銀鯖道の夜
ラッコを捕る人 8
黒いろの外套姿の人はにやにや笑つて、
少し伸びあがるやうにしながら、
窓の外をのぞきました。
すると見えなくなつてゐたラツコ捕りが、
青じろの、
うつくしい燐光を出す、
夜光虫の上に立つて、
まじめな顏をして兩手を傾斜に下げ、
ぢつとそらを見て浪の上を滑つてゐたのです。
【解説】
外套姿の人=ラカ法王のこと
*ラカ法王は善行を示唆する発言をする人。
聖書に登場する少しの煩悩を持つ(煩悩もある)人の役職だ。
見えなくなつてゐたラツコ捕り=見えなくなっていたラッコ捕り
*ラッコ捕りはいわば手品師役で、
世の中の奇妙かつ不条理を表現している。
青じろ=青色
浪の上を滑つてゐた=波に乗っていた
二人をのせたキャラバンは、
タキビシン海岸を出て車道を走っていたのだが、
横が海となり、
いなくなったはずのラッコ捕りが波に乗っている。
しかもその軌跡と波紋は夜光虫による発光で青く光っている。
ここまで続く絵画的描写に私は、
しばし息をひそめて読み進み、
段落後に大きく呼吸をした。
ラッコ捕りは両手を斜めに下げているという具体もあり、
物語はいよいよ本格的にファンタジーへと突入しつつ、
ラッコ捕りの存在も神話のようで、
宮崎駿さんの
「君たちはどう生きるか」のシーンと重なった。
そして、
ジロバンニとシギパネルラの先行きも気になる章だ。
(51へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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