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naki's blog

ある日の不思議な月光と、波パワーのすごさを感じた亥刻_(1436文字)

昨日ここに書いたように、

「やけにパワフルな月」を撮ってきました。

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ここはサンオノフレの崖。

月が光彩円を従えていて、

さらにはいくつかの星も見え、

目を凝らしていくと、それはまるで宇宙そのもの。

月光浴をしながら、ある物語の構想を練っていました。

さて、西うねり。

そして嵐がやってくるという。

IMG_8893

いつものようにブライアン・ミラーとミドルスに行き、

海のフレッシュで激烈なるパワーをもらった。

やはりサーフィングはいい。

なぜならば、予想だにしないエネルギーを波から受けるから。

今日がそんな日。

そんな重要日に会ったのが、

サーファーズジャーナル誌の跡継ぎとされるショーン・ペズマン。

彼とシングルフィン話をしていると、

ひとりのサーファーの波乗りが目に焼き付いた。

正確で、軸を持った美しいターン。

「うわ!トムカレンのハイブリッドだね」

「はて、いったい誰なのだろうか?」

などと三人で話していたらそのサーファーはデイブ・ポストだった。

デイブはニューポート出身で、

その昔はエアショー(エアリアルのみを採点するコンテスト)や

WQSに出場していた時に知り合った。

それから10年後の今、

デイブは基本に沿ったクラシカルなサーフィングをするようになった。

進化というより、

サーフィングのルーツに向かうスタイルの気配を満たし、

「ターン全てに品があり、

渋く熟成させたサーファーになったんだねデイブは」

そんなことを言うと、ものすごく照れていた。

きっと図星だったのだろうか。

ミドルスの長い斜面に描いたデイブの重く速いターン。

いつまでも忘れられないほどすばらしかった。

201601_SanO_Moon_Reno2_6708

さて、この満月の下を悠々歩いている人がいて、

それは精神科医のリノだった。

彼とよもやま話をしていると、

先日私が観たオペラの話となった。

「セリアか、それともブッファだったか?」

そんなことを聞いてきた。

あまりわからないので題名を見せると、

「ははぁ、これはフランス語だ」

「まあそんなような言語でした」

「ビゼーの代表作じゃよ。字幕でFriend, friend, friendとやっていて訳に違和感あるだろ」

「え、なんでもそんなことを知っているのですか?」

「オペラは同じ作品を何度でも見るものだ。こういう代表的な作品のフレーズはほとんど頭に入っている」

(と言って歌い出した。しかも美声バリトン)

「そうなのですね」

「娯楽でも一般向きとそうでないのがある。

オペラはまさに上級娯楽といえよう。だから年配のファンが多いのさ。ようこそオペラの世界に」

そう言って手を拡げてきて、

また知った曲を歌い上げる。

で、月がそのメロディを吸い取るように空に舞っていった。

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こんな話をしてから去っていくリノ。

こんな人だとは知らなかったけど、

とてもすてきなことを感じた夜でした。

突然、

芥川龍之介さんの「蜘蛛の糸」の最後のフレーズ、

「極楽ももう午(ひる。正午頃)に近くなったのでございましょう。」

というあれが浮かんだ。

そこで、その文体に重ねて、今日の満月日を芥川式に終えるとします。

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しかしこの満月は、少しもそんな事には頓着(とんじゃく)致しません。

その玉のような白い光は、

御釈迦様の御足(おみあし)のまわりに、

ゆらゆら萼(うてな)を動かして、そのまん中にある銀蕊(ずい)からは、

何とも云(い)えない力が、

絶間(たえま)なくあたりへ溢(あふ)れて居(お)ります。

参斧振(サンオノフレ)ももう亥(いの刻。22時頃)に近くなったのでございましょう。