【日曜日の連載シリーズ2月編】
銀鯖道の夜
九
ジロバンニは丘から飛ぶやうに下の廣い砂浜へおりました。
砂浜にぼうつと見える小さな川があつて、
ヨオドの水が流れてゐました。
ジロバンニはちよつとの間、
ここでとまつて、
せはしい息できれぎれに立つてゐましたが、
にはかにまたちからいつぱい走りだして、
水際へいそぎました。
するとジロバンニは、
さつきシギパネルラさんをいつしよに見たケントに會ひました。
ケントがジロバンニに走り寄つて云ひました。
「ジロバンニ、シギパネルラさんが居なくなつたよ」
「どうして、いつ。」
「スキツパーフィツシユが沖に流れてゐつたんだ。
するとシギパネルラさんがすぐ飛びこんだんだ。
けれどもあとシギパネルラさんが見えないんだ。」
【解説】
物語が大きく動きました。
夢で見た旅立つように笑っていたシギパネルラさんは、
現実世界からいなくなってしまったようです。
タマサキに流れるヨード川がここで登場しました。
現代でもこの川は存在していて、
ヨウ素を採取した(伊勢化学工業)残り水が流れています。
黄色の泡が浮くので、
私たちは気になって独自に調べてみました。
これは睦沢温泉と同じ太古水で、
しかもプロセス後の安全な温水ということがわかりました。
それからタマサキでの名所となりました。
それと、
スキッパーフィッシュというのはサーフボードのことで、
第一章でのシギパネルラが持っていた黄色いボードです。
それがジロバンニの記憶にしっかりと焼き付いていたようです。
(10へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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