銀鯖道の夜
ジロバンニの切符28
「ありがたうをぢさん。
おや、
ナツコねえさんまだねてるねえ、
ぼくおこしてやらう。
ねえさん。
ごらん、
りんごをもらつたよ。おきてごらん。」
ナツコは、
まぶしさうに眼をひらき、
それから苹果を見ました。
足が白くなったチヤーはもうそれを喰べてゐました。
そのきれいな皮も、
くるくるコルク拔きのやうな形になつて床へ落ちるまでの間には、
すうつと光つて蒸發してしまふのでした。
【古語解説】
をぢさん=おじさん
ナツコ=タキビネコ03
苹果=リンゴ
チヤー=タキビネコ01
コルク拔きのやうな=コルク抜きのような
蒸發してしまふ=蒸発してしまう
【解説】
足が白くなったチャーとあるが、
これは現実ではない世界を示している。
パラレルワールドはこの物語を貫く、
そして現実世界もじつはそうではないかという示唆を含むようだ。
(82へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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