銀鯖道の夜 ジロバンニの切符11 そしたら俄かにそこに、 つやつやしたチヤーが、 ひどくびつくりしたやうな顏をしてゐました。 隣りにはナツコが一ぱいに風に吹かれてゐるけやきの木のやうな姿勢で、 チヤーのうしろに立つてゐま…
【サーフィン研究所:連載】銀鯖道の夜 64_ジロバンニの切符11_(339文字)

銀鯖道の夜 ジロバンニの切符11 そしたら俄かにそこに、 つやつやしたチヤーが、 ひどくびつくりしたやうな顏をしてゐました。 隣りにはナツコが一ぱいに風に吹かれてゐるけやきの木のやうな姿勢で、 チヤーのうしろに立つてゐま…
銀鯖道の夜 ジロバンニの切符10 「何だか苹果の匂がする。 僕いま苹果のことを考へたためだらうか。」 シギパネルラが不思議さうにあたりを見まはしました。 「ほんたうに苹果の匂ひだよ。」 ジロバンニもそこらを見ましたが、 …
銀鯖道の夜 ジロバンニの切符9 「あの人どこへ行つたらう。」 シギパネルラもぼんやりさう云つてゐました。 「どこへ行つたらう。 一體どこでまたあふのだらう。 僕はどうしても少しあの人に物を言はなかつたらう。」 「ああ、僕…
銀鯖道の夜 ジロバンニの切符8 ほんたうにあなたのほしいものは一體なんですか、 と訊かうとして、 それではあんまり出し拔けだから、 どうせうかと考へて振り返つてみましたら、 そこにはもうあのラツコ捕りが居ませんでした。 …
銀鯖道の夜 ジロバンニの切符7 「もうぢき酒井の停車場だよ。」 シギパネルラが向う岸の、 三つならんだ小さな青じろい三角標と地圖とを見較べて云ひました。 ジロバンニはなんだかわけもわからずに、 となりのラツコ捕りが氣の毒…