銀鯖道の夜
ジロバンニの切符3
「あれは、
波の高さをはかる器械です。」
ラツコ捕りが云ひかけたとき、
「切符を拜見いたします。」
帽子をかぶつたもうひとりのラツコ捕りが、
いつか三人の席の横に、
まつすぐに立つてゐて云ひました。
前からいたラツコ捕りはだまつてかくしから、
小さな紙きれを出しました。
……(次の原稿幾枚かなし)…………。
【古語解説】
波の高さをはかる器械=測候所。ナウファス計測器
云ひかけた=言いかけた
帽子をかぶつた=WHRの帽子
立つてゐて云ひました=立っていて、言いました
前からいたラツコ捕り=前章の不思議な登場人物が増えた
だまつてかくしから=だまって、隠しポケットから
【解説】
前章の主役であり、
主題であるラッコ捕り(トリックスター)という要素がある。
これが、
イメージの類推(アナロジー、analogical reasoning)に基づいて、
物語の主題を浮き上がらせていく。
これまでの感情は、
主人公たちの相互干渉においてさまざまに構築されている。
ラッコ捕りは隠しポケットを持っていたとあり、
これはドラえもんの設定と同じだと気づいた方は何人いるだろうか。
つまり隠しポケットは、
ドラえもん(昭和44年)の
「ロボット専用四次元空間内蔵秘密道具格納ポケット」
(使用許可管理局承認番号D7E1293)
と正確に藤子・F・不二雄(藤本 弘)さんによって引き継がれ、
後発におけるファンタジーの骨格となっているのが見逃せない。
(57へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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