懲りもせずうき世の闇にまがふかな 身を思はぬは心なりけり という和歌を詠んだ西行。 この歌に今の俺を摺り合わせてみる。 そして868年後、その俺の心を見透かすように彼はもう一首したためていた。 まどひ来て悟り得べくもなか…
『さらなる旅へーーバハ・メキシコ』 Donavon’s trip part4 (1999年初冬)
「朝食だー」 といいながらチャドの案内で歩いて行くと、部落で最も海に近い家に入っていく。 ここが、かのジョンソン婦人の家だという。 窓からふりそそぐ陽がとっても優しいリビングルーム。 壁に飾ってある写真や絵を見ていると、…
『さらなる旅へーーバハ・メキシコ』 Donavon’s trip part3 (1999年初冬)
ゲートを上げ、またさらに進み、突き当たりを右に折れると、そこは岬の先端だった。 下を覗きこむと、ポイントに沿ってレフト(グーフィー)波が崩れていく。 そして波の最後は向かい側から崩れてきたライト(レギュラー)と結合し、ワ…
『さらなる旅へーーバハ・メキシコ』 Donavon’s trip part2 (1999年初冬)
年代物のカーステレオからボブ・マーレイの『Stir it up』が流れてきた。 運転席にたたずんでいるチャドに、この曲の意味を訊ねてみた。 「『かきまわす』という意味じゃないの」 俺はあらためて、 「表面的なことではなく…
『さらなる旅へーーバハ・メキシコ』 Donavon’s trip part1 (1999年初冬)
海を見渡す崖の上。大きな月が俺たちの正面にあった。 長時間走り続けた’77年式シェヴィヴァンのエンジンを切ると、ドアの隙間から冷たい風が否応なしに流れ込んできた。 横に長いウインドシールド越しからは、月夜の海…