。

もちろん、

お互いに乗る順番を知っているので、

それも公平で、

忘れられないセッションのさらなる理由のひとつでもありました。

すばらしいサーファーとなった進士剛光くん。

世界的な考えを持つ彼と波乗り話をするのは楽しい。

それにしても生まれ育った海がこんなにきれいだとどうなるのか?

そんなことも話した。

このあまりにも美しい海は、

地元の誇りであり、

海で生きるプロサーファーとしての矜持(きょうじ)だと思う。

彼の家にやってきたベリンダ・バグスのことを聞き、

美しい伊豆の海を見た彼女の驚きを想像し、

さらには、

多々戸浜の極小波日に会った彼の笑顔を思い出した。

タカミツくんと一緒にカボサンルーカスに行ったことがある。

ここから遙か彼方の、

バハメキシコの先端でありました。

彼の横を、

波の上を魚の群れが飛び、

それを撮った作品が、

サーファーズジャーナル誌にこのように掲載されたことも思い出しました。

そのときの笑顔と何ひとつも変わっていなかったことも。

20年前の記憶がまた蘇った。

波はオーストラリアのスナッパーロックスに似ていて、

これは前出した老舗写真家ターさんこと、

土屋高弘師範の模範的でありながら、

エネルギッシュなボトムターン。

ツインフィンの特性を最大限に活かしたターンであります。

伊豆が磨いた宝石のようなサーファー。

Atsushi Imamura

アッチーくん@セカンドセクション

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しかし東うねりだと、

「(似ているのは)一瞬だけですけどね」今村厚プロ

となるようで、

波の速さは、

スナッパーを超えて振り切ってしまうようでありました。

アッチーは奇跡のサーファーだと思う。

なぜなら伊豆で生まれ育ち、

JPSAに参戦し、

ハワイのパイプラインで高みを見た後は、

伊豆に戻り、白浜神社の前にお店を出して、

ありとあらゆる道を模索しつつ、

上のターさんのように自分を磨き続けているからだ。

本当に美しい人生だと思う。

最終日の4日目は、

まさに饗宴の余韻という波だった。

初日からここでサーフしてきたアッチくん。

数日前にも彼のことを書いたので、

そのリンクを巻末に付けておきます。

私の黄金波。

Tyler Warren’s Big Dream Fish 6’7″

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初日は墜落の連続の果てに、

ついに清涼な波壁を見たナッキー。

パドル出力を100%にするべく、

「もう一回、もう一漕ぎ」を合い言葉に、

波の中で腕を引き絞ることに注力して、

総破壊のようなインパクトをかいくぐることをしていた。

そして翌日、

アッチくんの誇る170%出力というパドリングを目の当たりにし、

「私が100%と思っていたのはせいぜい50%だった」

そう自省し、

直ちにアッチ教授の門下生となり、

テイクオフの位置、

その漕ぎ出す場所を食い入るように見て学んでいた。

3日目、

4日目はアッチ教授の直接指導の甲斐があり、

何本かは満足できるテイクオフが出来た。

アッチくんは、

プロサーファーのみならず、

私たちから見てもサーフィン教授というほど、

波乗りに長けています。

スクール、コーチもしています。

下田近辺でサーフィンを習得したい、

体験から実践、そして応用、

トレーニング方法、考え方、

または波の仕組みを知りたい方は、

こちらに連絡してみてください。

IRIE coffee & sea

静岡県下田市白浜1737

0558-36-4333

またはフェイスブック

https://www.facebook.com/surf.irie.7

Surf Irie(今村 厚さん)

で検索してもメッセージが送れるはずです!

2日目は、

四国から偶然やってきたアパッチ亮太くんも合流し、

下賀茂は、

河津桜河原経由で、

白浜にすばらしい家を購入した野村さんとも再会を果たした。

その桜。

最終日、

その野村さんをGoProで写すと、

こんな波面泡妖怪が浮いていた。

子どもの妖怪のようで、

やたらとかわいい。

ぬいぐるみにしたらどうだろうか?

そんなことを河合会長と話していた。

本当にすばらしい伊豆でした。

真のサーファーたちは楽しく、

美しく、かけがえのない波に乗り、

忘れられないセッションとなりました。

またいつかやってくるこんな日が来るまで、

みんな元気で健康に、

そして究極で純粋な波乗りの信者であるために、

Keep on Happy Surfing!!

【巻末注釈リンク*1:アッチくん】

【特大号】伊豆下田波3日目_ター師範と奇跡のアッチー_(3456文字)

【巻末注釈リンク*2:去年の春伊豆】

【春波万雷号】嵐に伊豆に、波乗りにありがとう!_(2388文字)

【巻末注釈リンク*3:ついに!重版分の自慢カレンダーが届きました!】

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奄美は最高よ〜カットバックについて_NAKIPHOTOカレンダー”Happy Surfing 2019″_12月の観測史上最高気温_(1403文字)

ありがとう2019
ありがとう伊豆
ありがとう波乗り

Happy Surfing!!