銀鯖道の夜
四拾参
ラッコを捕る人 1
「今晩は。」
親切さうな大人の聲が、
二人のうしろで聞えました。
橙の二輪車が描かれた服を着て、
白い布でつつんだ荷物を、
二つに分けて肩にかけた人でした。
ジロバンニは、
なにか大へんさびしいやうなかなしいやうな氣がして、
少し肩をすぼめて挨拶しました。
【解説】
親切さうな=親切そうな
聲=こえ
橙の二輪車が描かれた服=オレンジの二輪車。
このデザインだとされている(下画像)
さびしいやうな=さびしいような
かなしいやうな=悲しいような
ついに新章です。
タキビ神海岸で二人は、
龍雲を見たり、
檀那という怪魚を釣る人たちに出会いました。
この新章のタイトルに
「ラッコを捕る人」とある。
ラッコは、
アシュヴィン双神の別名だと多くの宮鯖研究家が断定している。
いくつかの文献を調べてみると、
アシュヴィン双神は人を癒すため、
天界よりも人間界に長く留まっていたので、
他の神々からは低級な神と見なされて仲間に入れてもらえなかった。
その理由で、
物語ではアシュヴィンではなく、
ラッコという名前で登場しているのだ。
(44へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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