【日曜日の連載シリーズ3月編】
銀鯖道の夜
十二
「ジロバンニ、
ラツコの法王が來るよ。」
美住町の魚神さんの若々しい聲を聽いた。
「ラツコ法王、
私たちの罪を許しシギパネルラさんの呪をお解きください。」
いつかジヨバンニの眼のなかには涙がいつぱいになりました。
そのとき日光の柱は波円に射して青くまた白くぎらぎら反射しました。
【解説】
「ジロバンニ、ラッコの法王が来るよ」
12章目は、
美住町の魚神=フィッシュゴッドの台詞から始まった。
以前にもこのセリフがあるが、
それが伏線だったと思っていただきたい。
私は、
宮沢賢治先生が書かれた『龍と詩人(1921)』の、
龍のチャーナタと、
ラッコ法王との相似点に目が行ってしまった。
龍のチャーナタは、
「海に埋もれた諸經(経文)を探すことができる」
という宝珠を主人公のスールダッタに与える。
わたしは雲であり風であった。
そしておまへも雲であり風であった。
龍のチャーナタがスールダッタに語るシーンがある。
ジロバンニは自分たちの罪を許し、
シギパネルラさんの呪いを解いてくださいとラッコ法王に祈ると、
波の中が光る描写となり、
これが龍のチャーナタを彷彿(ほうふつ)とさせた。
そしてこれは何かの示唆なのだろうか?
そう考えさせられるチャプターとなりました。
(13へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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