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【サーフィン研究所格式特大号】令和エステール_チュラさんワインを試飲するということ_(3358文字)

台風13号は南からこちらに向かってきている。

右回りの強い風を吹かせ、

中心の右側には巨大かつ漆黒の雷雲を浮かべている。

私たちも含めてどうぞお気をつけて。

Cosmos Surfboards TheOne 6’4”

Cosmos Original Twin Fin

.

チュラさんこと、

ベンチュラ・セイジとのセッションを思い出した。

こんな熱量でサーフするのはいつも楽しい。

少し前の話だが、

JRで東京駅まで行ってきた。

地上に出ると、

よく晴れた真夏日だった。

長い時間を地下にいたので、

地底人気分となっていたことがわかった。

(京葉線ホームは地下32メートルにある)

iPhoneのパノラマ写真で東京駅を撮ってみた。

するとここは、

皇室用玄関であり、

そのためのシンボリックな場所だと知った。

駅を背にすると、

正面に見えるのが皇居正門。

駅から最初の角にビームスさんの新丸の内店がある。

加藤さんに窪さん、

そして永井さんや設楽さんたちの笑顔が浮かんだ。

駅舎を離れてもう一枚撮ってみた。

大正時代(東京駅の開業は1914年)に

日本という国が目指していたのは、

モダンという名のルネッサンスだったのだともわかった。

そんな感動を受けながら皇居のほうに歩いていくと、

白シャツ姿の人がさっとやってきて、

「警察のものですが、

しばらくのあいだ立ち止まっていてください」

そんなことを言うので、

その通りにしていると、

白バイを先頭に、

そして後方に従えて5台ほどの車列がやってきた。

なんと、

その中に今上陛下をお見かけした。

後部座席、

左側に座っていらして、

私たちの目の前を通りすぎていった。

このことを友人や親戚に報告すると、

天皇は生き神さまであり、

国民のために平和と幸せを毎朝祈ってくれる人なんですぞと、

前田博士とベンチュラ・セイジから聞いたのが印象的だった。

その皇居の東、

緑と水が広がった正門前にパレスホテル東京がある。

丸の内1-1-1という住所の重み。

1961年に開業したパレスホテルがパレスホテル東京となり、

すでに11年が経つ。

フロントデスクの導線にこの植物オブジェが置かれているが、

みごとな緑(みどり)と、

このご縁にしばし心を寄せていた。

「格式」

そんな言葉が直結的に浮かぶ。

皇居は、

江戸城の跡地の一部だ。

ここから江戸城本丸が見える。

総料理長のおっしゃるところの、

徳川家康の縁というか江戸の歴史であり、

そして明治維新へつながってこの令和にやってきた。

目的地のエステールは6階にあった。

「エステール」とは、

アラン・デュカスの生まれ育ったオクシタニー地方の言葉で、

「母なる大地」という意味だという。

アラン・デュカスは、

史上最年少ミシュラン3つ星のみならず、

異なる国で3つ星を獲得した伝説的なシェフだ。

「エステール」は、

パレスホテル東京とデュカスのパートナーシップによるもので、

さまざまなジャンルの授かりしものたちで、

入念に編み上げられたフレンチ・ファインダイニングだ。

なぜ私がこんなところに来られるかというと、

私たちの総料理長が、

エステールの料理長であり、

前述したデュカスの愛弟子というかマブダチなのであった。

店内に入ると、

それは見事な、

さきほどまで歩いていた場所が俯瞰され、

ちょっとした天上人気分となった。

眼下に見える景色と、

シンプルな空間が合わさった美しい店内。

テーブルの上にあった和紙の飾り皿に目を奪われた。

総料理長によると、

これはフランス画家が、

ポワソン(魚料理)をモチーフに一筆一枚と描いたものだという。

すかさずこのエステールのコンセプト、

「食材全ての生産者への敬意と、

大自然への敬愛と求愛」

デュカスのメッセージが着席時に極まるように表現されていた。

このエステールには食事をしにきたわけではなく、

南カリフォルニアの、

ベンチュラ・セイジ農園「マジカルグレープ」謹製ですと謙遜しつつ、

「みんなのワイン」を試飲していただこうとやってきたのだ。

その渾身を受けてソムリエ界では、

フィッシングとの二刀流で世界を震撼させる佐藤さんが来てくださるという。

ちなみに上は、

イタリア政府が佐藤さんへの感謝とお礼を込めて贈られた貴重なグラッパだという。

