【日曜日の連載シリーズ4月編】
銀鯖道の夜
十八
氣がついてみると、
さつきから、
ごとごとごとごと、
ジロバンニの乘つてゐる車が走りつづけてゐたのでした。
ジロバンニは、
父ちやんのキヤラバンの車室に、
窓から外を見ながら坐つてゐたのです。
車室の中は、
青い墨西哥絨を張つた腰掛けが、
壁には、
ハツピーサーフィンのロゴが光つてゐるのでした。
すぐ前の席に、
ぬれたやうにまつ黒な上着を着たせいの高い人が、
窓から頭を出して外を見てゐるのに氣が付きました。
そしてその肩のあたりが、
どうも見たことのあるやうな氣がして、
さう思ふと、
もうどうしても誰だかわかりたくつてたまらなくなりました。
いきなりこつちも窓から顏を出さうとしたとき、
俄かにその人が頭を引つ込めて、
こつちを見ました。
それはシギパネルラさんだつたのです。
【解説】
この18章は、
父ちやん=お父さんの車で銀鯖道(ぎんさばみち)を走り始めたジロバンニくんが、
ブルードラゴンでいなくなったシギパネルラと邂逅した瞬間が描かれはじめました。
このシギパネルラへの人物像に焦点を当てたり、
高野山側、
つまり密教から見た側面と、
じつに多彩な方面で考察が進められている。
さらに作品の外側に存在する作者の体験と照らし合わせ、
シギパネルラをその兄・タローとしたり、
友人のケントくんとする説もある。
とにかくここでギンサバミチへの「同伴者」が登場したわけだが、
本稿では、
ジロバンニくんのこころの内側に焦点をあて、
『銀鯖道の夜』を主人公・ジロバンニの成長物語として考えることで、
シギパネルラとの関係を中心に考察を進めていこうと考えています。
ちなみに「青い墨西哥絨」というのは、
メキシカン・ブランケットのことで、
NAKISURF千葉店内でいくつか見えるものと同じだと感じました。
(19へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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