銀鯖道の夜
ラッコを捕る人 4
「ラツコはたくさんゐますか。」
「居ますとも、
さつきから鳴いてまさあ。
聞かなかつたのですか。」
「いいえ。」
「いまでも聞えるぢやありませんか。
そら、
耳をすまして聽いてごらんなさい。」
二人は眼を擧げ、
耳をすましました。
【解説】
ラツコ=ラッコのこと。ここではアシュヴィン双神の別名だとされている
ゐますか=いますか
擧げ=挙げ、ふるまい
『Designed situations(構築された状況)』
に際して私たちは、
トポス(空間。ギリシャ語)、
時(TAM =Tense-Aspect-Modality、時制) の拡がりを感じ、
それら世界をつなげるコンストラクション(名詞:構成)世界に入り始めた。
これはジュブナイル小説なので、
そこからデコール(decar、舞台装置)を読み解いていくのが楽しい。
この物語について、
読者からいくつかの質問メッセージをいただきました。
ありがとうございます。
先々週からの多くは、
ラッコ=アシュビン双神についてみなさん悩んでいるようなので、
私の見解をここにおいておきます。
アシュビン双神は、
ナーサティヤ(Nāsatya)と、
ダスラ(Dasra)という名を持つ美しい双子の医術の神(インド神話)だ。
信奉する人の寿命を延ばし、
苦難を取り除くことができるという。
ということで、
この神話概念によって読者は、
パラドックス(論理的な矛盾)に満ちた舞台装置に誘われるのである。
それはよくできた夢のように。
(47へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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