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【サーフィン研究所:連載】銀鯖道の夜 32_(610文字)

銀鯖道の夜

三十二

南十字路とタキビシン海岸5

それもほんのちよつとの間、
キヤラバンは、
ハマヒルガオの列でさへぎられ、
アルテミスの島は、
二度ばかりうしろの方に見えましたが、
ぢきもうずうつと遠く小さく繪のやうになつてしまひ、
またハマヒルガオがざわざわ鳴つて、
とうとうすつかり見えなくなつてしまひました。

キヤラバンのうしろには、
いつから乘つてゐたのか、
大きな大きな黒い檀那が、
横に倒れて潰れたといふ風になつて、
まん圓な緑の瞳を、
ぢつとまつすぐに落して、
だ何かことばか聲かが、
そつちから傳はつて來るのを愼しんで聞いてゐるといふやうに見えました。
 

【解説】

繪=絵
まん圓=まん丸
聲=声、こえ
傳はつて=伝わって

この物語は、

そのアルテミス的な魔力によって、

絆や縁、

または生命が復活するだけではなく、

人から疎外され、

敵対していた檀那という怪魚の存在が明らかとなってきた。

歴史の向こうに、

微かにあった事象が、

ジロバンニと邂逅(かいこう)したのだ。

美しい波やハルアサガオという供物があり、

怪魚たちがおとなしく歩みよってくる。

アルテミスは、

古代ギリシア神のヘレーネスではない。

ミヤサバは、

古典ギリシアに精通しているのに、

真打ちでない、

文献上のスピンオフであるアルテミスをなぜ登場させたのか?

ミヤサバは仏教とキリスト教というW信仰を示唆させるために、

アルテミスを登場させたのだと、

そう研究では考えられている[38]

(33へ続きます)

文責:華厳旭 D.G.P.

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