今日は完全バタバタだったので、
ここに以前カラーズマガジンの創刊時に書いた
「ウナクネ元年」というコラムを引用させてください。
明日またしっかりと書きます!
今日のノースタイガー。
曇、または小雨。
良い波でした。
今日も良い日になりますように。
Hope you have a happy day!!
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yogeことヨゲとの出会いは、
この時間をずっとさかのぼっていかなくてはならない。
彼は茅ヶ崎チサンからパークのあいだに生息する中学生だった。
それから波乗りに没頭した高校生時代をチラチラと拝見させていただき、
そして1年以上も滞在したUSAサンクレメンテでは、
しっかりとその成長ぶりに感心したことを思いだした。
その彼は、
いつの日からかCOLORS MAGAZINEというウエブマガジンを主宰し、
運営を開始した。
yoge独自の視点と方法でサーフィンを捉えて表現し続けているので、
私は愛読者として胸を張っている。
そんな媒体が印刷物となるということで、
さらにはここに書かせていただけるということで、
気合いを入れて書いております。
ということでこの号は記念すべき創刊号なのであります。
おめでとうございます。
私はサーフ誌が大好きで、
世界を見渡して一番好きなものは『サーファーズ・ジャーナル誌』。
「波景色、ドラマ、色彩と文学、サーフ世界へのドアとなる一冊」。
というサーファーズ・ジャーナル誌のためのキャッチコピーを書いたが、
これをそのままこの誌に差し上げたい。
サーフメディアの新しい波です。
いや、時代が産んだ新しい色が、このCOLORS MAGAZINEでしょうか。
閑話休題。
「ウナクネ」という言葉をご存じだろうか。
語感の通り「ウナギがクネクネ泳ぐさま」を擬音省略したもの。
もちろん私の造語です。
この言葉&ムーブメントの発生は最近にさかのぼるのだが、
私の所有ボード群のなかに深紅のミッドレングス・ボンザーがあって、
そのセンターフィンをあえて外してみた。
すると、直進するための接点部がなくなり、
テイクオフから足を乗せた途端にボードはクネりはじめた。
しかし変な向きにクネクネっと行ってしまう気まぐれターン。
そのときは、反対側のレイルを適度にセットすることによって、
そのクネ左キックを右に、また右クネリを左にという連続の繰り返しが楽しく、
マンライ、つまりマンゾクライディング(©オガマさん)を得た。
これがウナギクネクネのはじまり。
それからその言葉はずっと私の胸の中にありました。
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クリスチャン・ワックや仲間たちとロングボードするときはフォードアーズに行く。
ここはサンオノフレの二軍ピークで、
サンオノフレ・ポイントとオールドマンズというメジャーピークの中間にあり、
そのブレイクに挟まれた幸運で、ここは誕生したときからマイナーブレイク。
フォードアーズという名前もつい最近になって、
誰かがそんな風に呼び始めたもの。
その由来は、ブレイク正面の用具小屋の扉が4枚だったことからということです。
私は、
メジャーなものは「追いかけずにそっと横に、静かに騒がず」というスタイルを貫いている。
「探すけど、みんな気づいてしまったら離れる」
そんなスローガンでメジャーなものとお付き合いしている。
サーフボードも、サーフブレイクもメジャーには乗らないし、また行かないようにしている。
そんな私にとってそのフォードアーズこそが2軍、マイナー、
知られていないという完璧な三拍子のトリプルクラウン、三冠王でありました。
そんな風にフォードアーズ通いが始まると、
ここにはタイラー・ウオーレンやジャスティン・アダムス、
そしてアンディ・ニエブレスたちがいて、
アレックス・ノスト一派も週に二回くらい来ることがわかった。
その日はちょうどアレックスとパーキングロットで隣合わせとなった。
彼に「そのボードすごいね」と声をかけると、
「スリフトストアで見つけたんだよ。正真正銘のキャンベルブラザーのボンザーなんだぜ」
うれしそうに言いながら、
オレンジ色のセンターフィンを小さくするためにガリガリとずっと削っていた。
あ、またもボンザーですね。
そのアレックスが波に乗ると目を惹かれた。
やたらと独特なのである。
クイっと変な向きになりながらターンが絞られて、サーフボードという矢が放たれる。
しかもどこを切り取っても写真作品となるワイルド&オリジナルスタイルで波を滑走していった。
そのアレックスが波のトップでボンザーを切り返すとき、クネクネっとしているように見えた。
そしてインサイドに入ってくると、クネリながらノーズに乗って、
しかもそのまま泡から滑り降りてくる。
それはまるでウナギクネクネ世界の集大成だった。
彼はすでに永劫の彼方まで解脱していて、全てを俯瞰でき、ものごとを達観していた。
そして彼の周りを光が包んでいた。
ウナクネ教祖さまの降臨だと崇めた瞬間がウネクネ教の発生、そのときでありました。
それからというもの、ウナクネ世界が自分を包み始めた。
Nation Champagne 6’11”
Photo by Brian Miller
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今まで一生懸命やってきたサーフィングが、
この世界のたった一部だったことに気づき、
その真理が「ハッピーサーフ(ニコリンサーフ)」だということを悟った。
この「ウネクネの悟り」の出現からは、いい波に乗りたい、とかあの技をしたい、
というありとあらゆる欲と煩悩から解放されたのです。
良くない波であっても「ちょっとクネリますか」と着替えてパドルアウトできる至福は、
涅槃に通づるものがあります。
密教の呪文のように「ウナクネウナクネ」と唱えていると、
グライドスタンスがどんどん狭まってきて、
それこそが印契(いんげい)なのだと気づいた。
その印契スタンスで輪廻転生と呼ばれるラウンドハウスカットバックを結んだとき、
そらが宇宙的となり、日中見えないはずの月の位置や星々が自分に降りそそいだのです。
これこそがコスモロジー(宇宙観)と呼ばれるものだそうで、
私は解脱に近づいているのかもしれない、と曼荼羅(まんだら)を探す毎日が始まりました。
先週サーフ雑誌の編集者とクリエイティブディレクター、
さらには営業部隊がサンクレメンテにやって来て、
「僕はウナクネが好きです」と言う。
Mizuki Kawazoe (Shiggy’s sister)
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それならばと、元祖由来のウナクネ聖地フォードアーズにお連れした。
その聖地巡礼を二回ほど繰り返し、
影のウナクネ皇帝(タイラー・ウオーレン)が登場し、
滞在累積時間が20時間に達したとき、
彼らの現在における人生問題
「サーフブレイクまたはサーフボードへの執着によって苦悩が起きる」
ということが提示され、解明したのだ。
そして私も含めた彼らは、
正しいウナクネ道を実践することによって解決に至る、
という極めて実践的な教えを得たのです。
ウナクネ全ての活動はやはり「ウナクネ秘密の教え」だとも感じる。
さらに言語では表現できない悟りと奇跡的な感動を伝えるものなので、一
般の理解を超えているという点で、
「ウナクネ密教」としたほうがよいのかもしれない。
けれど衆生の救済に取り組むべきだという教えも聖地からのメッセージとして受けたので、
このことをすばらしい門出を迎えたCOLORS MAGAZINE誌に鋭意記録して、
この項を閉じさせていただきます。
(了、ウナクネ皇政元年)
Christian Wach, Tyler Warren, Carson Wach
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