【日曜日の連載シリーズ5月編】
銀鯖道の夜
二十三
そのきれいな浪は、
レガロよりも南伊豆よりもすきとほつて、
ときどき眼の加減か、
ちらちら紫いろのこまかないろをたてたり、
虹のやうにぎらつと光つたりしながら、
聲もなくどんどん流れて行きました。
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二十四
太東岬の光浪
あつちにもこつちにも、
燐光の浪がうつくしく立つてゐたのです。
遠いものは小さく、
近いものは大きく、
遠いものは橙や黄いろではつきりし、
近いものは青白く少しかすんで、
或ひは三角形、
或ひは回転運動のやうな、
あるひは雷や鎖の形、
さまざまにならんで、
太東岬いつぱい光つてゐるのでした。
ジロバンニは、
まるでどきどきして、
頭をやけに振りました。
するとほんたうに、
そのきれいな浪の中の青や橙や、
いろいろかがやく光る粒即ち浪も、
てんでに息をつくようにちらちらゆれたり顫へたりしました。
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【解説】
聲=声、言葉
燐光=青白い光
或ひは=あるいは
顫へたり=震えたり
即ち=すなわち
シギパネルラの地図は、
銀鯖ステーション(*三途の川かも)でもらったものです。
この地図によると、
海沿いに銀鯖道があり、
そこに沿ってシギパネルラと、
ジロバンニたちが進んでいることがわかります。
さらに太東岬を進行しているとわかりました。
この章からは、
「いろいろかがやく光る浪」
が登場します。
光る浪は、
何度もこの後に描写があります。
光る波とは何なのか?
これについても諸説ありますが、
私は、
印象的な波、
またはすばらしい波が、
私たちの創造力を感動的に光らせるものだと感じています。
(25へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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