【日曜日の連載シリーズ3月編】
銀鯖道の夜
十五
「あなたのお父さんはもう歸つてゐますか。」
先生役のバリのヤマザキさんは堅く時計を握つたまま、
また聞きました。
「いいえ。」
ジロバンニはかすかに頭をふりました。
すると先生はそらいつぱいに銀河がうつつた方へ、
ぢつと眼を送りました。
ジロバンニはもういろいろなことで胸がいつぱいで、
早く母ちゃんにこのことを知らせようと思ひ、
タマサキのブルードラゴンをはなれ、
もう一目散に伊勢沃度工場の方へ走りました。
【解説】
シギパネルラはどこにも現れません。
時間だけが経っていきます。
シギパネルラは、
「行方不明 ≧ 死」という状況を持って、
ジロバンニたちに向けて、
「出立する人」として示唆させていように映ります。
また、
先生がお父さんのことを聞くのは、
作品の主題である「〇〇道」への導入部分として、
重要な役割を担(にな)ったパートになるようです。
余談ですが、
伊勢沃度工場は、
いまも伊勢化学工業としてタマサキの裏手にあるので、
昔の風景と、
舞台を浮き上がらせるようで、
前を通るたびに感慨深いです。
(16へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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