監視役として、

マネジャーの山本さんもやってきた。

山本さんは、

味覚が鋭敏で、

ワインが心から好きな物腰の柔らかい人だった。

じつのところは監視ではなく、

新作ワインの味見がしたくて、

休憩中にわざわざやってきてくれたのだと後にわかった。

山本さんはフランス料理に求道し、

猛烈にこの世界を愛し、

サービスに精通しつつ、

土地がら江戸ならではの粋もあり、

関西の土壌を持ちつつ、

グランプリではチャンピオンであり、

フランスレストラン文化振興協会(APGF)の山本晃平理事その人だった。

職の圧力というか、

全員がプロフェッショナルとしての成熟があり、

これからもさらに追熟させていく勢いと、

熱き野心があるように見受けられた。

そしてパレスホテル開業以来、

シェフ・ソムリエとして活躍中の佐藤隆正さんは、

ソムリエ界の重鎮であり、

ソムリエ・スーパーエクセレンスであり、

イタリアワイン界のみならず、

イタリア政府にも日本にサトーありと知らしめつつ、

野池でバスや、

中禅寺湖でブラウン(トラウト)をBOTTIGLIAのようにランディングさせる魚紳さんこと、

二刀流の佐藤さんが開栓されて、

コルクの香りをかぐところから始まった。

そういえば、

開栓前に佐藤さんからこんなお断りがあった。

「(感想を)正直に言っていいのですか?」

「もちろんです。

このブドウを生産したのは友人です。

彼はすべてのことを聞きたいと思います」

さらには、

チュラさんが好きなボクシングネタで

「井上尚弥さんと同じで打たれ強いです。

10回くらい足を踏まれても勝ちますから」

そう言おうかと思ったがやめておいた。

佐藤さんとスーパーマネジャーの山本さんは、

凜とした姿勢のまま、

グラスの中をずいぶんとながいあいだかけてチェックし、

それからチビリとやって、

そしてチビリとグビリのあいだ程度をやって、

少しのあいだグラスの中の液体を透かしていた。

そして佐藤さんが口を開かれた。

「率直に言いますと、おいしいです」

「ああよかった」

(一同胸をなで下ろす)

「とてもフルーティです」

山本さんが続いた。

「これはカベルネ

(・ソーヴィニオン)とラベルにありますが、

まるでジンファンデルのような果実味ですね。

もしカベルネでしたら暑く、

乾燥した土地でのものではないでしょうか。

ラベルが手貼りなので、

だいたいの生産量もわかります」

そんなことになったので、

チュラさんに電話をし、

スピーカーフォンでさまざまを確認すると、

佐藤さんがすべて見透かしたことばかりで驚かさせられた。

「ブラックベリーや、

コショウ、

クローブといったスパイスのニュアンスがあります。

個性的かつ濃厚な味わいなので、

少し甘みのあるソースとの相性が良さそうです。

そうですね、

焼きそばとか中華とかにも合いそうです」

ややあって、

秋のメニュ(メニュー)撮影をしていた総料理長がやってきて、

佐藤さんたちと同じように味見をされた。

「うん、スパイシーだね。

果実味がみごとだ。

チュラさんは、

これを南カリフォルニアの猛暑のなかでこのカベルネを作ったのかぁ」

「カベルネはさ、

カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配だったはずだよ。

17世紀の(フランス)ナンセーブ(南西部)。

このスパイシーさは、

カリフォルニアの昨年の猛暑によってのものなんだね。

造り手の高い感性と独創的なアプローチだね

そんなご感想であるらしかった。

ワイン関係では、

超一流の人たちの意見が聞くことができて、

私もうれしいし、

ベンチュラ・セイジも同様であるらしかろう。

総料理長と話し込んでいたら、

ディナーの支度が始まり、

ゲスト来店時刻になったので、

あわててエステールを後にすると、

このような夕日が皇居方面に拡がっていた。

こんな日になるとは思わなかったと、

そんなことをぼんやりと考えていたことを思い出した。

【巻末リンク:エステール初掲載日】

【サーフィン研究所渾身号】マジックボードの根底_総料理長の新表現@神がかり的プレースメントの『エステール』_(2025文字)

【巻末リンク*2:チュラさんのワイナリー@南カリフォルニア】

【文藝短編】偉人タマちゃんとベンチュラ・セイジのワイナリー=カレラ・ワイン=三輪酒_(2023文字)

Happy Surfing and Happy Lifestyles!!