新品・中古サーフボード販売、カスタムオーダー、ウェットスーツ、サーフィン用品など。NAKISURFは、プロサーファー、フォトグラファー、サーフライターで知られるNAKIのコンセプトサーフショップです。

naki's blog

【ちょっぴり特大号】純粋に波に乗ることについて_(2930文字)

IMG_9945

今日はひさしぶりに純粋な気持ちで波に乗ることができた。

逆に言うと、

純粋な気持ちで乗れないときばかりだ。

そういうときは、たいていこの中のどれかだろう。

1.誰かが自分の波乗りを見ている

2.写真かビデオを撮っている

3.コンテストのとき

4.つまり自分を良く見せようとしたとき

5.時間がないのに波に乗ろうとしたとき

IMG_9914

波乗りの元々は、

波(自然=海)との対話だったり、

時には対峙だったりするのが波乗りだが、

上達してくるにつれ、違う要素を含むようになってくる。

例えば、

ーー私は日本人だからということだろうがーー

「日本でスポンサーを見つけているのだけど」

「具体的には毎月1000ドルは欲しい」

そんなことを言ってくるサーファーが週に1〜2人ほど、

年におよそ70人ほどいる。

先週は、

ピザが好きなあまり、

毎食ピザにしているほど健康には無頓着、

しかも知り得る限り長期間無職、

しかも好きな時間に海にやってきて(早起きしないということ)、

ボードを裏返したり、後ろ向きに乗ったり、

そんなソウル系の滑走が好きなSという青年がやってきて、

「ボクがキャッチサーフに乗ったら宣伝になって給料がもらえるはずだから話をつけてきてくれ」

そんなことを言うので、

「はいはい」

そう二つ返事で答えておいた。

で、昨日ブライアン・ミラーが私のバンにやってきて、

波乗り話をしながら一緒に波を見ていると、

そのSがやってきて、

「キャッチサーフはボクのことを何と言っていた?」

そう聞いてきたので、

「返事がないね」

そうごまかしておいた。

すると、

「自分はアレックス・ノストたちと同じくらいユニークでソウルフルなサーファーだ。

なので、彼らと同額程度の給料をもらってサーフしているべきである。世の中は不公平だ」

そう言うのではないか。

勘違いもはなはだしい。

アレックス・ノストは少年時代に波乗りに明け暮れて、

ショートボードのトッププロの道を模索し続け、

朝から暗くなるまで、毎日ずっと波乗りをしていたそうで、

あるときは、オートバイで両手首を骨折したのに、

ギプスをつけたままコンテストのヒートに出ていたほど、

熱い少年だったと聞いている。

後に彼は、ショートボードをあきらめ、

その総合力をあまり人が目を付けていなかった

「クラッシック&ソウルオルタネティブ=ウナギクネクネ」

とまだ誰もしていない企画力があったからこそ、

メーカーはこぞって彼のスポンサーになっているのだ。

だが、ブライアン・ミラーはSに迎合し、

「そうだ、お前はこの業界で稼げるべき存在であるであろう」

そんなことを言って二人で盛り上がっている。

私はその会話から離れて、自分の車内を片付けていた。

やがてSが去ったので、

私はブライアンに

「本当にそう思って言ったのか?」

そう聞いてみると、

「まさか…」

やはり迎合していただけらしく、

「(波乗りで給料をもらうことについて)NAKIはどう思うんだ」

そう逆に聞かれたので、

「どの世界でも好きなことをやって稼ぐ、というのはハンパではなく大変で、そして容易ではない」

そう前置きをして、こう続けた。

「私は波乗り業界で、”間違いなく天才そのもの”という人を多く見てきた。

ある天才は懸命に努力し、ある天才は何も努力しなかった。

その後の結果は、ミラーが考えるのと同じで、

もっと言うと、野球も好きで小さい頃から見てきているが、

偉大なる選手は必ず、長い期間をかけて、しかも毎日ものすごい努力をしている。

イチローは寝ているときでさえも、寝違えないように交互に寝返りをしていると聞いた。

まるでサムライだろ?一流はそんな逸話ばかりだよ。

前の晩に1万回素振りをしたからといって上手になる世界ではないし、

それは波乗りも同様だと思っている」

「なるほど、Sは天才でもない上に努力すらしていないよな」

「その通り。夜は好きなようにしていて、好きな時間に起きて、

好きなものだけを食べて、親がおだてて、友人がおだて、先輩がおだてて、

波乗りでさえもふわりとしているサーファーに誰が給料を払う世界があるのだろうか」

「なるほど、そんな人間が給料をくれというのが不快なんだね」

「少しくらい上手になると、

すぐにお金をくれという話になるサーファーが多いから、それが面倒になって、不快に感じてきたんだ」

IMG_9925

そのときにちょうどフィッシュゴッドこと、ジャスティン・アダムスが波に乗った。

ブライアン・ミラーは、

「ジャスティンみたいに無心でサーフしないとな」

ボソリとそう言った。

このあたりで世間に知られていない天才サーファーと言えば、

ブレーク・マイケルズだろう。

ダナポイントで生まれ育った彼は、

タイラー・ウオーレンたちも認めるほどである。

ただ、コンテストにも出ない、

人前であまりサーフしたくない、

写真も撮られたくない、

そんなことから、

一般サーファーのようにボードを買ってサーフしている。

テストライダーという道があるのだが、

ショートボード世界ならばそういうものに乗れるが、

オルタナティブでは全くそんな待遇はない。

IMG_9936

この古いタイラー・ウオーレンボードを持っているのがブレークで、

彼はアレックス・ノストたちと同じレベル、

もしかするとそれ以上の波乗りをするのだが、

一度も給料はもらったことがないという。

今朝彼と話す機会があったので、

そのことを聞いてみると、

「お金をもらえるのならうれしいけど、

自分は人前でサーフするのが苦手だったりするのだから、このまま何も変わらないよ」

そう言いながらそのボロボロボードの傷を触っていた。

私もサーフィンをすることでお給料をいただいていた時代があったが、

ストレスというか、冒頭に書いたように純粋な波乗りはできなかった。

こと波乗りになると、自分はロマンチストだと思える。

誰もいないところで、朝陽を見ながら海をかきわけたいと思う。

もし自分が競技志向で、

追い詰めることができたなら、

長いあいだ波乗りだけで食べていけたのだろうが、

すべからく純粋にいたいと感じ、

この汚れてしまった心を波乗りに没頭することによって洗浄することをはじめた。

具体的には人のいないブレイクに行くようになった。

この辺りだと、ソルトクリークの北側。

ノースハワイだとホワイトハウスかイナリーズ。

ただ、無人のところばかりでサーフしていると、

誰かと一緒にサーフしたくなる。

周りの目が欲しくなる。

まだまだ修行が足りないようだ。(笑)

IMG_9766

そんなことを考えていたら横にケン・ブラッドショウのボードを持ったサーファーが現れて、

砂のついたワックスをジャリジャーリガリと塗ってパドルアウトしていった。

不思議なのは、

これこそが33年前に初めて乗ったサーフボードと同じブランドであり、

最近はこのロゴを見なくなって久しいので、そんな偶然にもうれしくなった。

連載企画の回想記も最終回を残すだけだが、

「その波乗りを始めたとき」のことを書いて、

それをコラムとしてまとめました。

原稿用紙20枚、8000字にもなりましたが、

よろしければ読んでみてください!↓

【naki’sコラム】vol.63 私が波乗りを始めた頃_(8008文字)

それではHave a wonderful sunday!!

今日もありがとう。


Comments are closed.