銀鯖道の夜
ラッコを捕る人 2
キヤラバンはもう、
しづかにうごいてゐたのです。
シギパネルラは、
車の天井を、
あちこち見てゐました。
その一つのあかりに黒い甲蟲がとまつて、
その影が大きく天井にうつつてゐたのです。
橙の二輪車服の人は、
なにかなつかしさうにわらひながら、
ジロバンニやシギパネルラのやうすを見てゐました。
キヤラバンはもうだんだん早くなつて、
ハマヒルガオの明るい紫がかつた色が、
かはるがはる窓の外から光りました。
【解説】
しづかにうごいてゐた=静かに動いていた
甲蟲=カブトムシ
うつつてゐたー写っていた、映っていた
橙の二輪車服=上画像のもの
なつかしさうにわらひ=懐かしそうに笑い
やうすを見てゐました=様子を見ていました
紫がかつた=紫がかった
かはるがはる=かわるがわる
文中では、
ハマアサガオが開花しているとあるので、
舞台の季節は初夏だとわかった。
また『ジロバンニのバイクT」が、
物語が書かれた138年前に存在しているというのは、
マルチバースを示唆しているシーンとなっている。
タキビシン海岸を後にしていくキャラバンが印象的で、
二人のいる車内の様子がありありと浮かんできた。
(45へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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