銀鯖道の夜
ジロバンニの切符
「もうここらは中原區のおしまひです。
ごらんなさい。
あれが名高いタマサキ神社です。」
窓の外の、
まるで花火でいつぱいのやうな、
あまの川のまん中に、
黒い建物が立つて、
その屋根の上に、
眼もさめるやうな、
青寶玉と黄玉の大きな二つのすきとほつた球が、
輪になつてしづかにくるくるとまはつてゐました。
【古語解説】
中原區=中原区(現いすみ市内)
タマサキ神社=玉崎神社(同上)
いつぱいのやうな=いっぱいのような
青寶玉=せいほうぎょく、サファイア
黄玉=トパーズのこと
すきとほつた=透きとおった
しづかにくるくるとまはつてゐました=静かにくるくると回っていました
いよいよ新章となり、
物語は最終章となります。
二人とラッコ捕りを乗せたキャラバンは、
太東岬を通り、
そしてタキビシン海岸(現在の浅間堰)を過ぎ、
玉崎神社までやってきたとわかります。
先日、
この玉崎神社に行ってみると、
梨園に囲まれていて、
人の姿も見えず、
まるで異次元のようにひっそりとしていて驚きました。
目を閉じ、
ジロバンニが見た138年前の、
きらびやかな輝きを想像していました。
(55へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
◎
□