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【サーフィン研究所台風3号特大号】トリスケル波とコスモス80シングルフィン_夢の550mライド_台風波や兵どもが夢の跡_(2773文字)

2023年6月。

令和となって5年にもなる。

台風3号が太平洋の東海上を北上した。

天気図を読む人からすると、

「すでに勢力は落ちたからたいしたことはない」

そう言うが、

各地にはいわゆる渾身のうねりが届いていた。

私はこの波に際して、

前日から先乗りし、

深夜からうねりがあがってきたと昨日ここに書いた。

ナウファスのブイレポートを見る限りだと、

4時からうねりは消沈し始めた。

深夜に4mあったものが3mとなり、

そして2mまで落ち着いてしまった。

しかしうねり周期はまだ12秒程度あり、

とすると、

早い時間は巨大波があったのも理解できる。

このナウファスによるブイ情報はありがたいが、

多くの人にはあまり知られていないらしく、

誰に聞いても

「ブイ?なにそれ?」

とか、

「ナウファス?知りません」

ということになる。

こんな有益情報が、

しかも無料なのに広まっていないのは、

波情報社による圧力かもしれないと、

K氏の顔を思い浮かべて訝(いぶか)しがった。(笑)

前田博士が夜明けごろに到着し、

この*トリスケル波のセットアップを見てご満悦だった。

*トリスケル=triskele

回転対称性を示す三重の螺旋で構成されたシンボル。

これは太陽の力を象徴し、

成長・進化・復活という3つの意味があるという。

たまにお化けセット、

いわゆるゴースト・セットが入る。

さてサーフしようとなったとき、

前田博士がサプライズがあると言って、

日産ミヤサバンからサーフボードが出てきた。

コスモスの8フィート・シングルフィンだ!!

早朝4時にサーフボードが引き渡されるのも、

クラシックだと感じ入った。

コスモス・サーフボードの新作は、

ボラン・クロスの古式かつ機能的なシングルフィンだ。

私がずっと欲しかったボードサイズでもある。

こうして

「納品された直後に台風波に挑める」

というのも運というか、

このボードが持ち合わせるご縁だ。

ボランクロスの薄い青緑色がほんのりと美しい。

ずっしりとした重量感があるので、

オフショアが強くても風を切って降りていけそうだった。

うっとりとしながら写真を撮っていると、

ニュージーランド出身のスコッティが、

このボードにいたく感心していた。

「これ、パーフェクトね」

「キョウのためにあるみたいだね〜」

そんなことを美しい日本語で言ってくれた。

博士は64で乗られるという。

なんでもTheOneのテストをこの波でしたかったそうで、

お互いのそんな機会に恵まれた朝だった。

このブレイクの特徴は、

パーフェクトなリーフだ。

私なりに調べてみると、

どうやらこの茶色図形のような岩礁が沈んでいるようだ。

いざいざとパドルアウトし、

昨日のようにピークからテイクオフし、

ダウンザラインで200m近くロングライドできて、

陸から見る波との違いにしばし感激させられた。

そしてずいぶんと沖に流されてしまったと、

陸側に戻ろうとした瞬間、

水平線の彼方に超が付くほどのオバケ・セットが見えた。

いわゆるゴーストセットであり、

どうやら最大のものであるらしいので、

全力で沖へパドリングを始めた。

さらに沖に巨大なうねりの影が見えていたので、

1本目、

2本目の波を越えると、

波はすでにブレイクを始めたのでチャンネル側に逃げた。

3本目をスルーすると、

みんなは乗っていったのか、

波を喰らったのかはわからないが、

あたりには誰もいなくなった。

4本目の後ろにさらに大きなうねりが見えたので、

そのまま波の後ろに出ると、

やはり最大特上があった。

その山波に乗ると、

波壁が永久運動のようになり、

それからさらにつながって、

それを8回くらい繰り返すと、

堤防が切れた河口の正面まで乗っていけた。

そこからパドルバックしようとするが、

流れと波がひっきりなしでものすごく、

例えゲッティング・アウトできたとしても、

戻るまで1時間はかかりそうな気がしたので、

のんびりと歩いて開始点まで戻ると、

「戻ってくるまで15分かかりましたね」

私を見ていた人に言われた。

後でわかったのだが、

前述したスコッティとタキビ神は沖から見てくれたそうで、

「最後は見えなくナリマシタ」

「ダウンザラインが目に焼き付きました!」

それぞれそんなことだったと伝えてくれた。

すかさず前田博士が、

Googleマップで距離を計測してくれると、

なんと550mもあって驚いた。

これではまるでコスタリカのパボネスと同等の距離だ。

Jirovanni 6代目

.

水を飲みに車に戻り、

それからまたパドルアウトするものの、

うねりはやはりどんどん下がっていて、

もうあの巨大セットはおろか、

ゴーストセット波は一切来なくなってしまった。

ずっと待って、

なんとか波に乗り、

着替えてからカメラを手にするが、

書いたようになかなか波が来なかった。

ようやくインサイドから博士が乗り、

ザ・ワンで「*うんならかし」を決めた。

*うんならかす=房州弁(千葉)で、

「ものすごく早く進ませる」という意味。

マンライだが、

そろそろ台風波が終焉(しゅうえん)に向かっていて、

それぞれがすばらしい波に乗った喜びに満ちあふれていた。

この波と法王を愛するポパイ・ケイスケ。

彼の予測によって、

私はここまで3時間半も車を走らせたのだ。

(山道を使うと2時間半だという)

房総半島は広い。

やがてタキビ神も波に乗り、

焚火ポーズでインサイド・セクションに入ってきた。

ドラグラ父ちゃんの最後の波を写すことができた。

きちんと書くと、

サイズが1/3くらいに下がってもまだこのくらいあるのだから、

波の最盛期に写真を撮りたかったが、

例によって波乗りしてしまったのだ。

タキビ神の92。

こちら父ちゃんの82。

どちらもタイラー・ウォーレン・シェイプである。

前田博士は、

この傑出した名作80にもう一度目を入れて、

これが自作であるという歓びと、

私の滑りを重ねて思い出してくれた。

この台風で、

あんなすばらしいトリスケル波に乗れるとは夢にも思わなかった。

そしてこのボードがなかったらあの波には乗れなかったわけで、

一期一会というか、

深いご縁を深く感じ入った。

タキビ神と、

父ちゃんことアキくんもそれはうれしそうだった。

松尾芭蕉ではないが、

「台風波や兵どもが夢の跡」

そんな気持ちになるほど波がなくなってしまった。

午前9時。

結局ブイ情報が正しく、

5時半くらいまでがうねりの威力があり、

それからは消沈してしまったのだ。

この80の滑走があまりにも楽しかったので、

今朝も夜明けから雨のジェフリーズに行き、

それはすばらしい波を得た。

新しい岬リーフにありがとう。

ドラグラ・フレンズたちにもありがとう〜!

そして、

前田博士とこのコスモス・80シングルフィンにも🙏

【巻末リンク:このボードの経緯】

【サーフィン研究所】極波乗文芸百科_コスモス・サーフボードの温故知新8フィート・モデル_(991文字)

【巻末リンク*2:房州弁について】

【サーフィン研究所】スタイル・マスター別府さんと房州弁のすばらしさ_(1477文字)

【巻末リンク*3:コスモス・サーフボードについて】

【サーフィン研究所特大号】コスモス・サーフボード_エンスー100年ストーリー_(2088文字)

Happy Surfing and  Happy Lifestyles!!